公認心理師資格試験 過去問解説 問42 福祉分野に関する法律・制度「高齢者虐待防止法」

公認心理師資格試験 過去問解説 問42 福祉分野に関する法律・制度「高齢者虐待防止法」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 



 

【問42】福祉分野に関する法律・制度「高齢者虐待防止法」

問42 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律〈高齢者虐待防止法〉について、誤っているものを1つ選べ。

① 市町村は、高齢者を虐待した養護者に対する相談、指導及び助言を行う。

② 養護者又は親族が高齢者の財産を不当に処分することは虐待に該当する。

③ 国民には、高齢者虐待の防止や養護者に対する支援のための施策に協力する責務がある。

④ 警察署長は、高齢者の身体の安全の確保に万全を期するために、市町村に援助を求めなければならない。

⑤ 身体に重大な危険が生じている高齢者虐待を発見した者は、速やかに、そのことを市町村に通報しなければならない。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ 警察署長は、高齢者の身体の安全の確保に万全を期するために、市町村に援助を求めなければならない。

となります。

 

高齢者虐待防止法

 

高齢者虐待防止法とは何か❓

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律。通称、高齢者虐待防止法は、平成18年4月1日より施行された65歳以上の高齢者に対する虐待を防止するための法律です。

 

同法で定義される虐待は、養護者による高齢者虐待養介護施設従事者等による高齢者虐待にわけられます。

 

養護者に関しては以下のように定義されています。

「高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等以外のもの」とされており、高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等が該当すると考えられます。

出典:高齢者虐待防止の基本|厚生労働省

 

養護介護施設従事者とは、「老人福祉法」や「介護保険法」で規定されている「養介護施設」「養介護事業」に従事する人をさしています。

 

高齢者虐待には以下のものが含まれます。

  • 身体的虐待
  • 介護・世話の放棄・放任
  • 心理的虐待
  • 性的虐待
  • 経済的虐待

 

高齢者虐待防止法では、市町村の役割が重要になってきます。

地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の一つとして、市町村に対し「被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため 必要な援助を行う事業」[介護保険法第115条の45第2項第2号]の実施が義務づけられています。

出典:高齢者虐待防止の基本|厚生労働省

 

最後に、高齢者虐待防止の基本のなかに対応の範囲として混在しやすい対象についての記載があったので、押さえておきましょう❗️

  • 65歳以上の障害者への虐待「高齢者虐待防止法」と「障害者虐待防止法」のどちらも対象となる。
  • 養護・被養護関係にない65歳以上の高齢者への虐待高齢者虐待防止法の対象外となり、たとえば「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV法)」や刑法の対象となる。
  • 医療機関での高齢者虐待高齢者虐待防止法の対象外で、医療法の規定にのっとり都道府県が管理・指導を行う。
  • セルフ・ネグレクト介護・医療サービスなど支援の拒否を行う場合をさす。高齢者虐待防止法の対象外であるため、高齢者虐待に準じた対応を行うことができるように関係部署などが連携する。
  • 65歳未満の者への虐待高齢者虐待防止法の対象外だが、介護保険法115条の45第2項第2号「市町村には被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業」には含まれている。

 



 

選択肢の解説

高齢者虐待防止法での市町村の役割

① 市町村は、高齢者を虐待した養護者に対する相談、指導及び助言を行う。

こちらの選択肢の項目は、高齢者虐待防止法の第6条に規定されています。

 

養護者による高齢者虐待については以下の内容が求められているため、押さえておきましょう❗️

■養護者による高齢者虐待について

高齢者・養護者に対する相談、指導、助言(第6条)

通報を受けた場合、速やかな高齢者の安全確認、通報等に係る事実確認、高齢者虐待対応協力者と対応について協議(第9条第1項)

老人福祉法に規定する措置及びそのための居室の確保、成年後見制度利用開始に関する審判の請求(第9条第2項、第10条)

立入調査の実施(第11条)

立入調査の際の警察署長に対する援助要請(第12条)

老人福祉法に規定する措置が採られた高齢者に対する養護者の面会の制限(第13条)

養護者に対する負担軽減のための相談、指導及び助言その他必要な措置(第14条)

専門的に従事する職員の確保(第15条)

関係機関、民間団体等との連携協力体制の整備(第16条)

対応窓口、高齢者虐待対応協力者の名称の周知(第18条)

出典:高齢者虐待防止の基本|厚生労働省

 

経済的虐待

② 養護者又は親族が高齢者の財産を不当に処分することは虐待に該当する。

 

養護者による経済的虐待は以下のように定義されます。

養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

出典:高齢者虐待防止の基本|厚生労働省

 

具体的には、金銭や財産を着服したり、養護者という立場を利用して必要以上の金銭面での制限をかけたりすることをさしています。

国民の責務

③ 国民には、高齢者虐待の防止や養護者に対する支援のための施策に協力する責務がある。

 

高齢者虐待防止法における国民の責務(第4条)について見ていきましょう❗️

国民は、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければなりません(第4条)

 

このように国や地方公共団体が行っている施策に協力する必要があると法律上で明文化されています。

 

警察の役割

④ 警察署長は、高齢者の身体の安全の確保に万全を期するために、市町村に援助を求めなければならない。

 

高齢者虐待防止法において、警察が関連してくるのは以下のような内容です。

  • 警察が認知した高齢者虐待に関して、生活安全課から市町村に通報する
  • 立ち入り調査の際、市町村長から警察署長への援助依頼

 

高齢者虐待防止法第12条により、市町村長は立ち入り調査の際、必要に応じて警察署長に援助を依頼することができると規定されています。

 

援助依頼を受けた警察署長は、生命又は身体に重大な危険が生じていると判断した場合、この援助依頼を受けて、警察として必要な措置を講じることになります。

 

そのため、選択肢④「警察署長は、高齢者の身体の安全の確保に万全を期するために、市町村に援助を求めなければならない。」の記載は不適切といえ、問題の回答としては正答となりますね。

通報義務

⑤ 身体に重大な危険が生じている高齢者虐待を発見した者は、速やかに、そのことを市町村に通報しなければならない。

 

高齢者虐待防止法の第7条を見ていきましょう❗️

(養護者による高齢者虐待に係る通報等)
第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
2 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、
速やかに、これを市町村に通報するように努めなければならない。
3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定
は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。

出典:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律

 

条文を見ると、生命又は身体に重大な危険が生じている時は、市町村に通報する義務が生じます。

 

一方で、「養護者による高齢者虐待の疑いがある」時は、市町村への通報に努める必要があり(努力義務)、いずれの場合にも守秘義務の例外として理解されます。

 

第7条では養護者に関する規定ですが、第21条において養護介護施設従事者に関しても概ね同様の記載がありますので、この通報義務は高齢者虐待全般に適用されるといえます。

 

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問42は、福祉分野に関する法律・制度「高齢者虐待防止法」に関する問題でした❗️

 

 

全体像を把握しておくためにも、問題の解説だけでなく、以下の資料には目を通しておくべきでしょう。