公認理師資格試験 過去問解説 問19 産後うつ病について

公認理師資格試験 過去問解説 問19 産後うつ病について

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【令和3年10月29日14時】第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表|講習・試験・登録|一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理試験

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【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

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【問19】産後うつ病

問19 産後うつ病の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 双極性障害との関連は少ない。

② 有病率は約10%から15%である。

③ マタニティー・ブルーズと同義である。

④ M-CHAT がスクリーニングに用いられる。

⑤ 比較的軽症がほとんどで、重篤化することはない。

出典:第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

正答は ②

② 有病率は約10%から15%である

選択肢の解説

① 双極性障害との関連は少ない

産後うつ病と双極性障害との関連性についてですが、一般的に「双極性障害患者では妊娠中・出産後・授乳期における症状の再発や増悪のリスクの高さ」がいわれています。

実際にConejoら(2020)の調査研究では、産後の双極性障害の再発率が非常に高いことが示されるなど、さまざまな研究で同様の結果が報告されています。

また、過去に双極性障害の既往がないとしても、産後うつ病から双極性障害を併発するリスクもあるようです。

よって選択肢①は不適切な記述といえます。

② 有病率は約10%から15%である

産後うつ病の有病率は約10%程度といわれています。

さらにTokumitsu et al(2020)によるメタ分析では、日本人女性の産後1ヵ月時点での産後うつ病の有病率は14.3%となっています。

ちなみに、妊娠中は出産が近づくにつれてうつ病の有病率が増加し、出産後は時間の経過とともにうつ病の有病率が徐々に減少していくことが明らかになっています。

よって、選択肢②「有病率は約10%から15%である」は適切な記述といえます。

③ マタニティー・ブルーズと同義である

マタニティブルーズについては、日本産婦人科医会による説明が詳しいので引用します。

マタニティブルーズは、出産後の女性の30-50%が経験します。マタニティブルーと呼ばれることもあります。出産直後は気持ちも高ぶっていますが、産後数日から2週間程度のうちにちょっとした精神症状が出現します。多くは、ふいに涙が止まらなくなったり、いらいらしたり、おちこんだりする症状がでます。人によっては、情緒が不安定になったり、眠れなくなったり、集中力がなくなったり、焦るような気分になったりします。大抵は症状も一過性であり、産後10日程度で軽快しますのであまり心配することはありません。

出典:マタニティブルーズについて教えてください|日本産婦人科医会

マタニティブルーズは一過性で比較的軽症とされています。

マタニティブルーズから産後うつ病へと移行していく例も多いことから、両者の関連性は強いといえます。

マタニティブルーズ産後うつ病
罹患率約30%〜50%約10%〜15%
持続期間1〜2週間程度2週間以上持続
主な症状不安、不眠、イライラ、焦燥感気分の落ち込み、自責感、自己評価の低下

症状に関しては個人差がありますが、マタニティブルーズは抑うつ状態に近い印象で、産後うつ病の方がやや重篤なうつ状態を示すといえます。

最も顕著な違いは、罹患率持続期間であるため、知識として押さえておきましょう。

以上のことから、マタニティブルーズと産後うつ病は関連性は近い概念ですが、異なる疾患であるため、選択肢③は不適切な記述とわかります。

④ M-CHAT がスクリーニングに用いられる

産後うつ病の早期発見・支援のためのスクリーニング検査としては、EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)が使用されます。

こちらは産後の健診(産婦健康調査事業)でも使用されている検査です。

ちなみに、 M-CHATとは乳幼児期自閉症チェックリストであり、子どもの発達の検査となります。

⑤ 比較的軽症がほとんどで、重篤化することはない

産後うつ病では、なかには「周囲のサポート不足」を含めた環境的な要因の影響がある場合もありますが、その多くが『妊娠・出産時のホルモンの変化』といった内因性の疾患で症状は重篤な場合が多く、専門的な治療が必要です。

また、症状が重篤なことに加えて、自殺のリスクなども高いとされています。

よって選択肢⑤は不適切な記述といえますね。

まとめ

  • 産後うつ病の有病率は約10〜15%、マタニティブルーズの有病率は約30%〜50%
  • マタニティブルーズと産後うつ病の決定的な違いは、症状の持続期間である(2週間以内or2週間以上)
  • 妊娠や出産は双極性障害の再発及び症状増悪のリスク因となる。
  • 産後うつ病の評価尺度はエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)。