公式問題
睡眠薬として用いられるオレキシン受容体拮抗薬の副作用として、頻度が高いものを1つ選べ。
- 依存
- 傾眠
- 呼吸抑制
- 前向性健忘
- 反跳性不眠
正答:②
この問題のポイント
この問題は、睡眠薬をすべて同じ副作用プロファイルとして覚えるのではなく、薬の作用機序と代表的な副作用を対応させることがポイントです。
オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒維持に関わるオレキシン系の働きを抑えることで睡眠を促す薬です。そのため、薬理作用からも理解しやすい代表的な有害事象として、翌日に眠気が残る傾眠〈somnolence〉があります。
dual orexin receptor antagonist〈DORA〉を対象としたランダム化比較試験のネットワークメタ解析でも、傾眠は鼻咽頭炎、頭痛などとともに頻度の高い有害事象として報告されています。
したがって、本問の正答は②「傾眠」です。
オレキシンとは
オレキシン〈orexin/hypocretin〉は、主に視床下部の神経系から産生され、覚醒の維持に重要な役割をもつ神経ペプチドです。
私たちが起きて活動している時間帯には、脳内の複数の覚醒系が連携して覚醒状態を支えています。オレキシン系はそのネットワークを安定して働かせる方向に作用します。
オレキシン受容体拮抗薬は、この「覚醒を維持する働き」を弱めることで睡眠を促します。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬などのGABA作動性睡眠薬が中枢神経の抑制系を強めるのに対し、オレキシン受容体拮抗薬は覚醒ドライブを弱めるという点で作用の考え方が異なります。
日本で用いられる代表的なオレキシン受容体拮抗薬
公認心理師試験では商品名まで細かく暗記する必要はありませんが、薬効群を具体的な薬剤と結びつけておくと理解しやすくなります。
代表例として、
- スボレキサント
- レンボレキサント
があります。
PMDA〈医薬品医療機器総合機構〉では、スボレキサントとレンボレキサントについて、最新の添付文書や患者向医薬品ガイドなどの医薬品情報を公開しています。
薬剤情報は改訂される可能性があるため、実際の医療場面での用量・併用・中止などの判断は、最新の添付文書を確認した医師・薬剤師などの医療専門職が行う必要があります。
なぜ「傾眠」が正答なのか
オレキシン受容体拮抗薬は覚醒維持を弱めることで睡眠を促します。その作用が就床中だけでなく翌日に持ち越されると、日中の眠気や傾眠として現れることがあります。
DORAを対象としたネットワークメタ解析では、10件のランダム化比較試験、計7,806人を対象とした解析で、somnolence〈傾眠〉が最も頻度の高い有害事象群の一つとして報告されています。
つまり、試験では、
オレキシン=覚醒維持 → 受容体を遮断 → 眠気・傾眠
という流れで覚えておくと判断しやすくなります。
睡眠薬は作用機序によって整理する
日本睡眠学会は、睡眠薬を大きく、
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬〈Z-drugs〉
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
などに整理しています。
試験では「睡眠薬だから全部同じ副作用」と考えず、薬効群ごとの特徴を区別することが大切です。
とくにベンゾジアゼピン系睡眠薬では、健忘、ふらつき、転倒、依存・離脱などが試験で問われやすい一方、オレキシン受容体拮抗薬では傾眠や翌日の眠気が重要なポイントになります。
睡眠薬にみられる前向性健忘や反跳性不眠などを整理したい場合は、第3回 問41「睡眠薬の副作用」もあわせて確認してください。
傾眠と「持ち越し」をどう理解するか
「傾眠」は、単に夜に眠れるという治療効果そのものではなく、覚醒しているべき時間帯にも眠気が強く残る状態として捉える必要があります。
睡眠薬では、就床中に睡眠を促す作用と、翌日の覚醒度に影響する作用を区別して考えることが重要です。服薬後の眠気が翌日に残れば、注意力や反応速度、日中活動に影響する可能性があります。
公認心理師試験では、薬剤ごとの細かな発現率を暗記するよりも、
- どの神経系に作用する薬か
- その作用が強く出ると何が起こり得るか
- 他の睡眠薬と比べてどの副作用が典型的に問われるか
という3段階で整理すると応用しやすくなります。
オレキシン受容体拮抗薬の場合は、覚醒維持を弱める作用と傾眠を結びつけることが重要です。
ベンゾジアゼピン系との比較は「優劣」ではなく特徴の違いで覚える
睡眠薬の過去問では、ベンゾジアゼピン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬を比較させる出題がみられます。
このとき、「新しい薬だから安全」「古い薬だから危険」と単純化するのは適切ではありません。実際の薬物療法では、年齢、身体疾患、併用薬、不眠のタイプ、転倒リスクなどを含めて個別に判断されます。
試験対策としては、代表的な特徴を次のように整理します。
