公認心理師資格試験 過去問解説 問52 全般性不安障害

公認心理師資格試験 過去問解説 問52 全般性不安障害

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問52】全般性不安障害

問52 DSM-5の全般不安症/全般性不安障害の症状について、正しいものを2つ選べ。

① 易怒性

② 抑うつ

③ 強迫念慮

④ 社交不安

⑤ 睡眠障害

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ①と⑤

 

①易怒性 ⑤睡眠障害

となります。

 

全般性不安障害

 

全般性不安障害 GAD とは❓

全般性不安障害 Generalized Anxiety DisorderはDSM-5の不安症群/不安障害群に該当する精神疾患です。

 

ざっくりと説明すると、コントロールが効かない過剰な不安や緊張が持続して日常生活に支障をきたしてしまう状態です。

 

従来的には、不安神経症とも呼ばれています。

 

早速、DSM-5の診断基準を見ていきましょう❗️

A. (仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期念慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。

B. その人は、その心配を抑制することが難しいと感じている。

C. その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。

(1)落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり

(2)疲労しやすいこと

(3)集中困難、または心が空白になること

(4)易怒性

(5)筋肉の緊張

(6)睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠)

出典:DSM-5®︎ 精神疾患の分類と診断の手引き|日本精神神経学会|医学書院

 

主な症状は以下のようになりますね。

  • 複数の出来事に対する過剰な不安
  • 不安をコントロールできない感覚
  • 不安・緊張に関連する諸症状(焦燥感や緊張、易疲労感、集中困難、易怒性、筋緊張、不眠症状)

 

また、感じている不安が、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、分離不安障害、心的外傷後ストレス障害、病気不安症などの特定の状況で不安を感じる精神疾患に該当しないことも全般性不安障害の重要なポイントとなります。

 



 

選択肢の解説

今回の問題は、DSM-5の診断基準に含まれている症状を選択肢の中から選べば正答となりますので、比較的簡単に回答できる問題といえます。

 

① 易怒性

易怒性 irritability は、怒りっぽいことを意味する医学用語です。

 

周囲から見て些細な刺激でも怒ってしまうことを、易怒性が高いと表現します。

 

易怒性は、さまざまな精神疾患で見られる症状のひとつで、全般性不安障害の診断基準にも含まれています。

 

その他としては、双極性障害認知症のBPSD発達障害、こどもの気分障害などでもよく生じてくる症状ですね。

 

 

そのため、選択肢①「易怒性」は問題の解答として適切といえます。

 

② 抑うつ

抑うつ depression は、「憂鬱な気分を意味しています。

 

抑うつ症状が強いと、憂鬱な気分のために思考・感情・行動などに影響が出てきます。

 

典型的には大うつ病性障害適応障害で認められることが多いです。

 

全般性不安障害では、二次的な症状として抑うつ症状がみられることはあるかもしれませんが、診断基準には含まれていませんね。

 

以上より、選択肢②「抑うつ」は問題の不解答として適切といえます。

 

③ 強迫念慮

強迫念慮とは、あまり聞き慣れない言葉ではありますが、強迫観念 obsession と同義と考えてよさそうです。

 

強迫観念は強迫性障害の代表的な症状のひとつで、全般性不安障害の診断基準には該当しません。

 

むしろ、強迫観念が存在している場合は、強迫性障害含めた他の精神疾患の可能性を考える必要がありますね。

 

このように選択肢③「強迫念慮」は問題の解答として不適切といえます。

 

④ 社交不安

社交不安 social anxiety は簡単に説明すると、「社会的な場面での他者からの評価に対する不安」を意味しています。

 

他者と話をするときなど他者からの注目を浴びる場面で、「否定的な評価を受けること」に対して不安が生じます。

 

社交不安の症状が出現する精神疾患の代表は社交不安障害で、全般性不安障害の診断基準には含まれていません。

 

そのため、選択肢④「社交不安」は問題の解答として不適切といえます。

 

⑤ 睡眠障害

睡眠障害はさまざまな精神疾患に共通する症状ではありますが、全般性不安障害の診断基準にも含まれています。

 

寝つきが悪いといった入眠困難、途中で起きてしまう中途覚醒、熟睡できておらず睡眠が浅く感じる浅眠感がよくみられます。

 

全般性不安障害では、日常生活で漠然とした不安を感じることで緊張感が強くなっているため覚醒度の調整が難しく、睡眠に影響が出ることが多いです。

 

 

そのため、選択肢⑤「睡眠障害」は問題の解答として適切といえます。



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問52は、全般性不安障害に関する問題でした❗️

 

全般性不安障害は、日常のさまざまな場面で過剰な不安・緊張が生じて社会生活に支障をきたしている状態といえます。

 

症状が特定の状況に対して不安を感じるその他の不安障害や精神疾患に該当しないかどうか見極めることも判断のポイントととなります。

 

症状をまとめると以下のようになります。

  • 日常のさまざまな場面で強い不安・緊張を感じること
  • 不安をコントロールできないように感じること
  • 緊張感と焦燥感
  • 易疲労感
  • 集中困難
  • 易怒性
  • 筋肉の緊張
  • 睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、浅眠感)

 

DSM-5の診断基準は、試験のみではなく、実臨床でも重要になってくるので、確認しておきましょう📗