公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午前 問54|マインドフルネスに基づく認知行動療法

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第4回公認心理師試験の午前問54は、マインドフルネスに基づく認知行動療法について、どの心理療法が該当するかを問う問題です。

正答は③・⑤です。ポイントは、「マインドフルネス」という言葉からMBSRやMBCTだけを思い浮かべるのではなく、弁証法的行動療法〈DBT〉とアクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉が、マインドフルネスやアクセプタンスを重要な構成要素として含む第三世代の認知・行動療法として位置づけられることを押さえる点です。

問題

マインドフルネスに基づく認知行動療法として、適切なものを2つ選べ。

  1. 内観療法
  2. 応用行動分析
  3. 弁証法的行動療法
  4. アサーション・トレーニング
  5. アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉

正答:③・⑤

この問題のポイント

認知行動療法〈CBT〉は、単一の技法だけを指す言葉ではありません。認知再構成や行動活性化のような従来の技法に加えて、近年はマインドフルネス、アクセプタンス、文脈、価値に沿った行動などを重視するアプローチも発展してきました。

この流れは、しばしば第三世代の認知・行動療法あるいは文脈的行動療法として整理されます。その代表例として、DBTやACTが挙げられます。

試験では、「マインドフルネスに基づく」という表現を狭く取りすぎないことが重要です。DBTとACTは、いずれもマインドフルネスを治療上の重要なプロセスや技能として取り入れています。

弁証法的行動療法〈DBT〉とは

DBTは、行動療法・認知行動療法の方法に、アクセプタンスやマインドフルネスの考え方を組み合わせた治療体系です。

DBTの技能訓練では、代表的に次の4領域が扱われます。

  • マインドフルネス:現在の体験に注意を向け、判断を加えすぎずに観察する。
  • 苦痛耐性〈distress tolerance〉:強い苦痛の中で、衝動的な行動に頼らず状況を切り抜ける。
  • 感情調整〈emotion regulation〉:感情の働きを理解し、感情反応を調整する。
  • 対人関係の有効性〈interpersonal effectiveness〉:対人場面で必要なことを伝え、関係と自己尊重を保つ。

したがって、③の弁証法的行動療法は、本問の「マインドフルネスに基づく認知行動療法」として適切です。

アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉とは

ACTは、つらい思考や感情を無理に消そうとすることよりも、そうした内的体験との関わり方を変え、心理的柔軟性〈psychological flexibility〉を高めることを重視します。

そのために、アクセプタンス、マインドフルネス、認知的脱フュージョン、価値の明確化、価値に沿った行動などを用います。

ACTでは、「嫌な考えを正しい考えに置き換える」ことだけを目標にするのではありません。思考や感情が存在していても、それに支配されすぎず、自分にとって重要な方向へ行動できることを重視します。

したがって、⑤のACTも適切です。

選択肢ごとの解説

① 内観療法

これは不適切です。

内観療法は、自己と他者との関係を一定の問いに沿って振り返ることを中心とする心理療法です。マインドフルネスに基づく認知行動療法として分類されるものではありません。

「自分の内面を見つめる」という日常語的な共通点だけで、マインドフルネスと同じものと考えないことが重要です。

② 応用行動分析

これは不適切です。

応用行動分析〈ABA〉は、行動と環境との関係を分析し、行動原理を実際の問題に応用する枠組みです。行動療法と理論的なつながりはありますが、マインドフルネスに基づく認知行動療法そのものではありません。

③ 弁証法的行動療法

適切であり、本問の正答です。

DBTは、変化を促す行動的な介入と、現在の体験を受け止めるアクセプタンスを「弁証法的」に統合します。マインドフルネスはDBTの中核的な技能領域の1つです。

④ アサーション・トレーニング

これは不適切です。

アサーション・トレーニングは、自分と相手の双方を尊重しながら、自分の考えや希望を適切に伝えるための対人技能訓練です。CBTやSSTの文脈で用いられることはありますが、それ自体をマインドフルネスに基づく認知行動療法とは呼びません。

⑤ アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉

適切であり、本問の正答です。

ACTは、アクセプタンスとマインドフルネスを用いながら、価値に沿った行動を広げ、心理的柔軟性を高めることを目指します。

DBTとACTの共通点と違い

DBTとACTは同じ治療法ではありませんが、従来型CBTの単純な「認知を修正する」というイメージだけでは捉えにくい点が共通しています。

  • DBT:マインドフルネス、苦痛耐性、感情調整、対人関係の有効性などの技能を体系的に扱う。
  • ACT:アクセプタンス、脱フュージョン、現在への接触、価値、コミットされた行為などを通じて心理的柔軟性を高める。

試験では、両者を同一視する必要はありません。「マインドフルネスやアクセプタンスを重要な要素として含む第三世代CBT」という共通した位置づけを押さえると判断しやすくなります。

関連知識:認知行動療法の導入

CBTでは、技法の名称だけでなく、問題をどのように整理し、治療の枠組みをどのように共有するかも重要です。治療構造の理解は、第3回問138「認知行動療法の導入」と合わせると整理しやすくなります。

関連知識:うつ病に対する認知行動療法

第三世代CBTと区別して、従来型CBTでよく用いられる技法を確認したい場合は、第5回問37「うつ病に対する認知行動療法」も確認しておくと、認知再構成、活動スケジュール、問題解決などとの位置づけを比較できます。

試験での見分け方

  1. 「マインドフルネス=MBSRやMBCTだけ」と限定しない。
  2. DBTではマインドフルネスが中核的な技能領域であると覚える。
  3. ACTではアクセプタンスとマインドフルネスを通して心理的柔軟性を高めると整理する。
  4. ABAやアサーション・トレーニングはCBTと関連する場面があっても、本問の分類とは別である。

まとめ

第4回午前問54の正答は③・⑤です。

弁証法的行動療法〈DBT〉とアクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉は、どちらもマインドフルネスやアクセプタンスを重要な構成要素として含む第三世代の認知・行動療法として整理できます。

試験では、心理療法の名称だけでなく、その治療がどの理論的系譜にあり、何を主要な治療プロセスとしているかまで押さえておくと、似た選択肢を区別しやすくなります。

参考資料

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