公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午前 問52|職場のセクシュアルハラスメント防止対策

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第4回公認心理師試験の午前問52は、男女雇用機会均等法に基づく職場のセクシュアルハラスメント防止対策を問う問題です。

正答はです。ポイントは、事業主や労働者に求められる防止・対応上の責務と、紛争調整委員会による調停手続を分けて読むことです。特に②は「誰の同意が、何のために必要なのか」という主語と手続の読み分けが鍵になります。

問題

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律が示す、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止対策について、誤っているものを1つ選べ。

  1. 労働者がセクシュアルハラスメントに関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益な取扱いを禁止する。
  2. 紛争調整委員会は、セクシュアルハラスメントの調停において、関係当事者の同意を得れば、職場の同僚の意見を聴取できる。
  3. 労働者の責務の1つとして、セクシュアルハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うことを定めている。
  4. 事業主は、他社から職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置の実施に関して必要な協力を求められた場合に、応じるよう努めなければならない。

正答:②

この問題のポイント

②の誤りは、「関係当事者の同意」を、職場の同僚などの参考人から意見を聴くための要件としている点です。

男女雇用機会均等法に基づく調停では、紛争調整委員会は必要があると認めるとき、関係当事者だけでなく、同一の事業場に雇用される労働者などの参考人に出頭を求め、その意見を聴くことができます。ここで、参考人から意見を聴くために「関係当事者双方の同意を得ること」が要件とされているわけではありません。

ただし、ここは精密に押さえる必要があります。厚生労働省の解釈通達では、関係当事者や参考人の出頭は強制ではなく、出頭を求められた本人の同意によると整理されています。したがって、「調停で参考人の話を聴くのに同意は一切不要」と覚えるのも不正確です。②では、同僚本人の出頭意思ではなく「関係当事者の同意」を条件にしているところを見抜きます。

職場のセクシュアルハラスメント防止を制度として整理する

この問題は、セクシュアルハラスメントの定義だけを覚えていても解きにくい問題です。試験では、少なくとも次の3層を分けると整理しやすくなります。

  • 事業主の措置:相談体制の整備、事実関係の確認、被害者・行為者への適切な対応、再発防止、プライバシー保護など。
  • 事業主・労働者等の責務:ハラスメントへの関心と理解を深め、自らの言動に注意することなど。
  • 紛争解決手続:自主的解決、都道府県労働局長による援助、紛争調整委員会による調停など。

「防止措置の中身」と「紛争が起きた後の調停手続」を同じ箱に入れないことが、本問の土台です。

選択肢ごとの解説

① 労働者が相談したこと等を理由とする不利益な取扱いを禁止する

これは適切です。

労働者がセクシュアルハラスメントについて相談したことや、事業主による事実確認に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを行うことは禁止されています。

相談制度が形式上存在していても、「相談したら降格されるかもしれない」と労働者が感じる状態では利用しにくくなります。そのため、相談・協力を理由とする不利益取扱いの禁止は、防止・対応制度を実効的に機能させる重要な要素です。

② 関係当事者の同意を得れば、職場の同僚の意見を聴取できる

誤りであり、本問の正答です。

紛争調整委員会は、調停のため必要があると認めるとき、関係当事者と同じ事業場で働く労働者などの参考人に出頭を求め、意見を聴くことができます。その際、職場の同僚から意見を聴くための要件を「関係当事者の同意」とする規定ではありません。

一方で、参考人等の出頭自体は強制的な権限によるものではなく、出頭を求められた本人の同意によります。「関係当事者の同意」と「参考人本人の出頭意思」を混同しないことが重要です。

③ 労働者も関心と理解を深め、自らの言動に注意する

これは適切です。

職場のセクシュアルハラスメントを防止するためには、事業主だけでなく、労働者も問題への関心と理解を深め、他の労働者に対する自らの言動に必要な注意を払うことが求められます。

試験では「防止義務はすべて事業主だけの話」と単純化しないようにします。事業主には雇用管理上の措置義務があり、それとは別に事業主・労働者それぞれに責務が整理されています。

④ 他社から必要な協力を求められた場合、応じるよう努める

これは適切です。

職場のセクシュアルハラスメントでは、行為者が自社の労働者とは限りません。他の事業主や取引先の労働者などが関係する場合もあります。そのため、他の事業主が雇用管理上の措置を実施するために必要な協力を求めたとき、求められた事業主には協力に応じる努力義務が示されています。

企業の境界をまたぐ事案を想定した規定である、と理解すると覚えやすくなります。

調停手続で「同意」をどう読むか

本問は、「同意」という言葉が出てきたときに、その対象を曖昧にしないことを教えてくれる問題です。

  • 調停を開始する場面では、関係当事者の一方または双方から申請があり、都道府県労働局長が必要と認めるなどの手続があります。
  • 調停委員会が参考人の意見を必要と判断する場面では、同僚などの参考人に出頭を求めることができます。
  • その出頭は強制ではなく、出頭を求められた本人の同意によります。

したがって、「関係当事者の同意があれば同僚の意見を聴ける」という一文は、手続の主体と同意の対象をずらしています。

試験での見分け方

法律・制度問題では、選択肢の主語を最初に確認すると誤りを見つけやすくなります。

  • 事業主がしなければならないことか。
  • 労働者にも求められる責務か。
  • 紛争調整委員会に認められた手続か。
  • 「同意」「必ず」「のみ」などの条件が、誰についての条件なのか。

本問では、「同意」というもっともらしい条件が付いていますが、条件の主体がずれています。制度問題では、単語の印象ではなく誰が・誰に対して・何をする規定かを分解して読むのが有効です。

関連知識:第3回問57とつなげて覚える

職場のセクシュアルハラスメントの基本的な制度整理は、第3回問57「男女雇用機会均等法・セクシュアルハラスメント」の解説も合わせて確認すると理解しやすくなります。

第3回問57で制度の土台を押さえ、本問で相談後の不利益取扱い、労働者の責務、他社との協力、調停手続まで広げると、同じ法律を立体的に整理できます。

2026年10月1日の制度変更とは分けて考える

本問は第4回試験当時の制度を問う問題です。一方、2026年10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化など、ハラスメント対策に関する新たな制度変更が予定されています。

現在の学習で最新制度を確認することは重要ですが、施行予定の新制度をさかのぼって本問の正誤根拠にしてはいけません。「試験当時の正答」と「現在・今後の制度」を分けて確認しましょう。

まとめ

  • 正答は
  • 参考人から意見を聴くために「関係当事者の同意」が要件とされているわけではない。
  • ただし、参考人等の出頭は強制ではなく、出頭を求められた本人の同意による。
  • 相談等を理由とする不利益取扱いは禁止されている。
  • 労働者にも関心・理解を深め、自らの言動に注意する責務がある。
  • 他社から必要な協力を求められた事業主には、応じる努力義務がある。
  • 2026年10月1日施行予定の制度変更と、第4回試験当時の論点は分けて扱う。

参考資料

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