第5回公認心理師試験・午前問41は、性犯罪の被害者が刑事手続・少年審判手続の中で利用できる支援制度を問う問題です。
正答は④です。
この問題では、犯罪被害者支援制度をひとまとめに覚えるのではなく、刑事裁判で利用できる制度と少年審判で利用できる制度を分け、さらに少年審判の傍聴には対象事件の限定があることを理解する必要があります。
問題
強制性交(強姦)等罪の犯罪被害者に認められる可能性があるものとして、誤っているものを1つ選べ。
- 加害者の刑事手続に参加すること
- 加害者の公判記録の閲覧及び謄写をすること
- 加害者の刑事裁判結果につき通知を受けること
- 加害者が少年の場合、加害者の少年審判を傍聴すること
- 加害者の刑事裁判で証言するときに付添人を付き添わせること
正答:④
最初に確認|問題文は試験当時の法律用語
本問は2022年の第5回試験で出題されたため、問題文では「強制性交等罪」という当時の罪名が使われています。
その後、2023年の刑法改正により、性犯罪に関する規定が見直され、現在は「不同意性交等罪」などの名称が用いられています。したがって、この記事では、過去問の問題文を説明するときは当時の「強制性交等罪」という表現を残し、現在の制度・法令を説明するときは現行の用語と区別します。
試験対策では、過去問の正誤判定と現在の法令用語を混ぜないことが重要です。
犯罪被害者支援制度は「どの手続か」で整理する
犯罪被害者には、捜査段階、公判段階、裁判後、少年事件など、それぞれの手続に応じた制度があります。
本問では、刑事裁判に関しては、被害者参加、公判記録の閲覧・謄写、裁判結果等の通知、証言時の付添いなどが論点になります。一方で、加害者が少年で家庭裁判所の少年審判となる場合には、少年法上の別の制度が適用されます。
犯罪被害者支援の基本理念については、第4回午前問45「犯罪被害者等基本法」も関連します。個別制度を暗記する前に、被害回復、権利利益の保護、必要な支援を継続的に行うという全体像を押さえておくと整理しやすくなります。
① 加害者の刑事手続に参加すること
これは認められる可能性があり、正しい選択肢です。
一定の犯罪の被害者等には、裁判所の許可を得て、被害者参加人として刑事裁判に参加できる被害者参加制度があります。
被害者参加人には、公判期日への出席、一定の場合の被告人質問、事実・法律の適用について意見を述べることなどが認められています。
本問の表現が「必ず参加できる」ではなく「認められる可能性がある」となっている点にも注目します。制度には対象犯罪や手続上の要件があり、被害者本人の希望だけで自動的にすべての手続参加が決まるわけではありません。
② 加害者の公判記録の閲覧及び謄写をすること
これは認められる可能性があり、正しい選択肢です。
刑事事件の被害者は、制度上、事件記録の閲覧・コピーを申し出ることができます。裁判所の案内でも、刑事事件の被害者は原則として事件記録の閲覧・コピーができることが示されています。
この論点は、第3回問53「犯罪被害者支援制度」でも出題されています。公判記録の閲覧・謄写は、公認心理師試験の犯罪・司法領域で繰り返し確認しておきたい制度です。
③ 加害者の刑事裁判結果につき通知を受けること
これは認められる可能性があり、正しい選択肢です。
犯罪被害者等に対しては、事件の処理結果や裁判結果などに関する情報提供・通知の制度があります。
被害者支援では、「裁判に参加できるか」だけでなく、事件がどのように処理されたか、どのような結果になったかを知る機会も重要です。試験では、被害者参加制度と被害者等通知制度を同じ制度として覚えるのではなく、参加する制度と情報を受ける制度に分けると整理しやすくなります。
④ 加害者が少年の場合、加害者の少年審判を傍聴すること
誤りであり、本問の正答です。
少年審判は、成人の刑事裁判のように一般公開される手続ではありません。被害者等による少年審判の傍聴制度はありますが、対象となる事件が限定されています。
法務省の案内では、少年の故意の犯罪行為によって人を死亡させた事件や、傷害によって生命に重大な危険を生じさせた事件、一定の交通事件など、法令で定める事件が対象とされています。
したがって、問題文にある「強制性交等罪の被害者で、加害者が少年であれば、そのことを理由に少年審判を傍聴できる」と一般化することはできません。性犯罪の被害者であることだけで、少年審判傍聴制度の対象になるわけではないことが本問のポイントです。
