第4回公認心理師試験 午前問51は、個人情報保護に関する基本概念を問う問題です。正解するには、「守秘義務」と「個人情報保護法上の個人情報」を混同せず、さらに個人情報・個人データ・要配慮個人情報・個人識別符号を区別して理解する必要があります。
問題
個人情報保護について、誤っているものを1つ選べ。
- 本人の同意があれば、当該本人に関する個人データを第三者に提供できる。
- クライエントが公認心理師に対する信頼に基づいて打ち明けた事柄は、個人情報に該当しない。
- 個人情報には、指紋やDNAの塩基配列など身体に固有の特徴を符号化したデータも含まれる。
- 個人情報取扱事業者は、その取扱う個人データについて、安全管理のために必要な措置を講じなければならない。
正答:②
この問題のポイント
最も重要なのは、「信頼して打ち明けられた情報だから個人情報ではない」ということにはならない点です。個人情報保護法上の「個人情報」は、基本的には生存する個人に関する情報で、氏名などによって特定の個人を識別できるもの、または個人識別符号を含むものを指します。
心理面接でクライエントが話した内容には、家族関係、職歴、生活状況、受診歴、心理状態など、本人と結びつけば個人を識別し得る情報が多く含まれます。こうした情報が「信頼関係の中で話された」という事情は、情報の重要性や守秘の必要性を高めますが、個人情報の定義から外す理由にはなりません。したがって②が誤りです。
選択肢ごとの解説
① 本人の同意があれば、当該本人に関する個人データを第三者に提供できる。
この選択肢は、試験問題のレベルでは適切です。個人データの第三者提供は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで行ってはならないとされています。したがって、本人の同意は第三者提供を考える際の重要な要件です。
ただし、ここで「本人が同意すれば、どのような情報でも、どのような場面でも自由に提供できる」と一般化してはいけません。実務では、法令上の例外、利用目的、提供先、組織内の規程、専門職としての守秘義務など、複数の規律を確認する必要があります。試験ではまず第三者提供=原則として本人同意が必要という骨格を押さえます。
② クライエントが公認心理師に対する信頼に基づいて打ち明けた事柄は、個人情報に該当しない。
誤りであり、この問題の正答です。心理職に対して秘密として語られた情報であっても、その内容が生存する個人に関する情報であり、特定個人を識別できるのであれば、個人情報に該当し得ます。
ここでは、「守秘されるべき情報」と「個人情報」は別の観点から整理されることが重要です。公認心理師には職業上の守秘義務があり、相談記録の管理にも慎重さが求められます。一方、個人情報保護法は情報の取得・利用・保存・第三者提供・安全管理などを規律します。両者は重なり合う場面が多いものの、同じ概念ではありません。
関連して、公認心理師の守秘義務については「公認心理師の義務」、記録管理については第3回問17「適切な記録等」も合わせて確認しておくと整理しやすくなります。
③ 個人情報には、指紋やDNAの塩基配列など身体に固有の特徴を符号化したデータも含まれる。
この選択肢は適切です。個人情報保護法では、特定の個人を識別できるように身体的特徴を変換した一定の情報が個人識別符号として扱われます。個人情報保護委員会のガイドラインでは、一定のDNA塩基配列に関する情報や、指紋・掌紋の特徴量などが例として示されています。
ここで注意したいのは、「DNAや指紋という言葉が付けば何でも自動的に個人識別符号になる」という理解ではないことです。法令上定められた基準により、本人を認証・識別できるよう符号化された特徴情報として捉えるのが正確です。
④ 個人情報取扱事業者は、その取扱う個人データについて、安全管理のために必要な措置を講じなければならない。
この選択肢は適切です。個人情報取扱事業者には、個人データの漏えい、滅失、毀損などを防止するために、必要かつ適切な安全管理措置を講じることが求められます。
心理職の実務に引きつけると、紙の記録を施錠して保管する、電子記録へのアクセス権を管理する、不要な情報共有を避ける、持ち出しルールを整備するなどが安全管理の発想に当たります。ただし、具体的な実装は所属機関の規程や情報システムによって異なります。
