第5回公認心理師試験 午前問34は、小児科領域で働く公認心理師の役割を問う問題です。ポイントは、心理職の業務を「子どもへの心理面接だけ」に狭めず、家族支援、多職種連携、身体疾患の理解、虐待対応、医療チームへのコンサルテーションまで含めて考えることです。
問題
小児科における公認心理師の活動の留意点に含まれないものを1つ選べ。
- 家族は心理的支援の対象である。
- 治療すべき身体疾患を見逃さないよう連携を図る。
- 虐待に関わる証拠の発見収集はもっぱら医師に任せる。
- 疾患についての治療内容や自然な経過を知るようにする。
- 重篤な疾病の診療で疲弊した医療者を支えることは業務の1つとなる。
正答:③
正答③|虐待対応を「もっぱら医師に任せる」は不適切
この問題は「含まれないもの」を選ぶ形式です。③では、虐待に関わる証拠の発見・収集をもっぱら医師に任せるとしていますが、このような単独職種への丸投げは適切ではありません。
児童虐待が疑われる場面では、子どもの身体所見だけでなく、家族背景、養育状況、心理状態、受診歴、親子関係、学校や地域からの情報など、多面的な情報を統合して考える必要があります。厚生労働省資料でも、医療機関内で多職種からなるチームを形成し、必要な情報収集、リスク判定、地域との連携を進める体制が示されています。
公認心理師は医師の診断や医学的判断を代替するわけではありませんが、心理・行動面の観察、家族との面接、チーム内での情報共有、関係機関との連携など、自らの専門性に応じた役割を担います。したがって、「虐待に関わることは医師だけに任せる」という理解は誤りです。
多職種連携の基本は、第3回問35「多職種連携コンピテンシー」も確認しておきましょう。虐待に関連する医療事例としては、第3回問64「代理によるミュンヒハウゼン症候群」も関連します。
各選択肢を確認
① 家族は心理的支援の対象である
適切です。小児医療では、子どもの治療や療養生活が家族全体に影響します。保護者の不安、きょうだいへの影響、治療選択への葛藤、長期入院に伴う生活変化なども心理支援の対象になります。
小児心理学の文献でも、慢性疾患をもつ子ども・青年だけでなく、その家族を含めた支援が重要な領域として位置づけられています。家族は単なる「付き添い」ではなく、支援対象であり、同時に治療・生活を支える重要な協働者でもあります。
② 治療すべき身体疾患を見逃さないよう連携を図る
適切です。心理的な訴えに見える症状でも、身体疾患が背景にある可能性があります。公認心理師自身が医学的診断を行うのではありませんが、心理職だけで判断を閉じず、医師や看護師などと連携し、必要な医学的評価につなぐ姿勢が必要です。
特に小児では、子どもが症状を言語化しにくい場合や、身体症状と心理社会的要因が相互に影響している場合があります。心理職は「心理的な問題だろう」と早期に決めつけないことが重要です。
③ 虐待に関わる証拠の発見収集はもっぱら医師に任せる
不適切です。これが正答です。虐待対応は医師だけの仕事ではありません。医療機関では多職種が情報を共有し、各専門職の立場から子どもの安全を評価します。
ただし、心理職が独自に捜査や法医学的判断を行うという意味でもありません。役割分担を明確にしながら、必要に応じて児童相談所、市区町村、学校、警察などの関係機関とも連携します。試験では、「全部自分でやる」も「全部ほかの職種に任せる」も極端だと考えると整理しやすいでしょう。
④ 疾患についての治療内容や自然な経過を知るようにする
適切です。公認心理師が医学的治療を行うわけではありませんが、支援対象となる疾患の治療内容や一般的な経過を理解しておくことは重要です。
例えば、治療による活動制限、入院期間、副作用、再発への不安、復学の時期などは心理支援の内容に直接関わります。病気の経過を理解していなければ、子どもや家族が直面している負担を正確に捉えにくくなります。
⑤ 重篤な疾病の診療で疲弊した医療者を支えることは業務の1つとなる
適切です。小児科では、重症疾患、慢性疾患、終末期、虐待など心理的負荷の高い事例に医療者が継続的に関わることがあります。公認心理師は患者・家族だけでなく、医療チームに対するコンサルテーションや心理的支援に関わる場合があります。
ただし、すべての医療者支援を公認心理師が単独で担うという意味ではありません。組織的な支援体制の中で、心理職の専門性を活かすと考えるのが適切です。
