公式問題
探索的因子分析において、固有値の変化がなだらかになる1つ前までの固有値の数を因子数とする基準として、最も適切なものを1つ選べ。
- MAP基準
- VSS基準
- カイザー基準
- スクリー基準
- ガットマン基準
正答:④
この問題のポイント
設問の決め手は、
「固有値の変化がなだらかになる1つ前まで」
という表現です。
これは、固有値を大きい順に並べてグラフ化し、急激に低下していた曲線が平坦になる折れ曲がり〈elbow/point of inflection〉を見つけ、その手前までを残すスクリー基準〈scree criterion/scree test〉を説明しています。
したがって正答は④です。
探索的因子分析とは
探索的因子分析〈exploratory factor analysis:EFA〉は、多数の観測変数の背後にある、直接は観測できない少数の潜在的な因子を探索するための多変量解析です。
たとえば心理尺度に20項目があり、項目同士に一定の相関があるとします。その相関関係の背後に、
- 不安
- 抑うつ
- 対人回避
などの共通因子があるのではないか、とデータから探索するのが因子分析の基本的な発想です。
因子分析そのものの概要や、主成分分析との違いについては、第4回 問6「因子分析」で解説しています。
因子数を決める必要がある
探索的因子分析では、「何個の因子を残すか」を決めなければなりません。
因子を少なくしすぎると、本来複数ある構造を一つにまとめすぎてしまいます。反対に多く残しすぎると、ノイズまで独立した因子として解釈してしまう可能性があります。
そのため、
このデータには何因子が妥当か
を判断するための複数の基準が提案されています。
本問に登場するMAP、VSS、カイザー、スクリーなどは、いずれも因子数・次元数を検討するための方法に関連しますが、判断の仕組みが異なります。
固有値とは
試験対策としては、固有値〈eigenvalue〉を、
「その因子・成分が、データのばらつきをどの程度まとめて説明しているかを表す大きさ」
とイメージすると理解しやすくなります。
固有値が大きい因子ほど、多くの情報を担っていると考えます。
通常、最初の因子の固有値は大きく、因子番号が後になるほど固有値は小さくなっていきます。
この「固有値がどのように減っていくか」を図で確認するのがスクリー法です。
スクリー基準とは
スクリー基準では、
- 横軸:因子番号または成分番号
- 縦軸:固有値
として固有値を大きい順にプロットします。
すると、多くの場合、最初は固有値が急に低下し、その後は小さな固有値がなだらかに続く形になります。
このとき、曲線が急な部分から緩やかな部分へ移る折れ曲がりを探します。
Cattellのscree testでは、この変曲点の左側にある因子を保持するという考え方が基本です。
設問の、
「固有値の変化がなだらかになる1つ前までの固有値の数」
という表現は、まさにこのスクリー基準の説明です。
「scree」という名前の意味
screeは、山や崖の下にたまった岩屑・がれきを意味する言葉です。
固有値のグラフでは、重要な因子に対応する大きな固有値が急斜面のように並び、その後に小さな固有値が「がれき」のようになだらかに続くと考えます。
したがって、
急斜面が終わって、がれき状に平坦になる直前までを残す
とイメージすると覚えやすくなります。
各基準を区別する
| 基準 | 基本的な考え方 | 試験でのキーワード |
|---|---|---|
| MAP基準 | 因子・成分を順に取り除いた後の偏相関を用いて残す数を評価する | 平均偏相関・最小化 |
| VSS基準 | 単純化した因子構造が元の相関構造をどれだけ再現できるかで評価する | Very Simple Structure |
| カイザー基準 | 一般に固有値が1以上の因子・成分を残す | 固有値1 |
| スクリー基準 | 固有値曲線の折れ曲がりより前を残す | elbow・なだらかになる直前 |
| ガットマン基準 | スクリー曲線の折れ曲がりそのものを表す名称ではない | 本問の記述とは一致しない |
各選択肢を詳しくみる
① MAP基準
誤りです。
MAP〈Minimum Average Partial〉は、成分を順に取り除いた後に残る偏相関を利用して、残す次元数を検討する方法です。
スクリー法のように「固有値曲線がなだらかになる場所を目で見る」という基準ではありません。
② VSS基準
誤りです。
VSS〈Very Simple Structure〉は、因子負荷の構造を単純化し、その単純化した構造が元の相関行列をどの程度再現できるかを評価する方法です。
これも、固有値曲線の折れ曲がりを見る方法ではありません。
③ カイザー基準
誤りです。
カイザー基準は、一般に固有値が1以上の因子・成分を残すという基準です。
本問の「固有値がなだらかになる1つ前」という視覚的な基準とは異なります。
