公式問題
ストレンジ・シチュエーション法におけるアタッチメントの類型の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
- 回避型は、養育者との分離場面で激しく泣きやすい。
- 安定型は、養育者との分離場面で泣きの表出が少ない。
- 無秩序・無方向型は、養育者との再会場面で激しく泣きやすい。
- アンビバレント型は、養育者との再会場面でしばしば激しい怒りを表出することがある。
正答:④
この問題のポイント
この問題では、ストレンジ・シチュエーション法〈Strange Situation Procedure:SSP〉でみられるアタッチメント行動を、単に「分離されたときに泣いたかどうか」で判断しないことが重要です。
ストレンジ・シチュエーション法では、乳幼児が養育者から分離され、再び養育者と再会する一連の場面を観察します。分類の中心になるのは、養育者をどのように安全基地として利用するか、分離後の再会時にどのように接近・接触を求めるか、接触を維持できるか、回避や抵抗がみられるか、そして慰められた後に探索へ戻れるかといった行動のまとまりです。
近年のStrange Situation研究でも、分類には proximity seeking〈接近行動〉、contact maintenance〈接触維持〉、contact resistance〈接触への抵抗〉、avoidance〈回避〉、disorganization/disorientation〈無秩序・無方向性〉などの観察指標が用いられています。
したがって、本問では「泣きが強い/弱い」という一つの行動だけで類型を決めるのではなく、再会時に養育者へどのようなアタッチメント行動を組織化するかを見ることが決め手になります。
ストレンジ・シチュエーション法とは
ストレンジ・シチュエーション法は、M. Ainsworthらによって発展した乳幼児のアタッチメントを観察する代表的な方法です。
乳幼児にとって、養育者は単に近くにいる大人というだけではありません。不安や苦痛が高まったときには安心を得るための対象となり、落ち着いているときには周囲を探索するための「安全基地〈secure base〉」として機能します。
ストレンジ・シチュエーション法では、こうしたアタッチメントと探索のバランスが、分離と再会という軽度のストレス状況でどのように現れるかを観察します。
重要なのは、分離場面だけでなく再会場面を見ることです。分離時に強く泣く乳幼児でも、再会後に養育者へ接近し、慰められて落ち着き、再び探索へ戻れるのであれば安定型の行動パターンを示すことがあります。逆に、分離時にあまり泣かなかったからといって、それだけで安定型とは判断できません。
4つのアタッチメント類型を整理する
| 類型 | 再会時を中心とした特徴 | 試験での見分け方 |
|---|---|---|
| 安定型〈secure〉 | 養育者へ接近し、慰めを受け入れ、落ち着くと探索へ戻りやすい | 安全基地・慰撫・探索再開 |
| 回避型〈avoidant〉 | 再会時に養育者を避けたり、接触をあまり求めなかったりする | 「再会時の回避」に注目 |
| アンビバレント/抵抗型〈resistant/ambivalent〉 | 接近や接触を強く求める一方、抵抗・怒りを示し、慰められにくい | 「求める+抵抗する」の両方 |
| 無秩序・無方向型〈disorganized/disoriented〉 | 接近と回避の矛盾、硬直、方向性の乏しい行動など、組織化された方略が崩れる | 単なる泣きではなく矛盾・混乱 |
安定型
安定型では、分離によって苦痛を示すことはあり得ます。大切なのは、養育者との再会時に接近や接触を求め、養育者から慰めを得ることで情動が落ち着き、その後に探索へ戻りやすいことです。
つまり、「分離時に泣かなかった乳幼児=安定型」ではありません。泣きの有無だけではなく、養育者を利用して情動調整し、その後に探索を再開できるかを見る必要があります。
回避型
回避型では、分離時の外から見える苦痛が比較的目立たないことがありますが、類型を決める重要な特徴は再会時です。再会した養育者への接近や接触を避けたり、無視するような行動を示したりします。
したがって、回避型を「分離時に激しく泣くタイプ」と覚えるのは逆方向です。
アンビバレント型/抵抗型
アンビバレント型では、養育者との分離で強い苦痛を示しやすく、再会すると養育者へ強く接近・接触を求めます。
しかし、接触を求めながら同時に抵抗したり、怒りを示したりすることがあります。また、養育者が戻ってきても容易には落ち着かず、探索へ戻りにくいことがあります。
この「近づきたいが、同時に抵抗や怒りも示す」という両価的なパターンが、本問④を選ぶ決め手です。