個人情報・個人データ・要配慮個人情報を区別する
この領域では用語の近さが混乱の原因になります。個人情報は個人を識別できる情報を広く捉える概念です。個人データは、そのうち個人情報データベース等を構成する情報を中心に扱う法的概念です。また、病歴や健康診断結果など、本人に対する不当な差別や偏見などが生じないよう特に配慮を要する情報は要配慮個人情報として別に規律されています。
公認心理師試験では、これらをすべて「秘密の情報」とひとまとめにすると選択肢を見誤ります。法律上の情報分類なのか、専門職の守秘義務なのか、記録管理上の安全管理なのかを切り分けて読むことが重要です。
試験での見分け方
個人情報保護の問題では、次の順番で判断すると整理しやすくなります。
- その情報は、特定の生存する個人に関する情報か。
- 個人を識別できる情報、または個人識別符号を含むか。
- 問題文は「個人情報」「個人データ」「要配慮個人情報」のどれを聞いているか。
- 第三者提供、保存、安全管理、守秘義務のどのルールを問うているか。
今回の②は、「信頼関係で打ち明けた」という心理職らしい文脈に引っ張られず、法的な個人情報の定義に戻れるかがポイントです。
心理職で個人情報保護を考えるときの整理
心理支援の場面では、単に氏名や住所だけが個人情報になるわけではありません。相談内容、家族構成、職場や学校での出来事、心理検査結果、受診歴なども、本人と結びつけば個人情報として扱う必要があります。特に心理職が扱う記録には、本人の内面や生活歴など非常にセンシティブな内容が含まれるため、情報の取得・保存・共有をそれぞれ分けて考えることが重要です。
ここで試験上よく混同されるのが、「秘密だから個人情報なのか」「個人情報だから秘密なのか」という関係です。実際には、守秘義務は専門職として知り得た秘密をみだりに漏らさないという義務であり、個人情報保護法は個人情報や個人データの取扱いを法的に規律する仕組みです。両者は同じ情報を対象とすることがありますが、根拠も判断の仕方も完全には一致しません。
要配慮個人情報との関係
心理職が扱う情報には、病歴や健康状態など、本人への差別や偏見につながるおそれがある情報が含まれることがあります。こうした情報の一部は要配慮個人情報として位置づけられ、通常の個人情報以上に慎重な取扱いが求められます。
公認心理師試験では、「個人情報」という大きな概念の中で、さらに個人データや要配慮個人情報などの区別があることを理解しているかが問われます。したがって、選択肢に「病歴」「健康診断」「診療」「障害」などが出てきたときは、単なる守秘義務だけでなく、個人情報保護法上の分類も意識すると判断しやすくなります。
事例問題での読み方
個人情報保護の事例問題では、「本人の同意があるか」「誰に提供するのか」「何の目的で使うのか」「その情報はどの法的区分に当たるか」を順番に整理します。例えば、チーム支援だからといって無条件にすべての情報を共有してよいわけではなく、必要性や利用目的、所属機関のルールを確認する必要があります。
逆に、秘密性の高い相談内容だからといって、それが個人情報ではなくなるわけでもありません。今回の②はまさにこの混同を狙った選択肢です。情報の秘密性と、個人情報への該当性は別々に判定するという視点を持っておくと、法律系の問題で安定して判断できます。
また、心理職が記録を扱うときは、収集時だけでなく、保管中・共有時・廃棄時まで情報管理が続きます。試験では「取得した瞬間だけ守ればよい」のではなく、情報のライフサイクル全体に安全管理の考え方が及ぶと理解しておくと、実務的な選択肢にも対応しやすくなります。
まとめ
第4回午前問51の正答は②です。クライエントが信頼して公認心理師に打ち明けた情報であっても、特定個人を識別できる内容であれば個人情報に該当し得ます。守秘義務と個人情報保護法は密接に関連しますが、同一概念ではありません。
試験対策としては、①第三者提供と本人同意、②個人情報の定義、③個人識別符号、④安全管理措置をそれぞれ独立した論点として押さえると、類似問題にも対応しやすくなります。



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