なお、現在の対象罪名や適用要件は法改正により変わり得ます。実務では必ず現行の法務省・裁判所の案内を確認する必要があります。
⑤ 加害者の刑事裁判で証言するときに付添人を付き添わせること
これは認められる可能性があり、正しい選択肢です。
犯罪によって被害を受けた人が証人として証言する際には、不安や緊張を緩和するための措置が設けられています。裁判所の案内では、証言時に家族等に付き添ってもらうこと、被告人や傍聴席との間につい立てを置くこと、事件によっては別室からビデオリンクで証言することなどが示されています。
性犯罪では、被害内容を法廷で語ること自体が大きな心理的負担になる可能性があります。そのため、証言の正確性を確保しつつ、証人の不安・緊張や二次的負担を軽減するための制度が用意されています。
少年事件では「傍聴できるか」だけでなく複数の支援制度がある
④が誤りだからといって、少年事件では被害者が何も情報を得られないわけではありません。
法務省は、少年事件について、事件記録の閲覧・コピー、被害者等の意見聴取、一定の重大事件における少年審判の傍聴、審判状況の説明、審判結果等の通知などの制度を案内しています。
つまり、試験では「制度があるか/ないか」だけではなく、その制度の対象範囲がどこまでかを確認する必要があります。
「刑事裁判」と「少年審判」の違いを整理する
| 論点 | 刑事裁判 | 少年審判 |
|---|---|---|
| 手続の公開性 | 原則として公開法廷 | 非公開が基本 |
| 被害者の参加 | 一定事件で被害者参加制度がある | 成人刑事裁判とは異なる制度体系 |
| 記録の閲覧等 | 被害者による閲覧・コピー制度がある | 少年事件記録の閲覧・コピー制度がある |
| 傍聴 | 公開裁判は原則誰でも傍聴可能 | 一定の重大事件に限り被害者等の傍聴制度がある |
| 結果等の通知 | 通知制度がある | 審判結果等の通知制度がある |
過去問の法律用語と現在法をどう扱うか
法律・制度の過去問では、出題当時には正しかった用語や制度が、その後の法改正で変わることがあります。本問の「強制性交等罪」もその例です。
2023年の刑法改正では、性犯罪の成立要件や罪名等が見直され、「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」などの名称が用いられるようになりました。
そのため、学習では次の2層に分けて覚えるのが安全です。
- 過去問を解く層:出題時点の問題文・正答をそのまま確認する。
- 現在の制度を理解する層:現在の法務省・裁判所の資料で最新の用語と対象範囲を確認する。
過去問本文を現在法の用語へ勝手に書き換えると、何を問われていたかが分かりにくくなるため、両者を明示的に分けます。
公認心理師が犯罪被害者支援を学ぶ意味
犯罪被害者支援では、心理的ケアだけでなく、捜査・裁判・少年審判・情報提供など司法手続そのものが本人の負担や回復に影響します。
公認心理師がすべての法的手続を担うわけではありませんが、本人がどのような制度を利用できる可能性があるかを把握し、必要に応じて弁護士、検察庁、裁判所、法テラス、犯罪被害者支援機関などへ適切につなぐためには、制度の基本構造を理解しておくことが重要です。
同時に、具体的な事件で制度利用の可否を心理職が断定するのではなく、個別事件については担当機関や法律専門職へ確認するという役割分担も重要です。
試験での見分け方
| 選択肢 | 判断 | ポイント |
|---|---|---|
| 刑事手続への参加 | ○ | 一定事件で被害者参加制度 |
| 公判記録の閲覧・謄写 | ○ | 被害者のための制度がある |
| 刑事裁判結果の通知 | ○ | 被害者等通知制度等がある |
| 少年なら性犯罪被害者が当然に少年審判を傍聴 | × | 傍聴対象事件は限定される |
| 証言時の付添い | ○ | 不安・緊張を緩和する保護措置 |
まとめ
第5回午前問41の正答は④です。
- 一定の犯罪被害者には刑事裁判への被害者参加制度がある。
- 事件記録の閲覧・謄写や、裁判結果等の通知を受ける制度がある。
- 証言時には、付添い、遮へい、ビデオリンクなどの配慮が認められる場合がある。
- 少年審判の傍聴制度は対象事件が限定され、性犯罪の被害者だから当然に傍聴できるわけではない。
- 問題文の「強制性交等罪」は試験当時の用語で、現在は法改正後の用語と区別して学ぶ。



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