第4回公認心理師試験の午前問53は、要保護児童対策地域協議会の目的、構成、情報共有の考え方を問う問題です。
正答は③・⑤です。制度名だけで判断するのではなく、「誰を対象にするのか」「誰が構成員になり得るのか」「個人情報をどのような法的枠組みで共有するのか」を分けて整理すると解きやすくなります。
問題
要保護児童対策地域協議会について、正しいものを2つ選べ。
- 対象は、被虐待児童に限られる。
- 構成する関係機関は、市町村と児童相談所に限られる。
- 関係機関相互の連携や、責任体制の明確化が図られている。
- 要保護児童対策地域協議会における情報の共有には、保護者本人の承諾が必要である。
- 被虐待児童に対する情報を共有することにより、児童相談所によって迅速に支援を開始できる。
正答:③・⑤
この問題のポイント
要保護児童対策地域協議会は、子どもや家庭をめぐる支援を一つの機関だけで抱え込まず、関係機関等が必要な情報を交換し、支援内容を協議し、役割や責任を整理するための連携の枠組みです。
本問では、①②④に「限られる」「必要である」といった強い限定表現があります。制度問題では、このような断定が法令上の対象や手続を狭くしすぎていないかを確認することが重要です。
要保護児童対策地域協議会とは
児童福祉法に基づき、地方公共団体は要保護児童等への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体、児童の福祉に関連する職務に従事する者などで構成される協議会を置くことができます。
協議会では、支援に必要な情報の交換や支援内容に関する協議を行います。実務上の意味は、単なる「連絡会」ではなく、情報を持つ機関をつなぎ、誰が何を担うのかを明確にして支援を動かすことにあります。
このため、児童相談所だけでなく、市町村、学校・教育、保健・医療、警察、福祉関係機関など、事例に応じて多様な機関が連携の対象になります。
選択肢ごとの解説
① 対象は、被虐待児童に限られる
これは誤りです。
要保護児童対策地域協議会が扱うのは、児童虐待の事例だけではありません。厚生労働省の運営資料でも、支援の対象は虐待を受けた子どもに限定されないことが示されています。
「要保護児童対策」という名称から「虐待児童だけの会議」と狭く覚えると誤ります。保護や支援を必要とする子ども・家庭を、関係機関が連携して支える制度として理解します。
② 構成する関係機関は、市町村と児童相談所に限られる
これは誤りです。
児童福祉法上、構成員は市町村と児童相談所の2機関だけに限定されていません。関係機関、関係団体、児童福祉に関連する職務に従事する者など、必要な関係者が連携できる枠組みになっています。
子どもの問題には、家庭、学校、医療、保健、福祉、警察など複数の領域が関与することがあります。したがって、多機関連携を前提にした制度だと押さえるのが基本です。
③ 関係機関相互の連携や、責任体制の明確化が図られている
これは正しく、正答の1つです。
地域協議会の大きな意義は、各機関が個別に情報を持つだけでなく、必要な範囲で情報を共有し、支援方針を協議し、役割分担を明確にできることです。
支援が停滞する典型の一つは、「どの機関が主に動くのか分からない」「別の機関が対応していると思っていた」という責任の空白です。協議会はこうした空白を減らし、責任体制を明確にする役割を持ちます。
④ 情報共有には、保護者本人の承諾が必要である
これは誤りです。
「個人情報だから、保護者本人の承諾がなければ一切共有できない」と考えるのは不正確です。要保護児童対策地域協議会には、法令に基づいて必要な資料や情報の提供を求め、支援のために情報を共有する仕組みがあります。
一方で、これは情報を自由に共有してよいという意味ではありません。構成員には守秘義務があり、支援目的に必要な範囲で情報を扱うことが前提です。試験では、「本人同意が常に必須」という一律の説明が誤りだと整理します。
⑤ 情報共有により、児童相談所が迅速に支援を開始できる
これは正しく、正答の1つです。
各機関が持つ情報を共有することで、子どもの状況を早期に把握し、必要な支援につなげやすくなります。厚生労働省の運営資料でも、情報共有によって迅速な支援開始が可能になることが地域協議会の利点として示されています。
ただし、実際の支援は児童相談所だけが単独で担うという意味ではありません。地域協議会の本質は、児童相談所を含む関係機関が役割を分担しながら支援を進めることにあります。
情報共有と守秘義務は対立するのか
本問で最も引っかかりやすいのが④です。支援職にとって秘密保持は重要ですが、「秘密を守ること」と「法令に基づく必要な情報共有」は同じではありません。
要保護児童対策地域協議会では、支援に必要な情報交換を可能にする法的な枠組みが設けられる一方、構成員には守秘義務が課されます。つまり、制度は共有を可能にする仕組みと不適切な漏えいを防ぐ仕組みをセットで持っています。
この「必要な共有」と「守秘義務」の両立は、多職種連携を理解するうえで重要な視点です。
児童相談所との役割分担を整理する
要保護児童対策地域協議会そのものが、児童相談所の代わりにすべての支援を行うわけではありません。地域協議会は、複数機関をつなぐ連携・調整のプラットフォームと考えると整理しやすくなります。
児童相談所の体制や関係機関との連携については、第3回問111「児童相談所の体制と連携」も合わせて確認すると、地域協議会と児童相談所の役割の違いが見えやすくなります。
試験での見分け方
- 「虐待だけ」と対象を過度に限定していないか。
- 「市町村と児童相談所だけ」と構成機関を狭くしていないか。
- 「本人同意が必ず必要」と法令に基づく情報共有を否定していないか。
- 連携、役割分担、責任体制の明確化、迅速な支援という制度の目的に合っているか。
制度問題では、「のみ」「必ず」「限る」といった限定語を見つけたら、条文・制度趣旨と照合するのが有効です。
試験当時の制度と現行制度
本問は第4回試験当時の制度理解を問う問題です。児童福祉制度は法改正や運用見直しが続く領域なので、現在の実務を調べる場合は最新の法令・通知を確認する必要があります。
一方、過去問の正誤判定では、当時の制度趣旨と設問文を基準にします。本記事では、試験で問われた中核的な仕組みを中心に整理しています。
まとめ
- 正答は③・⑤。
- 要保護児童対策地域協議会の対象は、被虐待児童だけに限定されない。
- 構成員は市町村と児童相談所だけに限定されず、多様な関係機関等が参加する。
- 関係機関の連携、役割分担、責任体制の明確化が重要な機能である。
- 保護者本人の承諾がなければ情報共有できない、という一律の理解は誤り。
- 法令に基づく必要な情報共有と守秘義務を両立させる。
- 情報共有は、状況把握と迅速な支援開始につながる。



コメント