第5回公認心理師試験・午前問45は、大学における合理的配慮について問う問題です。正答は② 弱視のある学生による試験時の文字拡大器具の使用を許可するです。
この問題を解くポイントは、合理的配慮を「本人が希望したことを何でもそのまま実施すること」と理解しないことです。合理的配慮は、障害のある学生が他の学生と平等に教育を受けられるよう、個々の状況に応じて必要かつ適当な変更・調整を行うものです。本人の意思を尊重しつつ、大学との建設的対話を通して具体的な内容を検討します。
問題の要旨
大学での合理的配慮について、試験時間延長、弱視学生の文字拡大器具、発達障害学生の割合、ピアサポーターへの謝金に関する4つの記述から、最も適切なものを選びます。公式正答は②です。
この問題は制度知識だけでなく、合理的配慮の個別性、教育の本質を変更しないこと、過重な負担を伴わないこと、社会的障壁を除去するという考え方を理解しているかを問うています。
正答:② 弱視学生の文字拡大器具の使用
弱視のある学生が、試験問題を読むために文字拡大器具などの支援機器を使用することは、視覚上の社会的障壁を除去し、他の学生と平等に試験へ参加するための変更・調整として理解できます。
合理的配慮には、支援機器の使用、資料の拡大、座席位置の調整、別室、試験時間の延長、情報保障など、さまざまな形があります。ただし、どの配慮が必要かは障害名だけで自動的に決まるのではなく、個々の状態や教育上の場面を踏まえて検討されます。
合理的配慮の現在の基本整理
文部科学省の「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)」では、合理的配慮を、障害のある学生が他の者と平等に教育を受ける権利を享有・行使できるようにするための、個別に必要な変更・調整として整理しています。また、本人と大学等が互いの状況を共有し、より適切な内容を決める建設的対話が重視されています。
現在の制度上、2024年4月の改正障害者差別解消法施行を踏まえ、国公私立を含む全ての大学等で合理的配慮の提供が法的義務となっています。一方で、教職員向け対応要領の作成義務などは設置者によって扱いが異なるため、「合理的配慮そのもの」と「学内規程の作成義務」を混同しないことが重要です。
「申出があれば必ず希望どおり」ではない
合理的配慮は、学生の希望を軽視してよいという制度ではありませんが、申出があれば理由や状況を確認せず自動的に同じ対応を行うものでもありません。本人がどの場面でどのような社会的障壁に直面しているのかを把握し、本人の意向を十分に尊重しながら、大学側と建設的対話を行います。
根拠資料についても、「診断書がなければ一切検討しない」といった硬直的な対応は適切ではありません。資料取得に時間がかかる場合などもあるため、個々の状況に応じた柔軟な対応が求められます。
各選択肢の考え方
① 発達障害学生が試験時間延長を申し出たら理由を問わず延長する
不適切です。試験時間延長が合理的配慮になる場合はありますが、「理由を問わず」という部分が誤りです。障害名だけで画一的に決めるのではなく、本人の困難、試験の目的、必要な変更・調整を個別に検討します。
② 弱視学生の試験時の文字拡大器具の使用を許可する
正答です。弱視によって試験問題へのアクセスに障壁がある場合に、拡大器具を利用できるようにすることは、教育機会へのアクセスを保障する合理的配慮の典型例です。
③ 支援を受けている発達障害学生は大学生総数の約6%である
不適切です。試験当時の公式正答でも③は正答ではありません。また、この種の割合は年度、対象となる学校、障害学生・支援障害学生・合理的配慮提供学生などの定義によって変わるため、固定値として覚えるべきではありません。
参考としてJASSOの2024年度調査では、全学生3,239,826人に対して障害学生は55,510人で1.71%、発達障害のある学生は11,923人、支援障害学生のうち発達障害は8,806人と報告されています。少なくとも「支援を受ける発達障害学生=大学生総数の約6%」という理解は適切ではありません。
④ ピアサポーター学生への謝金支払いは一般的に禁止されている
不適切です。「一般的に禁止されている」とする根拠はありません。学生による支援をどのような制度・雇用・謝金体系で運用するかは大学等の体制によって異なります。合理的配慮の本質は、誰に謝金を支払うかではなく、必要な社会的障壁の除去が適切に実施されるかにあります。
試験での見分け方
合理的配慮の問題では、次の4点で選択肢を確認すると整理しやすくなります。
- 個別性:障害名だけで一律に決めていないか。
- 平等な参加:教育を受ける機会への障壁を除く内容か。
- 本質変更ではない:試験・授業の本来の目的そのものを変えていないか。
- 建設的対話:本人の意向と大学側の状況を踏まえて調整する発想か。
「希望があれば無条件」「全員に同じ対応」「一般に禁止」といった極端な表現は、合理的配慮の個別的な性質と合わないことが多いため注意します。
関連知識:合理的配慮と環境の整備
合理的配慮は、個々の学生に対して必要な場面で行う変更・調整です。一方、エレベーターやアクセシブルなウェブシステムの整備、教職員研修、規程整備など、不特定多数の障害者を念頭にあらかじめ行う対応は環境の整備と整理されます。
両者は対立するものではなく、環境の整備を進めることで、個別の合理的配慮をより円滑に提供できるようになります。合理的配慮の基本概念を復習する場合は、第3回午前問46の解説もあわせて確認できます。
まとめ
第5回午前問45の正答は②です。弱視のある学生が文字拡大器具を使用できるようにすることは、試験へのアクセス上の障壁を除く合理的配慮に含まれます。合理的配慮は「希望を無条件に受け入れること」ではなく、本人の意向を尊重し、個々の社会的障壁を確認しながら建設的対話を通して具体化することが重要です。



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