【神経発達症】発達障害に併存しやすい睡眠の問題を見過ごしてはいけない理由について解説!

【神経発達症】発達障害に併存しやすい睡眠の問題を見過ごしてはいけない理由について解説!

神経発達症と睡眠の問題について

この記事では、発達障害に併存しやすいといわれている睡眠の問題についてまとめていきます。

 

神経発達症/神経発達障害(Neurodevelopmental disorder)とは、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)における発達障害をさします。

発達障害

脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態をいう。(略)

DSM-5では発達障害は、知的障害(知的能力障害)、コミュニケーション障害、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)、学習障害(限局性学習症、LD)、発達性協調運動障害、チック症の7つに分けられています。

出典:発達障害|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

今回は、発達障害のなかでも睡眠の問題が多く報告されている自閉スペクトラム症とADHDに関してまとめてみました!

 

この記事で解説する内容

・自閉スペクトラム症(ASD)と睡眠の問題

・注意欠如多動症(ADHD)と睡眠の問題

・睡眠の問題を見過ごしてはいけない理由

 

 

自閉スペクトラム症(ASD)と睡眠の問題

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)と睡眠の問題については、報告により差はありますが、自閉スペクトラム症当事者の方の約50%から70%ちかくに睡眠の問題があると報告されています。

 

また、その多くが幼少期から睡眠の問題が継続しているともいわれています。

 

睡眠問題の種類

 

 

睡眠の問題のなかでどんなものが多いの?

 

Specifically, children with autism reported more frequent bedtime resistance, sleep anxiety, and night wakings than children with other developmental disabilities.

出典:Valicenti-McDermott et al.(2019).Sleep Problems in Children With Autism and Other Developmental Disabilities:A Brief Report. Journal of Child Neurology, 1-7.

自閉スペクトラム症の児童(5歳〜11歳)を対象とした最近の研究を見てみると、「寝つきが悪い(入眠困難)」「夜間に途中で起きてしまう(中途覚醒)」などの睡眠の問題が多いようです。

 

さらに多くの研究で、自閉スペクトラム症当事者の方はいわゆる定型発達の方と比べて、

  • 睡眠-覚醒レベルの不規則さがある
  • ノンレム睡眠中にレム睡眠と同様の特徴が生じること
  • レム睡眠時の眼球運動が発現しにくい
  • GABAやセロトニン系の発達が未成熟

など、生理学的レベルでも睡眠の問題が生じていることが示されています(池内他, 2019)。

出典:池内他. (2019). 自閉スペクトラム症児の睡眠に関する研究動向と今後の展望

 

睡眠問題に関係する要因

自閉スペクトラム症の睡眠問題には、特性の1つである感覚過敏性とくに触覚の過敏性(鈍麻)日常生活でのストレスや不安の強さ見通しの悪さが強く関係しているといわれています。

 

 

触覚の過敏性や鈍麻がどうして睡眠の問題に繋がるのかという詳しいメカニズムはまだ明らかになっていないようですが、触覚の過敏・鈍麻によって、睡眠と関係の深い深部体温の調整筋緊張(過緊張-低緊張)の問題などが生じやすく、この辺りが睡眠問題のキーワードになりそうです。

 

ベースにある過敏性の問題とともに挙げられているのが、日常生活のストレスです。そのまま日常生活で生じる困難と読み替えても差し支えないでしょう。

 

自閉スペクトラム症当事者の方は、その特性もあり日常生活でトラブルや不安を感じる出来事が起こりやすいです。そのため、入眠時に過去の出来事や不安な出来事について繰り返し考える(反芻思考)ことが多く、結果として睡眠の問題に繋がりやすいといわれています。

 

見通しの悪さについてですが、こちらは時間感覚の乏しさを意味しています。時間感覚が乏しいと仕事や課題への取り組みが遅れがちであったり、インターネットやゲームなど一般的に睡眠の問題に繋がりやすい嗜好に時間を忘れて没頭しがちで、結果として睡眠のリズムが確立しにくい可能性があります。

 

自閉スペクトラム症の睡眠の問題

①感覚過敏性(特に、触覚の過敏と鈍麻)⇨体温の調整や筋緊張

②日常生活のストレス⇨不安や反芻思考

③見通しの悪さ⇨To doが遅れる、趣味/嗜好に時間を忘れて没頭する

 

 

注意欠如多動症(ADHD)と睡眠の問題

注意欠如多動症(Attention-deficit hyperactivity disorder:ADHD)当事者の児童・青年の約25%から70%ちかくが睡眠の問題があるといわれています。

 

成人では約50%ちかくが、睡眠の問題が存在していると報告されています。

 

睡眠問題の種類

The most common sleep problems reported in children with ADHD include delayed sleep onset, sleep or bedtime resistance, prolonged tiredness upon waking and daytime sleepiness.

