公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問42|グッド・ライブス・モデル(Good Lives Model)

公認心理師過去問第5回42 公認心理師試験
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第5回公認心理師試験・午前問42は、T. Wardらが提唱したグッド・ライブス・モデル〈Good Lives Model:GLM〉について問う問題です。

正答はです。

GLMは、犯罪をした人を「リスクの管理対象」としてだけ捉えるのではなく、本人が大切にしている価値や人生上の目標を、他者を害さない、社会的に受け入れられる方法で実現できるよう支援するという更生モデルです。

試験では、強み・接近目標・人間の尊厳・一次的財〈primary goods〉・社会的包摂というキーワードを押さえると選択肢を見分けやすくなります。

問題

T. Wardらが提唱したグッド・ライブス・モデル〈Good Lives Model〉について、不適切なものを1つ選べ。

  1. クライエントにとっての接近目標と自己管理を重視している。
  2. 性犯罪者のリラプス・プリベンション・モデルに基づいたモデルである。
  3. 人間の尊厳や権利を重視し、ポジティブ心理学的アプローチをとっている。
  4. クライエントを社会の中に包摂し、その立ち直りへの動機づけを高めるものである。
  5. 一次的財〈primary goods〉とは人間が生きる上で必要なもので、行為主体性、友情など11の項目が挙げられている。

正答

です。

GLMは性犯罪者処遇にも応用されていますが、性犯罪者のリラプス・プリベンション・モデルを基礎として成立したモデルと整理するのは不適切です。

むしろGLMは、従来のリスク管理中心のアプローチの限界を補い、本人の強み、価値、ウェルビーイング、主体性、社会統合を重視する更生モデルとして発展してきました。

グッド・ライブス・モデルとは

Good Lives Modelは、犯罪者更生を考えるためのstrengths-based approach(強みに基づくアプローチ)です。

GLMでは、人は誰でも、健康、知識、人とのつながり、自己決定、心の平穏など、自分にとって価値のある状態を求めると考えます。犯罪行動も、その人が何らかの価値ある目標を得ようとした結果として理解されることがあります。

ただし、求めている価値自体が問題なのではなく、その価値を得るための手段が反社会的・有害なものになっていることが問題になります。

GLMの二つの目標|ウェルビーイングと再犯リスク低減

GLMでは、本人のウェルビーイングを高めることと、再犯リスクを低減することを対立する目標として扱いません。

本人が、社会的に受け入れられる方法で、自分にとって意味のある生活を築けるようになることが、結果として再犯リスクの低減にもつながると考えます。

したがって、「リスク因子を抑えるだけ」「禁止事項を増やすだけ」の支援ではなく、どのような生活を目指すのか、そのために何が必要かを具体化していくことが重要です。

接近目標〈approach goals〉を重視する

接近目標とは、「何を避けるか」ではなく、何を実現したいかという方向で設定する目標です。

たとえば、「再び薬物を使わない」という回避目標だけではなく、「安定した仕事を続ける」「信頼できる人間関係を作る」「ストレスに対処できる生活を作る」といった、望ましい状態に近づく目標を考えます。

GLMは、こうした接近目標を本人と協働して設定し、目標達成に必要な能力や環境資源を整えることを重視します。

一次的財〈primary goods〉とは

一次的財〈primary goods〉は、人がそれ自体に価値を感じ、人生の中で求める基本的な状態や経験です。

GLMの公式情報では、現在は次の11領域が示されています。

  • life:健康に生き、機能すること
  • knowledge:重要なことについて知識を得ること
  • excellence in play:遊び・余暇での充実
  • excellence in work:仕事や技能での達成
  • excellence in agency:主体性・自律・自己決定
  • inner peace:心の平穏
  • relatedness:親密な人間関係
  • community:より広い社会集団とのつながり
  • spirituality:意味や目的
  • pleasure:現在の楽しさ
  • creativity:創造的な自己表現

二次的財・手段との区別

一次的財が「何を大切にしたいか」に近いのに対し、二次的財〈secondary / instrumental goods〉は、一次的財を実現するための具体的な手段です。

