公認心理師資格試験 過去問解説 問53 犯罪被害者支援制度
- 2021.06.22
- 資格試験
- 犯罪・司法, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問53】犯罪被害者支援制度
問53 被害者支援の制度について、正しいものを2つ選べ。
① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している。
② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる。
③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される。
④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる。
⑤ 日本司法支援センター〈法テラス〉は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付を受けない。
② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる
④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる
となります。
選択肢の解説
① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している
被害者支援センターは、1998年に設立された「公共社団法人全国被害者支援ネットワーク」によって、2009年7月までに47都道府県全てに設置されました。
被害者支援センターでは主に以下のような支援が行われます。
- 電話相談
- 面接相談:専門の研修を受けた犯罪被害相談員による面接
- 直接支援:裁判所・警察・病院・弁護士相談への付き添い、各種手続きのサポートなど
具体的な内容は各被害者支援センターで異なる部分がありますが、心理職が連携して面接相談を担う都道府県もあるようです。
詳しくは以下のサイトをご覧ください❕
以上のことから、選択肢①「被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している」は、「法務省」ではなく「全国被害者支援ネットワーク」が正しい記載であるため、誤った内容の選択肢といえます。
② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる
こちらは裁判後の被害者支援に含まれる内容です。
裁判後の被害者支援には以下の内容が含まれています。
- 犯人の受刑中の刑務所における処遇状況や出所情報等の通知
- 証拠品の返還
- 証拠品の廃棄処分への立会い
- 確定記録の閲覧
- 仮釈放・仮退院審理における意見等聴取制度
- 保護観察中における心情等伝達制度
今回の選択肢は、『仮釈放・仮退院審理における意見等聴取制度』に該当していますね。
加害者の仮釈放や少年院からの仮退院を許すか否かを判断するために地方更生保護委員会が行う審理において、被害者やご遺族等の方々が、仮釈放・仮退院に関するご意見や被害に関する心情を述べることができる制度です。
出典:裁判後の段階での被害者支援|法務省
この制度は、「被害者の方」「被害者の方の法定代理人」「被害者の方が亡くなっていたり、心身に重大な障害がある場合には、配偶者・直系の親族等」が利用可能で、意見に関しては仮釈放・仮退院の審理やその際の配慮事項などに考慮されます。
以上のことから、選択肢②「受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる」は、仮釈放・仮退院心理における意見等聴取制度に該当するため、適切な選択肢といえます。
③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される
この選択肢を見極めるためには、以下の知識を知っている必要があります。
犯罪被害者等給付金 犯罪行為により死亡した方のご遺族、重傷病・障害という重大被害を受けた被害者に対する給付金
被害回復給付金 財産犯(詐欺罪、恐喝罪、高金利受領罪など)の被害者に対する給付金
犯罪被害者の方に対する支援金としては、犯罪行為により死亡、または重傷病・障害を負った際に適応される「犯罪被害給付制度」と財産犯による被害を負った際に適応される「被害回復給付金支給制度」と大きく2種類存在しています。
詳しくは以下のホームページをご参照ください❕
選択肢③「財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される」は、『犯罪被害者等給付金』の部分が不適切で、正しくは『被害回復給付金』となるため、誤った選択肢といえます。
④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる
こちらは刑事事件の裁判手続きにおける被害者保護制度についての選択肢となります。
- 証人の負担を軽くするための措置
- 被害者等による意見の陳述
- 検察審査会に対する審査申立て
- 裁判手続きの傍聴のための配慮
- 訴訟記録の閲覧及び謄写
- 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解
今回の選択肢は『訴訟記録の閲覧及び謄写』に該当しています。
通常、裁判が進行中の刑事事件について訴訟記録を閲覧することや謄写(書き写すこと)はできませんが、刑事事件の犯罪被害者は原則として公判記録の閲覧や謄写が可能となっています。
また平成19年に「訴訟記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大」についての規定が設けられ、裁判中の被告人によって行われた裁判中の事件と同じ種類の犯罪行為(同種余罪)の被害者の方は、損害賠償を求める際に必要であると認められれば公判記録の閲覧と謄写が可能となっています。
以上のことから、選択肢④「刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる」は正しい記述といえます。
⑤ 日本司法支援センター〈法テラス〉は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付を受けない
日本司法支援センター(通称、法テラス)とは、『総合法律支援法』に基づいて平成18年に国が設置した、法的なトラブルを解決するために必要な情報やサービスの提供をしている法務省管轄の公的機関です。
法テラスでは平成30年1月24日から、DV・ストーカー・児童虐待の被害者を対象とした法律相談に関する業務が開始されています。
法テラスで行われてる犯罪被害者支援は以下の通りです。
- DV・ストーカー・児童虐待の被害者を対象とした法律相談に関する業務
- 犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介
- 「被害者参加人のための国選弁護制度」に関する業務
- 「被害者参加旅費等支給制度」に関する業務
基本的な事項を確認したところで、今回の選択肢に戻っていきましょう。
被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付 = しょく罪寄付
しょく罪寄附とは、道路交通法違反、覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する弁償ができない刑事事件」などの場合に、被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために、公的な団体等に対して行う寄附です。
法テラスは、国民に身近な司法制度を実現するため、総合法律支援法に基づいて設立され、公共性の高い各種の業務を行っておりますので、「しょく罪寄附」の寄附先として最適な団体です。
以上のことから、法テラスはしょく罪寄付の寄付先として最適な団体とされているため、選択肢⑤「日本司法支援センター〈法テラス〉は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄付を受けない」は不適切な記述といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問53は、犯罪被害者支援制度に関する問題でした❗️
犯罪被害者支援には多くの法律が関わってきますが、最低限『犯罪被害者等基本法』はおさえておきましょう。
本問題におけるキーワードは以下の通りです。
キーワード・公共社団法人全国被害者支援ネットワーク 被害者支援センター 「電話相談」「面接相談」「直接支援」
・裁判後の被害者支援 「犯人の受刑中の刑務所における処遇状況や出所情報等の通知」「証拠品の返還」「証拠品の廃棄処分への立会い」「確定記録の閲覧」「仮釈放・仮退院審理における意見等聴取制度」「保護観察中における心情等伝達制度」
・刑事事件の裁判手続きにおける被害者保護制度 「証人の負担を軽くするための措置」「被害者等による意見の陳述」「検察審査会に対する審査申立て」「裁判手続きの傍聴のための配慮」「訴訟記録の閲覧及び謄写」「民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解」
・法テラス 犯罪被害者支援 「DV・ストーカー・児童虐待の被害者を対象とした法律相談に関する業務」「犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介」「被害者参加人のための国選弁護制度」に関する業務 「被害者参加旅費等支給制度」に関する業務
・犯罪被害者等給付金 犯罪行為により死亡した方のご遺族、重傷病・障害という重大被害を受けた被害者に対する給付金
・被害回復給付金 財産犯(詐欺罪、恐喝罪、高金利受領罪など)の被害者に対する給付金
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