第4回公認心理師試験・午前問60は、子育て中の母親への支援場面から、情緒的サポートの意味を見分ける問題です。正答は③ 情緒的サポートです。
この問題では、「孤独感がある」「気軽に相談できる相手が少ない」という状況に対して、地域の育児サロンなどで他の母親と交流し、育児や自分の気持ちを話すことが提案されています。ポイントは、本人の感情を自分で制御する技法や対人スキルの訓練を第一に考えるのではなく、共感・受容・傾聴・安心感を得られる人とのつながりを増やす支援として捉えることです。
問題の要旨
事例では、転居後の地域で知り合いや友人が少なく、家事・育児を一人で担うことが多い母親が、育児不安と孤独感を訴えています。公認心理師は、地域の育児サロンなどに参加し、育児や自分の気持ちを話しながら子育て中の母親と交流することを提案しました。
この提案の主なねらいを、感情制御、グリーフケア、情緒的サポート、セルフ・モニタリング、SSTの中から選びます。公式正答は③です。
正答:③ 情緒的サポート
情緒的サポートとは、他者から共感、思いやり、受容、信頼、安心などを得られるような支えを指します。社会的サポートの代表的な整理では、情緒的サポートのほか、情報的サポート、道具的・手段的サポート、評価的サポートなどが区別されます。
この事例で重要なのは、母親が単に「育児方法を知らない」だけではなく、周囲に気軽に話せる相手が少なく、孤独感を抱えていることです。育児サロンなどで同じような経験を持つ人と交流し、自分の気持ちを話せるようにする提案は、感情を一人で処理する訓練ではなく、他者との関係を通じて心理的な支えを得られる環境をつくるものと考えられます。
社会的サポートの4分類を整理する
社会的サポートは、文献によって細かな分類は異なりますが、試験では次のように整理すると見分けやすくなります。
- 情緒的サポート:共感する、話を聴く、安心させる、気持ちを受け止める。
- 情報的サポート:必要な情報、助言、知識、問題解決の手がかりを提供する。
- 道具的・手段的サポート:家事を手伝う、送迎する、物やサービスを提供するなど、具体的な援助を行う。
- 評価的サポート:本人が自分の状態や行動を捉え直せるよう、フィードバックや承認を与える。
実際の支援では、これらが完全に分離しているわけではありません。たとえば育児サロンでは、気持ちを聴いてもらう情緒的サポートと同時に、育児情報を得る情報的サポートも生じ得ます。試験では、事例で中心となっている困りごとと、提案された支援の主目的を見ます。
各選択肢の考え方
① 感情制御
感情制御は、自分の感情反応を認識し、調整する過程を指します。しかし本事例では、感情反応そのものを訓練によってコントロールすることが中心ではありません。孤独な状況に対して、他者とのつながりを増やすことが提案されています。
② グリーフケア
グリーフケアは、死別などの喪失体験に伴う悲嘆への支援で用いられる概念です。本事例の中核は育児不安と社会的孤立であり、喪失への支援を中心とした場面ではありません。
③ 情緒的サポート
正答です。気持ちを話せる相手、共感してもらえる関係、安心して交流できる場を増やすことは、情緒的サポートの典型的な内容です。
④ セルフ・モニタリング
セルフ・モニタリングは、自分の感情、思考、行動、症状などを観察・記録する方法です。本事例では記録や自己観察を促しているのではなく、人との交流を提案しています。
⑤ ソーシャル・スキルズ・トレーニング〈SST〉
SSTは、対人場面で必要となる具体的な行動やコミュニケーション技能を練習する方法です。しかし、「知り合いが少なく孤独である」という状況を、本人の対人技能不足だけに還元するのは適切ではありません。本事例では、地域で支え合える関係や場への接続が中心です。
試験での見分け方
この問題では、「何を本人の中に変化させるのか」ではなく、「どのような支えを周囲から得られるようにするのか」を見ると整理しやすくなります。
- 話を聴いてもらう・共感してもらう → 情緒的サポート
- 方法や制度を教えてもらう → 情報的サポート
- 家事や送迎を手伝ってもらう → 道具的・手段的サポート
- 自分の状態を振り返るためのフィードバックを得る → 評価的サポート
また、孤立している人への支援を見たときに、すぐSSTを選ばないことも重要です。対人技能の問題が明示されていない場合は、本人の能力ではなく、利用可能な関係資源や環境に注目します。
関連知識:社会的孤立を「本人のスキル不足」にしない
社会的サポートを考えるときは、「困っている人にもっと上手に人と関わってもらう」という発想だけでは不十分です。転居、育児負担、配偶者の勤務状況、地域との接点の少なさなど、本人だけでは変えにくい条件によってサポート資源へアクセスしづらくなることがあります。
したがって実践では、本人のコミュニケーション能力を評価するだけでなく、どのような人・場・制度につながれば負担が下がるかを検討します。これは、社会的孤立を本人の努力不足へ還元しないためにも重要です。
社会的サポートの種類をもう一度整理したい場合は、第5回午前問38の解説も関連学習として利用できます。
まとめ
第4回午前問60の正答は③ 情緒的サポートです。共感、受容、傾聴、安心感などを得られる人とのつながりを増やす支援が中心であることを押さえます。情報的・道具的・評価的サポートとの区別に加え、社会的孤立を本人のSST不足へ短絡しないことが重要です。



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