Higher incidences of sleep disorders such as restless legs syndrome, periodic limb movement disorder and sleep disordered breathing have been reported in paediatric ADHD populations compared with control populations.

出典:Weiss, M. D., & Salpekar, J.(2010). Sleep Problems in the Child with Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:Defining Aetiology and Appropriate Treatments. CNS Drugs, 24(10), 1-18.

 

ADHDの睡眠問題については、「寝つきが悪い(入眠困難)」「夜間に途中で起きてしまう(中途覚醒)」のほかに、「起きたあと長時間の疲労が続く」「日中の眠気」が特徴的なようです。

 

上記に加えて、

  • レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome)
  • 周期性四肢運動異常症(periodic limb movement disorder:PLMD)
  • 睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing: SDB)

などの睡眠障害が併存することも多いとされています。

 

近年では、ADHDと睡眠障害の1つであるナルコレプシーとの間に共通する遺伝子が判明するなど、ADHDと睡眠の問題は密接な関連性があるとされています。

 

睡眠問題に関係する要因

ADHDの睡眠問題には、ADHDの特性である多動性自己調節の困難さ覚醒度の低さがあげられます。

 

 

多動性があり刺激を求める傾向が強いと、布団に入り眠りにつくまでじっとしていることで不快感を感じることがあります。また、思考をストップさせることが難しくさまざまなことを考えてしまうことで睡眠の問題に繋がることがあります。

 

ADHD当事者の方は、自己調整の困難さによって、睡眠スケジュールを含めた決められたスケジュールに従って行動を調整することが難しいことがあります。

 

加えて、仕事や課題などを先延ばししがちで効率的に取り組むことも苦手であるため、そもそも眠りに入る時間がばらつきがちな傾向があり、睡眠のリズムも乱れがちです。

 

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覚醒度の低さに関してですが、持続的に注意や警戒状態を維持できないことを意味しており、こちらは「朝起きにくい」ことや「日中の眠気」に関連しています。日中、特に興味・関心の低い活動に関しては覚醒度が下がりがちで眠気を感じ、夜間帯に好きな活動をしている際は反対に覚醒度が上がるため、「寝つきにくい」といった睡眠の問題に繋がってしまうことが多いとされています。

 

覚醒度に関してはこちらをご覧ください!!

「不注意」とはなにか:臨床場面でも役立つ注意機能の分類と特徴

 

ADHDの睡眠の問題

①多動性⇨頭も身体もじっとしていられない

②自己調節の困難さ⇨計画性をもって活動に従事できない、先延ばし

③覚醒度の低さ⇨持続的に注意や警戒状態を維持できない

 

 

睡眠の問題を見過ごしてはいけない理由

 

 

どうして睡眠が大事なの?

 

夜更かしなどの睡眠不足だと、翌日にイライラしたり不安になったり落ち込みやすかったり・・・ということは誰しも経験があることだと思います。このように睡眠とメンタルヘルスの関係性は古くから言われていることです。

 

特に発達障害当事者の方は、睡眠の問題によって発達障害の特性や気持ち・行動面での不適応行動が強まる可能性があるとされています。

 

睡眠の問題が多いPDDでは、睡眠に問題がないPDDに比較して、情緒面や行動面の問題が多いことが報告されている。

PDD=広汎性発達障害

出典:亀井・岩垂 (2010). 児童精神疾患に併存する睡眠障害. 精神神経誌, 112(9), 921-927.

 

発達障害当事者の方は、睡眠の問題によって、不安が高くなる結果として情緒の問題が生じることや、覚醒度を上げようとして行動することが行動の問題に繋がることがよく起こります。

 

また、ストレスや不安が高い時には、感覚過敏性などの発達特性も強くなることがわかっています。

 

そのため、睡眠の問題を見逃さずに適切な対応をしていくことで、当事者の方本人や周囲の方の苦しさをやわらげる助けとなることがあると考えられます。

 

 

まとめ

今回の記事では、神経発達症(発達障害)、なかでも自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)睡眠の関連性についてまとめてきました。

 

神経発達症と睡眠の問題は併存しやすいことに加え、気持ちの面や行動の面での不適応を増やす可能性があるため、注意深く見立てて必要な介入をしていくことが重要です。

 

自閉スペクトラム症の睡眠の問題

①感覚過敏性(特に、触覚の過敏と鈍麻)⇨体温の調整や筋緊張

②日常生活のストレス⇨不安や反芻思考

③見通しの悪さ⇨To doが遅れる、趣味/嗜好に時間を忘れて没頭する

 

ADHDの睡眠の問題

①多動性⇨頭も身体もじっとしていられない

②自己調節の困難さ⇨計画性をもって活動に従事できない、先延ばし

③覚醒度の低さ⇨持続的に注意や警戒状態を維持できない