無秩序・無方向型
無秩序・無方向型では、安定型・回避型・抵抗型のような一貫した方略として整理しにくい行動がみられます。
たとえば、養育者へ近づこうとしながら突然止まる、接近と回避が矛盾する、硬直する、方向性の乏しい行動を示すなどです。
研究上の「disorganized attachment」はStrange Situationにおける乳幼児―養育者関係の分類であり、それ自体が精神疾患の診断名ではない点も重要です。
各選択肢を詳しくみる
① 回避型は、養育者との分離場面で激しく泣きやすい
誤りです。
回避型のポイントは、分離時の激しい泣きではなく、再会時に養育者への接近・接触を避ける行動です。
ストレンジ・シチュエーション法では分離場面だけで類型を決めないため、「回避型=分離時に激しく泣く」という対応づけは適切ではありません。
② 安定型は、養育者との分離場面で泣きの表出が少ない
誤りです。
安定型でも分離によって泣いたり苦痛を示したりすることがあります。
安定型を特徴づけるのは、再会時に養育者を求め、慰めを受け入れ、落ち着いた後に探索へ戻りやすいことです。「泣きが少ない」という一つの行動だけでは判断できません。
③ 無秩序・無方向型は、養育者との再会場面で激しく泣きやすい
誤りです。
無秩序・無方向型は、泣きの強さで定義される類型ではありません。
接近と回避が同時に現れる、行動が突然中断する、硬直するなど、アタッチメント方略の組織化がうまくいかないような矛盾・混乱した行動がポイントです。
④ アンビバレント型は、養育者との再会場面でしばしば激しい怒りを表出することがある
正しいです。
アンビバレント型では養育者への接近・接触を強く求めながら、同時に抵抗や怒りを示すことがあります。再会しても慰められにくいことも特徴です。
したがって④が正答です。
「アタッチメント類型」と「アタッチメント関連の精神疾患」は別
試験では、Strange Situationのアタッチメント類型と、DSMにおけるアタッチメント関連の精神疾患を混同しないことも重要です。
Strange Situationの安定型・回避型・アンビバレント型・無秩序型は、乳幼児と特定の養育者との関係において観察される行動パターンの分類です。
一方、反応性アタッチメント障害〈RAD〉や脱抑制型対人交流障害〈DSED〉は、著しく不十分な養育などとの関連を含めて評価される診断カテゴリーです。
反応性アタッチメント障害が選択肢として登場する過去問は、第3回 問64の解説で確認できます。
また、脱抑制型対人交流障害がDSM-5の「心的外傷およびストレス因関連障害群」に含まれることは、第4回 問13の解説でも整理しています。
「不安定型アタッチメントがある=アタッチメント障害である」ではありません。 類型と診断を別のレベルの概念として押さえておきましょう。
試験での見分け方
この問題は、次の3点で整理すると解きやすくなります。
- 分離時の泣きだけで決めない
- 再会時の接近・回避・抵抗・慰撫をみる
- アンビバレント型は「接近を求める+抵抗・怒り」
特に「泣いた/泣かなかった」という表面的な一行動だけで類型を説明する選択肢は慎重に検討してください。
まとめ
- 正答は④ アンビバレント型
- Strange Situationでは分離と再会における行動のまとまりを評価する
- 安定型は再会時に慰めを得て探索へ戻りやすい
- 回避型は再会時の回避がポイント
- アンビバレント型は接近・接触を求めながら抵抗や怒りも示す
- 無秩序・無方向型は矛盾・硬直など組織化された方略の崩れがポイント
- アタッチメント類型とRAD・DSEDなどの精神疾患の診断は同一ではない
参考資料
- 第4回公認心理師試験 午前問題|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/126/File/04_gokaku_happyo_05.pdf
- 第4回公認心理師試験 正答|公認心理師試験研修センター
https://www.jccpp.or.jp/files/items/126/File/03_gokaku_happyo_05.pdf
- The Predictive Validity of the Strange Situation Procedure
- The infant disorganised attachment classification: “Patterning within the disturbance of coherence”



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