公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問10|ポジティブ感情

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第6回公認心理師試験の午前問10は、ポジティブ感情が注意や認知に与える影響を問う問題です。

正答はです。ポジティブ感情を単に「気分が良い状態」と考えるのではなく、Fredricksonらのbroaden-and-build理論を手掛かりに、注意範囲や思考―行動レパートリーが広がるという特徴を押さえます。

問題

ポジティブ感情の説明として、適切なものを1つ選べ。

  1. 利己的な行動を促進する。
  2. ネガティブ感情の影響を緩衝しない。
  3. 注意の幅を広め、浅く広い情報処理をもたらす。
  4. ネガティブ感情と比べて特定の不適応と強く関連する。
  5. 友人の悩みを聴く場面では、積極的に表出する必要がある。

正答:③

この問題のポイント

ポジティブ感情については、注意や認知の範囲を広げるという考え方が重要です。Fredricksonのbroaden-and-build理論では、ポジティブ感情はその時点の思考―行動レパートリーを広げ、その積み重ねがさまざまな個人的資源の形成につながると考えます。

本問③の「注意の幅を広め、浅く広い情報処理をもたらす」は、この代表的な方向性を表した選択肢です。

ただし、「ポジティブ感情なら常に注意が広がる」「必ず浅い処理になる」と絶対化するのは不正確です。研究上の効果は、課題、状況、感情の強さなどによって変わり得ます。試験では代表理論としての特徴を押さえます。

broaden-and-build理論とは

broaden-and-build理論では、ネガティブ感情とポジティブ感情の機能を対比して考えます。

恐怖や怒りのようなネガティブ感情は、危険や問題へ素早く対応するために、行動の選択肢を特定の方向へ絞り込みやすいと考えられます。これに対して、喜び、興味、満足などのポジティブ感情は、注意や思考の範囲を広げ、多様な行動可能性を探索しやすくすると考えられています。

この「広げる〈broaden〉」作用が繰り返されることで、知識、対人関係、対処能力などの資源が「築かれる〈build〉」というのが理論の中心です。

選択肢ごとの解説

① 利己的な行動を促進する

これは不適切です。

ポジティブ感情の代表的な機能を「利己的行動の促進」と整理することはできません。むしろ、ポジティブ感情は他者への関心、柔軟な対人行動、探索的な行動などと関連して研究されてきました。

「気分が良いと自分の利益を優先する」という日常的な印象だけで選ばないことが重要です。

② ネガティブ感情の影響を緩衝しない

これは不適切です。

ポジティブ感情には、ネガティブ感情やストレス反応の後に生じる生理的・心理的な影響からの回復を促す、いわゆるundoing effectが論じられています。

したがって、「ネガティブ感情の影響を緩衝しない」と断定する②は、代表的な研究知見と逆方向です。

③ 注意の幅を広め、浅く広い情報処理をもたらす

適切であり、本問の正答です。

ポジティブ感情は、狭い範囲だけに注意を集中させるよりも、より広い範囲へ注意を配分し、多様な情報や行動可能性を取り込みやすくする方向に働くと考えられています。

Fredricksonらの実験研究では、ポジティブ感情が注意の範囲を広げることや、thought-action repertoireを広げることが検討されています。

「浅く広い」という表現は試験上の対比として理解し、すべての状況で深い処理ができなくなるという意味には広げないようにします。

④ ネガティブ感情と比べて特定の不適応と強く関連する

これは不適切です。

broaden-and-build理論では、多くのネガティブ感情は危険や損失に対して比較的特定の行動傾向と結びつく一方、ポジティブ感情は行動可能性を広げる方向に働くと考えられています。

そのため、「ポジティブ感情の方が特定の不適応と強く結びつく」という説明は、代表的な理論的整理とは一致しません。

⑤ 友人の悩みを聴く場面では、積極的に表出する必要がある

これは不適切です。

ポジティブ感情が有益な働きを持つからといって、どの対人場面でも積極的に表出すべきだという一般原則にはなりません。

友人がつらい経験を話しているときには、相手の感情や文脈に合わせて共感的に応答することが重要です。不釣り合いな明るさや楽観的反応は、かえって「理解されていない」と受け取られる可能性があります。

ネガティブ感情との違い

試験では、「ポジティブ=良い」「ネガティブ=悪い」と価値判断で覚えないことが重要です。どちらにも適応上の機能があります。

  • ネガティブ感情:危険や損失などへの対応を優先し、注意や行動を特定の方向へ絞りやすい。
  • ポジティブ感情:探索、柔軟な思考、多様な行動可能性を広げやすい。

この違いを「狭める/広げる」という機能の対比で覚えると、③を選びやすくなります。

undoing effectも合わせて覚える

ポジティブ感情の関連知識として、undoing effectがあります。これは、ネガティブ感情によって生じた活性化や緊張からの回復を、ポジティブ感情が早める可能性を示す考え方です。

この知識があると、②「ネガティブ感情の影響を緩衝しない」が誤りであることを判断しやすくなります。

試験での見分け方

  1. 「ポジティブ感情は注意・思考の幅を広げる」と押さえる。
  2. 「broaden」と「build」の2段階を区別する。
  3. ネガティブ感情は、より特定の行動傾向へ注意を絞るという対比を思い出す。
  4. undoing effectから、ネガティブ感情の影響を緩和し得ることを確認する。
  5. 「どの場面でもポジティブ感情を表出すべき」という対人場面の絶対化を避ける。

まとめ

  • 正答は
  • ポジティブ感情は、代表理論上、注意や思考―行動レパートリーを広げる方向に働く。
  • broaden-and-build理論では、「広げる」経験が長期的な個人的資源の形成につながると考える。
  • ポジティブ感情には、ネガティブ感情の影響からの回復を促すundoing effectも論じられている。
  • ポジティブ感情の効果を「常に」「どんな場面でも」と絶対化しない。
  • 対人場面では、感情の種類より文脈や相手との適合性も重要になる。

参考資料

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