| 薬効群 | 作用の考え方 | 試験で押さえたい副作用・注意点 |
|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン受容体作動薬 | GABA作動性の抑制を強める | 健忘、ふらつき、転倒、依存、離脱、反跳性不眠など |
| オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒維持を担うオレキシン系を遮断する | 傾眠、翌日の眠気など |
| メラトニン受容体作動薬 | 睡眠・覚醒リズムに関わる受容体へ作用する | 機序をオレキシン系やGABA系と区別する |
この比較は「ある副作用が一方では絶対に起こり、他方では絶対に起こらない」という意味ではありません。代表的な薬理作用と、試験で問われやすい副作用を対応づけるための整理です。
各選択肢を詳しくみる
① 依存
本問の正答ではありません。
「オレキシン受容体拮抗薬では依存が絶対に起こらない」という意味ではありません。
ただし、本問は「頻度が高い副作用」を問う問題です。DORAの臨床試験・メタ解析で代表的な有害事象として挙げられるのは傾眠であり、依存は本問で最も適切な選択肢ではありません。
一方、ベンゾジアゼピン系睡眠薬では、長期使用や中止に伴う依存・離脱がより典型的な試験ポイントになります。
② 傾眠
正しいです。
覚醒維持に関わるオレキシン系を遮断する薬理作用からも理解しやすく、臨床試験の統合解析でも傾眠は頻度の高い有害事象の一つです。
したがって②が正答です。
③ 呼吸抑制
本問の正答ではありません。
呼吸への影響については、薬剤、用量、併存疾患、併用薬などを含めて個別に評価する必要があります。「オレキシン受容体拮抗薬なら呼吸抑制が絶対に起こらない」と覚えるのは適切ではありません。
しかし、試験問題が問う「頻度が高い副作用」としては傾眠がより代表的です。
④ 前向性健忘
本問の正答ではありません。
前向性健忘は、服薬後に起きた出来事を記憶できないなどの形で問題となる副作用で、特にベンゾジアゼピン受容体作動薬などGABA作動性睡眠薬で試験上重要です。
オレキシン受容体拮抗薬で最も代表的かつ頻度の高い副作用を選ぶ本問では、②傾眠を選びます。
⑤ 反跳性不眠
本問の正答ではありません。
反跳性不眠は、睡眠薬を中止した後に、服用前より一時的に不眠が強くなる現象です。ベンゾジアゼピン系などの中止・離脱と関連して試験で整理されることがあります。
オレキシン受容体拮抗薬の代表的な頻度の高い副作用として問われた場合には、傾眠の方が適切です。
「副作用が少ない」と「副作用がない」は違う
過去問では、オレキシン受容体拮抗薬がベンゾジアゼピン受容体作動薬などと比較して、副作用リスクの観点から選択肢になる問題も出題されています。
第3回 問133「高齢者に用いる睡眠薬」では、オレキシン受容体拮抗薬とメラトニン受容体作動薬が正答となっています。
ただし、これはオレキシン受容体拮抗薬に副作用がないという意味ではありません。
本問のように傾眠が問われることもあるため、
- ベンゾジアゼピン系より副作用プロファイルが異なる
- だからといって「副作用ゼロ」ではない
- DORAでは傾眠・翌日の眠気を押さえる
という整理が重要です。
試験での見分け方
次の対応を覚えておくと解きやすくなります。
- オレキシン受容体拮抗薬 → 覚醒系を抑える → 傾眠
- ベンゾジアゼピン系 → 健忘・ふらつき・依存・反跳性不眠などに注意
- メラトニン受容体作動薬 → 睡眠・覚醒リズムとの関連
選択肢に「傾眠」があり、オレキシン受容体拮抗薬の代表的な副作用を問われているなら、有力な正答候補になります。
まとめ
- 正答は② 傾眠
- オレキシンは覚醒維持に関わる
- オレキシン受容体拮抗薬は覚醒ドライブを弱めて睡眠を促す
- DORAのメタ解析でも傾眠は頻度の高い有害事象の一つ
- 依存、呼吸抑制、前向性健忘、反跳性不眠を「絶対に起こらない」と理解してはいけない
- 睡眠薬は薬効群ごとの作用機序と副作用プロファイルで整理する
参考資料
- 第5回公認心理師試験 午前問題|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/127/File/04_gokaku_happyo_05.pdf
- 第5回公認心理師試験 正答|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/127/File/03_gokaku_happyo_06.pdf
- PMDA 医療用医薬品情報|スボレキサント
- PMDA 医療用医薬品情報|レンボレキサント
- 日本睡眠学会|睡眠薬の安全で安心な使用法について
- Dual orexin receptor antagonists for insomnia: systematic review and network meta-analysis



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