なお、文献では「Kaiser-Guttman rule」という呼称も使われます。このため「カイザー」と「ガットマン」という名称だけで覚えると混乱しやすくなります。
試験では、基準名よりも設問に書かれた判断ルールを読んでください。
④ スクリー基準
正しいです。
固有値を大きい順にプロットし、曲線が急激な低下からなだらかな低下へ移る折れ曲がりを探し、その前までの因子を残します。
設問の記述と一致するため④が正答です。
⑤ ガットマン基準
誤りです。
少なくとも、本問が説明している「固有値曲線がなだらかになる直前までを因子数とする」という方法はスクリー基準です。
因子数決定の文献では「Kaiser-Guttman rule」という名称が使われることもあり、カイザー基準とガットマンの名称は密接に関連して登場します。
そのため、⑤という名称に引っ張られるのではなく、
折れ曲がりを見る → スクリー基準
と定義から判断することが重要です。
スクリー基準の長所と限界
スクリー基準は視覚的で理解しやすいという長所があります。
一方で、固有値の曲線に明瞭な折れ曲がりがない場合、
- どこをelbowとみなすか
- 何因子残すか
について評価者の判断が入りやすくなります。
方法論研究でも、scree plotのvisual inspectionには主観性があることが指摘されています。
したがって、実際の研究ではスクリー基準だけに依存せず、他の因子数決定法や理論的解釈可能性とあわせて検討することが重要です。
parallel analysisも押さえておく
parallel analysis〈平行分析〉は、本問の正答ではありませんが、現在の因子数決定を理解するうえで重要です。
基本的には、実データから得られた固有値を、同じ規模のランダムデータから得られる固有値と比較し、ランダムな変動以上の大きさをもつ因子を残す考え方です。
スクリー基準が視覚的判断を含むのに対し、parallel analysisはランダムデータとの比較という別の基準を用います。
試験ではまず、
- 固有値1以上 → カイザー基準
- 折れ曲がり → スクリー基準
- ランダムデータと比較 → parallel analysis
という区別ができるようにしておきましょう。
因子分析と主成分分析も混同しない
固有値は因子分析や主成分分析の説明で登場するため、両者を混同しやすいところです。
主成分分析〈PCA〉は、複数の観測変数の情報を、重みづけした少数の主成分へ要約することを中心的な目的とします。
一方、因子分析では、観測変数間の相関の背後にある潜在的な共通因子を想定します。
主成分分析については、第3回 問81「主成分分析」で詳しく整理しています。
試験での見分け方
因子数決定法は、方法の名前より「判断ルール」とセットで覚えるのがおすすめです。
- 固有値1以上 → カイザー基準
- 固有値の折れ曲がり → スクリー基準
- 平均偏相関を最小化 → MAP
- 単純化した構造の再現性 → VSS
- ランダムデータとの固有値比較 → parallel analysis
本問の「なだらかになる1つ前」という表現が見えたら、④スクリー基準を選びます。
まとめ
- 正答は④ スクリー基準
- EFAでは何個の因子を残すかを決める必要がある
- スクリー基準は固有値を大きい順にプロットする
- 急な低下から平坦になる折れ曲がりより前の因子を残す
- カイザー基準は「固有値1以上」であり別の基準
- MAP、VSSも因子数決定に関連するが判断原理が異なる
- スクリー法は視覚的で分かりやすい一方、折れ曲がりの判断に主観性が入り得る
- 実際の研究ではparallel analysisなど別の方法とあわせた検討も重要
参考資料
- 第6回公認心理師試験 午前問題|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/128/File/04_gokaku_happyo_07.pdf
- 第6回公認心理師試験 正答|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/128/File/03_gokaku_happyo_07.pdf
- Risky Business: Factor Analysis of Survey Data – Assessing the Probability of Incorrect Dimensionalisation
- Cattell RB. The Scree Test For The Number Of Factors.
- Wood ND, Gnonhosou DCA, Bowling J. Combining Parallel and Exploratory Factor Analysis in Identifying Relationship Scales in Secondary Data.


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