公認心理師資格試験 過去問解説 問41 向精神薬「睡眠薬の副作用」

公認心理師資格試験 過去問解説 問41 向精神薬「睡眠薬の副作用」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 



 

【問41】向精神薬「睡眠薬の副作用」

問41 睡眠薬に認められる副作用として、通常はみられないものを1つ選べ。

① 奇異反応

② 前向性健忘

③ 反跳性不眠

④ 持ち越し効果

⑤ 賦活症候群〈アクティベーション症候群〉

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ⑤

 

⑤ 賦活症候群〈アクティベーション症候群〉

となります。

 

賦活症候群

賦活症候群 Activation Syndromeとは❓

新しい抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬 Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:SSRIセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors:SNRIの代表的な副作用で、中枢神経刺激症状のひとつです。

 

賦活症候群は、SSRIやSNRI以外でも従来の抗うつ薬でも生じることがあり、抗うつ薬服用によって「衝動性」や「攻撃性」が高くなり、いわゆる過覚醒な状態になることをいいます。

アクティベーション・シンドロームとは、抗うつ薬の服用開始(多くは2週間以内)や増量に伴って、不安、焦燥(イライラ、ソワソワ)、パニック発作、不眠、易刺激性(ちょっとしたことで怒りっぽくなったり敏感に反応すること)、敵意、衝動性、アカシジア(身体がソワソワ・ムズムズしてじっとしていられない状態)、軽躁・躁状態(普段より動き過ぎたり、しゃべり過ぎる、怒りっぽくなる)といった症状が出現することがあり、これらの症状の集まりのことを表す言葉です。

出典:日本うつ病学会(2009). 抗うつ薬の適切な使い方についてーうつ病患者様およびご家族へのメッセージー

 

高齢者より若年者に生じやすいとされ、児童・青年期の抗うつ薬服用に慎重な様相があるのも、この副作用が要因のひとつです。

 

今回の問題は睡眠薬に認められる副作用を回答するものですが、不適切なものを選択する必要があるため、賦活症候群が問題の回答となります。

 



 

選択肢の解説

奇異反応

奇異反応 paradoxical reactionとは、薬物療法の際にもともと想定されている効果とは逆の作用が起きることをいいます。

 

特に、睡眠薬や抗不安薬などベンゾジアゼピン系薬剤で生じることの多い副作用とされています。

 

奇異反応については以下の文献の記載が参考になります❗️

奇異反応とは、BZ系薬剤により、かえって不安・焦燥が高まり、気分易変性、攻撃性、興奮などを呈するものであり、①抑うつ状態、②精神病状態(幻覚, 妄想, 躁状態)、③敵意・攻撃性・興奮の3つのパターンが挙げられ、③が中核をなす。

出典:倉田・藤川(2008). 攻撃性・暴力と向精神薬をめぐる問題 ベンゾジアゼピン系薬剤による奇異反応:攻撃性,暴力を中心に, 臨床精神薬理, 11(2), 253-259.

 

「脱抑制」と呼ばれることもあるようで、こちらの用語の方がなじみ深い方が多いかもしれません。

 

このように「奇異反応≒脱抑制」は、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に多い副作用といえます。

 

前向性健忘

前向性健忘 anterograde amnesiaとは、ある時点Xよりあとの記憶がないという記憶障害のことをさします。

 

反対に、ある時点Xより以前の記憶がない記憶障害のことは、逆向性健忘と呼ばれます。

 

つまり、数分から数日以内の記憶である「近似記憶 recent memory」が障害されている状態といえます。

 

睡眠薬服用後に生じる副作用として、服用後の一定期間や夜間に起きた際など一時的な前向性健忘が生じることがあります。

 

反跳性不眠

反跳性不眠 rebound effectとは、睡眠薬服用によって一定水準の睡眠が取れるようになった後で、薬の中断・変更・減量などによって、服用前よりも強い不眠症状が出現することをいいます。

 

睡眠薬服用中というよりも、減量時の離脱症状の一種であり、ベンゾジアゼピン系など短期的に強い効果を有する睡眠薬で生じやすいとされています。

 

持ち越し効果

持ち越し効果 carry over effectとは、服用した薬剤の効果が必要以上に残ってしまうことをいいます。

 

睡眠薬の持ち越し効果としては、眠気・ふらつき・頭痛・頭重感・倦怠感・脱力感などが代表的で、酷い場合は構音障害などが生じることもあるようです。

 

特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬の場合は、ふらつきなどの筋弛緩作用一過性の記憶障害なども持ち越し効果として生じることがあります。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問41は、向精神薬「睡眠薬の副作用」に関する問題でした❗️

 

以下のキーワードは押さえておきましょう。

 

キーワード「賦活症候群」:SSRI、SNRI、衝動性の亢進
「奇異反応」:ベンゾジアゼピン系睡眠薬、敵意・攻撃性・興奮
「前向性健忘」:睡眠薬、服薬後よりあとの情報に関する一時的な記憶障害
「反跳性不眠」:ベンゾジアゼピン系睡眠薬、中断・減薬後の不眠症状
「持ち越し効果」:睡眠薬、日中の眠気や頭痛、倦怠感など