第6回公認心理師試験・午前問16は、幼児・児童への司法面接の基本原則を問う問題です。正答は① 開かれた質問を主体にするです。
司法面接では、子どもからできるだけ正確で自発的な報告を得ながら、暗示・誘導による記憶の汚染や、繰り返し聴取による負担を減らすことが重要です。
問題の要旨
幼児または児童への司法面接について最も適切な対応を選ぶ問題です。選択肢の趣旨は、①開かれた質問を中心にする、②録音・録画を控える、③性別・年齢の異なる複数面接者が直接質問する、④短時間の面接を何度も行う、⑤面接者が言葉を補って話を引き出す、というものです。
公式正答は①です。
正答は① 開かれた質問を主体にする
司法面接では、「何があったか教えてください」「そのことをもっと話してください」のような、子ども自身の自由な報告を促す開かれた質問が重視されます。
法務省の犯罪白書でも、司法面接的手法による代表者聴取では、誘導的な質問をできる限り避け、オープン質問による自由報告を求めることが中核的な要素として説明されています。
司法面接とは何か
司法面接は、犯罪被害などについて子どもから話を聴く際、心理学的知見を踏まえて、供述の正確性と子どもの負担軽減の両方を重視する面接方法です。
日本では、検察・警察・児童相談所が協議し、そのうちの代表者が聴取する「代表者聴取」に司法面接的手法が活用されています。
なぜ子どもへの質問方法が重要なのか
幼児や児童は、成人と比べて質問者の暗示や誘導の影響を受けやすいことがあります。面接者が「こうだったんだよね」と情報を補ったり、答えを含む質問を繰り返したりすると、子どもの報告に面接者側の情報が入り込むおそれがあります。
そのため、司法面接では子どもが自分の言葉で語る余地を広く取ることが重要です。
開かれた質問と焦点化された質問
| 質問の型 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 開かれた質問 | 「そのときのことを最初から話して」 | 自由報告を促しやすい |
| 手がかりを用いた質問 | 「さっき話した○○について、もう少し教えて」 | 子どもが既に述べた情報を手がかりにする |
| 限定的な質問 | 「どこで起きたの?」 | 必要な情報を絞るが、使用は慎重にする |
| 誘導的な質問 | 答えを含めて「○○されたんだよね?」と尋ねる | 報告に影響を与えるおそれがある |
自由報告〈free recall〉を重視する
NICHDの構造化面接プロトコルでは、子どもに自由に出来事を想起してもらうfree-recall promptsやopen-ended invitationsが重視されています。面接者は、子どもがすでに述べた内容を手がかりにしながら、さらに自由報告を促します。
これは、面接者が知らない情報を子ども自身から引き出しやすくし、面接者側の仮説を押し付けにくくするためです。
録音・録画を行う意味
選択肢②の「録画や録音は控える」は不適切です。日本の代表者聴取では、司法面接的手法を用いる際に録音・録画下で聴取が行われています。
記録を残すことで、どのような質問がされ、子どもがどのような言葉で答えたかを後から確認できます。非言語的な表現を含めて面接経過を客観的に検討しやすくなる点も重要です。
複数機関の連携と「複数の面接者」は違う
選択肢③は、性別や年齢の異なる複数の面接者が直接子どもに質問するという趣旨で、不適切です。
実務では複数機関が連携しますが、子どもへの聴取は代表者が行う形が取られます。他の関係者は別室でモニターし、必要があれば代表者へ補充事項を伝える運用が紹介されています。
つまり、多機関連携=大勢が順番に子どもへ質問することではありません。
面接回数は「増やす」のではなく可能な限り減らす
選択肢④は不適切です。子どもに同じ被害経験を何度も語らせることは心理的負担を高め、さらに同じ質問の繰り返し自体が暗示になる可能性があります。
法務省資料では、被害からできるだけ早い時期に、できるだけ少ない回数で聴取することが示されています。必要に応じて再聴取が生じることはありますが、基本方針は「回数を増やす」ではありません。
面接者が子どもの言葉を補わない
選択肢⑤は不適切です。子どもがうまく言葉にできないとき、面接者が内容を推測して補ってしまうと、その補った情報が子どもの報告に混ざるおそれがあります。
「こういう意味?」と先回りするより、子ども自身が使った語を手がかりにして詳しく話してもらうことが基本です。
ラポール形成とグラウンドルール
司法面接では、いきなり事件内容を質問するのではなく、子どもが安心して話せる関係を作ることが重視されます。また、「分からないときは分からないと言ってよい」「間違っていたら直してよい」など、面接のルールを共有します。
これは、面接者が権威的な立場になりすぎず、子どもが迎合せずに自分の記憶に基づいて話しやすくするための土台です。
選択肢①が適切な理由
開かれた質問は、子どもが自分の記憶から自由に情報を検索し、自分の言葉で報告することを促します。司法面接の基本原則に合致するため正答です。
選択肢②が不適切な理由
録音・録画は控えるのではなく、面接過程を正確に残すために重要です。日本の代表者聴取でも録音・録画下での聴取が行われています。
選択肢③が不適切な理由
複数機関が協働することはありますが、複数の面接者が次々に児童へ直接質問することを推奨するものではありません。代表者聴取では、代表者が面接し、他の関係者は別室から支援します。
選択肢④が不適切な理由
短時間にすること自体は子どもの負担軽減と関係しますが、その代わりに回数を増やすという組み合わせが誤りです。できるだけ少ない回数にまとめることが基本です。
選択肢⑤が不適切な理由
面接者が子どもの言葉を補うことは、暗示・誘導につながる可能性があります。子どもの発言を尊重し、自由報告と非誘導的な質問を中心に進めます。
認知面接との違い
司法面接と認知面接には、面接者の誘導を減らし、記憶からできるだけ多くの情報を引き出そうとする点で重なる部分があります。しかし同一の技法ではありません。
認知面接については、第4回午前問57「認知面接」で整理しています。司法面接では、特に子どもの被暗示性、二次被害、代表者聴取、多機関連携などが重要な文脈になります。
試験での見分け方
- 開かれた質問・自由報告は正しい方向。
- 誘導・言葉の補完は避ける方向。
- 録音・録画は重要。
- できるだけ早期・少ない回数が基本。
- 多機関連携と複数人が直接面接を混同しない。
- ラポール、グラウンドルール、面接者訓練も重要な関連語。
まとめ
第6回午前問16の正答は①です。
- 司法面接では開かれた質問と自由報告を重視する。
- 録音・録画を行い、面接過程を正確に残す。
- 多機関連携では代表者が聴取し、他の関係者が支援する。
- 聴取はできるだけ早期に、必要最小限の回数で行う。
- 面接者が子どもの言葉を補うなどの誘導を避ける。


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