たとえば、知識や仕事上の達成を求める人が職業訓練を受けることは、一次的財を得るための具体的手段になり得ます。

GLMでは、本人が大切にする一次的財を確認したうえで、それを社会的に受け入れられる二次的手段で満たせるように支援します。

「人間の尊厳」と「権利」を重視する

GLMの倫理的基盤には、人間の尊厳と基本的人権があります。

犯罪をした人には、他者の権利や安全を尊重する責任があります。その一方で、本人も人としてウェルビーイングや自由を尊重される存在であるという立場を取ります。

したがって、支援は本人を単なる「危険性の集合」として扱うのではなく、主体的に人生を選び直す人として関わる方向になります。

選択肢①|接近目標と自己管理を重視する

適切です。

GLMでは、本人がどのような人生を望むかを確認し、その実現に向けた接近目標を設定します。

また、本人のagency、すなわち行為主体性や自己決定を重視します。支援者が目標を一方的に与えるのではなく、本人が自分の生活を管理し、より適応的な方法を選べるようにすることが重要です。

選択肢②|リラプス・プリベンション・モデルに基づく

不適切であり、本問の正答です。

リラプス・プリベンションは、再発・再犯につながる状況を把握し、それを回避・管理する考え方と親和性があります。

GLMはこうしたリスク管理を無視するわけではありませんが、モデルの中心を「再犯しないための回避」に置くのではなく、よりよい生活を実現するための強み・価値・接近目標に置きます。

GLM公式サイトも、従来のリスク管理アプローチの限界に対応する包括的な更生枠組みとして説明しています。

選択肢③|尊厳・権利とポジティブな側面を重視する

適切です。

GLMは人間の尊厳と権利を倫理的な核とし、本人の能力や強み、価値のある人生の構築を重視します。

「犯罪をしない」という欠損修正だけではなく、「どのような生活を作るか」に注目する点が、試験でいうポジティブ心理学的な方向性と整合します。

選択肢④|社会への包摂と立ち直りへの動機づけ

適切です。

GLMでは、本人が社会の中で意味のある役割や人間関係、活動を持てることを重視します。

社会的に統合された生活を具体化し、本人にとって意味のある目標として支援計画に組み込むことで、治療・更生への参加動機を高めることが期待されます。

選択肢⑤|一次的財は11領域

適切です。

GLMでは、一次的財を11の領域に整理しています。選択肢にある「行為主体性」はagency、「友情」はrelatednessの領域と対応して理解できます。

試験では11項目を全て丸暗記するだけでなく、一次的財=人がそれ自体を価値あるものとして求めるもの、二次的財=それを実現する具体的手段という区別を押さえる方が応用しやすくなります。

GLMとリスク・ニーズ・反応性モデルをどう区別するか

犯罪者処遇では、リスク要因の評価や犯罪誘発的ニーズへの介入も重要です。GLMはそれらを否定するモデルではありません。

違いを単純化すると、リスク管理が「何を減らす必要があるか」に焦点を当てやすいのに対し、GLMは本人がどのような適応的な生活を作るかを同時に扱う点に特徴があります。

更生保護における処遇全体のイメージを確認したい場合は、第3回問67|保護観察官による処遇も関連知識として確認できます。

試験での見分け方

記述GLMとの関係
接近目標・本人の主体性○ 中核的
強み・能力・資源を増やす○ 中核的
尊厳・権利・社会統合○ 中核的
一次的財と、それを得る適応的手段○ 中核的
リラプス・プリベンションに基づくモデル× GLMをそのように位置づけるのは不適切
リスク管理を全く考えない× GLMも再犯リスク低減を目標に含む

まとめ

第5回午前問42の正答はです。

  • GLMは強みに基づく犯罪者更生モデル。
  • 本人の価値、尊厳、権利、主体性を重視する。
  • 回避目標だけでなく接近目標を重視する。
  • 一次的財は現在11領域に整理される。
  • 一次的財を、社会的に受け入れられる二次的手段で満たせるよう支援する。
  • 性犯罪者処遇にも使われるが、「リラプス・プリベンションに基づくモデル」と説明するのは不適切。

参考資料

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