公認理師資格試験 過去問解説 問23 ユニバーサルデザイン

公認理師資格試験 過去問解説 問23 ユニバーサルデザイン

第4回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

【令和3年10月29日14時】第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表|講習・試験・登録|一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理試験

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

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【問23】ユニバーサルデザイン

問23 ユニバーサルデザインの考え方に基づいて、授業を実施する場合に重要な視点として、最も適切なものを1つ選べ。
① 同化

② 熟達化

③ 焦点化

④ 体制化

⑤ 符号化

出典:第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

正答は ③

③ 焦点化

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザイン universal design とは、1985年にRonald Mace(ロナルド・メイス)によって提唱された概念で、年齢・能力・状況などに関わらず、最大限利用可能な範囲ですべての人が利用可能なデザイン(設計:製品・環境・計画・サービス等)とされます。

ユニバーサルデザインは「障害者の権利に関する条約」にも含まれています。

学校教育に関するユニバーサルデザインとは、障害の有無にかかわらず適切な教育を受けることができるような環境を作ることを意味しています。

本問題の「ユニバーサルデザインの考え方に基づいた授業づくり」とは、個別の配慮や調整などをせずとも最大限すべての生徒が理解できるような授業をつくるというコンセプトになりますね。

選択肢の解説

①同化

同化」とは、ピアジェの提唱する「同化/調節」を指していると考えられます。

「同化/調節」に関する解説を見ると、

ピアジェは、発達のメカニズムとして同化と調節のバランスが取れること(均衡化)とした。また、同化に対して調節が優位になると模倣、調節に対して同化が優位になると遊びという活動となる。このように、ピアジェによると同化と調節は表象(象徴)機能の形成の基礎となるとされる。

出典:心理学辞典|有斐閣

とあり、子どもの発達のメカニズムに関する概念であるとわかります。

よって、ユニバーサルデザインに関する授業とは無関係であるため、選択肢①「同化」は不適切な回答といえます。

②熟達化

「熟達化」とは、

長期にわたる学習の一種。熟達化した技能には二つの特徴がある。(中略)安定して行為が達成されているという側面と、でありながら状況の変化にきわめて柔軟に対処するという側面がある。

出典:心理学辞典|有斐閣

と記載されています。

「熟達化」は主に技能的な学習に関連性が深く、授業における最終目標ともなりますが、ユニバーサルデザインとの関係性は不明瞭といえます。

よって、選択肢②「熟達化」は不適切な回答といえます。

③焦点化

ユニバーサルデザインの考え方に基づいた授業の視点として以下の3つの考え方が挙げられています。

  • 焦点化
  • 視覚化
  • 共有化

「焦点化」とは、「授業のねらいや活動を絞ること」です。

1コマの授業の中に複数のねらいを詰め込んでしまうと、授業が複雑化し、ついていくことができなくなる生徒(児童、学生)が出てきてしまうことが想定されます。

そのため、「めあて」を提示する等の工夫も含め、内容を絞って授業を展開することが大切であるとされています。

【参考文献等】

以上のことから、選択肢③「焦点化」が本問題の正答となります。

④体制化

体制化とは、ゲシュタルト心理学あるいは認知心理学の用語で、組織化ともいわれます。

組織化とは一般的に、独立した要素がばらばらではなく相互に関連して秩序ある統合的な全体を構成する状態のことをいい、構造とほぼ同義である。知覚の体系化についてはゲシュタルト心理学において精力的に研究が行われた。その中でもプレグナンツの傾向、コンプライアンス系(枠組)の概念が提唱されている。

出典:心理学辞典|有斐閣

とあります。

また、

(中略)ブルーナーの理論理論、概念形成、バートレットラの記憶の体系化の研究を経て、タルヴィング、マンドラーや、GHバウアーラの意味記憶研究につながる一連の研究が、認知心理学において行われている。

出典:心理学辞典|有斐閣

ともあります。

体制化 = 刺激をまとまりとして知覚すること

よって、選択肢④は不適切といえますね。

⑤符号化

符号化 encoding とは、入力情報を処理可能な形式に変換することを意味します。

心理学で記号化という用語を採用する場合には、入力された刺激が内なる処理が可能な形式に変換されて記憶表象として保管されるまでの一連の処理過程をさす。

出典:心理学辞典|有斐閣

とあるように、心理学において符号化は主に「記憶の処理過程」で使われます。

以上より、選択肢⑤は不適切といえます。

まとめ

  • ユニバーサルデザイン:1985年にRonald Mace(ロナルド・メイス)によって提唱された概念で、年齢・能力・状況などに関わらず、最大限利用可能な範囲ですべての人が利用可能なデザイン(設計:製品・環境・計画・サービス等)
  • ユニバーサルデザインに基づいた授業づくり個別の配慮や調整などをせずとも最大限すべての生徒が理解できるような授業をつくる
  • 焦点化:授業のねらいや活動を絞ること