試験で押さえる小児科心理職の5つの視点
- 子ども本人:発達段階に応じた心理支援。
- 家族:保護者・きょうだいを含めた家族システムへの支援。
- 身体疾患:治療内容や経過を理解し、医学的評価と連携する。
- 多職種チーム:医師、看護師、MSW、リハ職などと情報共有する。
- 地域・関係機関:虐待や退院支援などでは院外機関との連携も行う。
関連知識|心理職は医療を代替しないが、医療から切り離されてもいけない
医療領域の心理職で重要なのは、役割境界を守りつつ、他職種との連携を避けないことです。医学的診断・治療は医師の領域ですが、心理職は心理評価、心理支援、家族支援、コンサルテーション、チーム内コミュニケーションなどを通して医療に貢献します。
試験では、「心理職だから身体疾患は見なくてよい」「医師がいるから虐待対応は任せればよい」といった職種間の分断を促す選択肢は疑ってください。
小児科の心理支援は「子どもだけ」を対象にしない
小児医療では、子どもの病気が本人だけで完結することは少なく、家族の生活、保護者の就労、きょうだい関係、学校生活、将来への見通しなどに広く影響します。逆に、家族の理解や支援体制が子どもの治療参加や心理的適応を支えることもあります。
そのため、小児科領域の心理支援は、少なくとも子ども本人・家族・医療チームの3つの層を行き来して考える必要があります。さらに退院後や長期療養では、学校や地域機関との連携も加わります。心理職の役割を「子どもと1対1で面接すること」だけに限定すると、本問の選択肢を誤りやすくなります。
「身体」か「心理」かの二分法を避ける
②と④は、医療領域の心理職に必要な基本姿勢を表しています。心理的なストレスが身体症状として現れることはありますが、身体症状があるからといって最初から心理的要因だけで説明してはいけません。治療が必要な身体疾患を見逃さないよう、医師や看護師と連携する必要があります。
一方で、心理職が医学的診断や治療方針を決めるわけでもありません。必要なのは、疾患の一般的な経過や治療に伴う生活上の影響を理解し、心理支援のタイミングや内容を医療チームと調整することです。つまり、役割境界を守ることと、多職種連携することは両立すると考えます。
虐待対応で重要なのは「単独職種化しない」こと
③の最大の誤りは「もっぱら医師に任せる」という部分です。虐待が疑われる場面では、身体所見、行動観察、親子関係、受診の経緯、家族からの説明、学校や地域からの情報など、異なる専門職が持つ情報を統合する必要があります。
医師は医学的評価に重要な役割を担いますが、看護師、心理職、MSWなども、それぞれの接点から重要な情報を得ます。院内チームで情報を共有し、必要に応じて地域の関係機関と連携することが基本です。公認心理師試験では、専門職ごとの役割分担+情報共有+連携という組み合わせを押さえておくと判断しやすくなります。
コンサルテーション・リエゾンという視点
小児科の心理職は、患者本人への直接支援だけでなく、医療チームから相談を受け、心理的な見立てや関わり方を共有するコンサルテーション・リエゾン活動を行うことがあります。例えば、治療への恐怖が強い子どもへの説明方法、長期入院中の心理的適応、家族とのコミュニケーション、スタッフが対応に行き詰まっている場面などです。
⑤もこの文脈で理解できます。高負荷の医療現場では、支援者自身が心理的負担を抱えることがあります。心理職がチーム支援に関わることはあり得ますが、組織的な職員支援を心理職だけに背負わせるという意味ではありません。
参考資料
- 日本心理研修センター|第5回公認心理師試験 問題
- 日本心理研修センター|第5回公認心理師試験 正答
- 厚生労働省|医療機関における児童虐待対応体制に関する資料
- PubMed|Roles for Pediatric Psychologists
- PubMed|Family systems practice in pediatric psychology
- PubMed|The Role of Psychologists in Pediatric Hospital Medicine
※本記事は資格試験学習のための一般的解説です。個別の医療判断・虐待通告・法的対応については、各機関の手順と関係法令に従ってください。



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