公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午前 問55|子どもの貧困問題

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第4回公認心理師試験・午前問55は、我が国における子どもの貧困問題について、教育、児童虐待、生活保護、貧困の世代間連鎖を横断して理解できているかを問う問題です。

正答は②・⑤です。

この問題で重要なのは、子どもの貧困を「家計所得が低い」という一点だけで捉えないことです。経済的困窮は、学習環境、進学機会、住居、食事、親子関係、社会的孤立、虐待やDV、支援へのアクセスなど複数の条件と重なり、子どもの生活や発達に影響します。一方で、貧困だから必ず虐待が起こる、貧困家庭の子どもは必ず生活保護を受けるという決定論的な理解も誤りです。

問題

我が国における子どもの貧困問題について、適切なものを2つ選べ。

  1. 学力達成や教育機会に対する影響は小さい。
  2. 貧困と児童虐待の発生には、関連がみられる。
  3. 子どもの貧困と関連する問題は、顕在化しやすい。
  4. 貧困状態にある母子世帯の8割以上が、生活保護を受給している。
  5. 生活保護を受給する家庭で育った子どもは、出身世帯から独立した後も生活保護を受給する割合が高い。

正答:②・⑤

この問題のポイント:子どもの貧困は「所得だけの問題」ではない

子どもの貧困では、所得の低さそのものだけでなく、そこから生じたり、もともとの生活上の困難と相互に影響したりする複合的な不利を見る必要があります。

厚生労働省の子ども・若者の貧困に関する資料でも、経済的困窮に加えて、相談相手の不足、社会的孤立、虐待・DV、生活習慣の問題、学習のつまずきや学ぶ機会の不足などが複雑に絡み合うことが紹介されています。

したがって試験では、「貧困=お金がない状態」とだけ覚えるよりも、教育・福祉・保健・家族支援をまたぐ問題として理解する方が選択肢を判断しやすくなります。

相対的貧困とは

子どもの貧困を学ぶときは、絶対的貧困相対的貧困を区別しておくと整理しやすくなります。

  • 絶対的貧困:食料、住居、衣服など、生存や基本的生活に必要な資源そのものが著しく不足している状態。
  • 相対的貧困:その社会の一般的な生活水準と比べて利用できる経済的資源が大きく少なく、通常期待される生活・教育・社会参加の機会を得にくい状態。

先進国の子どもの貧困を考える際には、相対的貧困の視点が重要です。最低限の食事が確保されているから問題がないとは限らず、学習環境、進学、友人関係、部活動や文化活動、医療や相談へのアクセスなどの機会格差として表れることがあります。

① 学力達成や教育機会に対する影響は小さい

これは誤りです。

経済的困窮は、学習に使える教材や場所、塾や補習へのアクセスだけでなく、家庭内の負担、保護者の就労状況、住環境、食生活、心理的ストレスなどを介して教育機会と関連します。

また、生活保護世帯の子どもについては、一般世帯と比べて高等学校等への進学率が低く、中退率が高いことが厚生労働省の資料でも示されています。したがって、「教育への影響は小さい」とは言えません。

ここでのポイントは、貧困が一つの経路だけで学力を低下させると単純化しないことです。家庭の社会的支援、学校とのつながり、本人の強み、地域資源などによって影響の現れ方は異なります。

② 貧困と児童虐待の発生には、関連がみられる

適切であり、本問の正答です。

経済的困窮、失業、孤立、養育負担、DV、保護者の健康問題などは、児童虐待が生じる家庭で重なっていることがあります。厚生労働省の資料でも、子どもの貧困と虐待・DVなどの困難が重なりうることが示されています。

ただし、ここは試験だけでなく実務上も表現に注意が必要です。

「貧困と虐待に関連がある」ことと、「貧困だから虐待する」ことは全く同じではありません。

貧困は虐待の必要条件でも十分条件でもなく、家族の置かれた複数のリスクや支援資源を評価することが必要です。生活困窮家庭を一律に「虐待リスクの高い家庭」とラベリングすることは適切ではありません。

児童虐待そのものの通告義務や公認心理師の守秘義務との関係は、第6回午前問1「秘密保持義務の例外」で詳しく整理しています。児童虐待は「確定してから対応する」のではなく、法令上は「虐待を受けたと思われる」段階で通告の対象となる点も合わせて押さえておきましょう。

③ 子どもの貧困と関連する問題は、顕在化しやすい

これは誤りです。

子どもの貧困に伴う困難は、必ずしも外から分かりやすく見えるとは限りません。衣服や持ち物だけを見て判断できないことも多く、本人や家族が困難を言語化しなかったり、支援を求めることにためらいがあったりする場合もあります。

さらに、困りごとが「学習不振」「不登校」「遅刻」「友人関係」「親子葛藤」「行動上の問題」など別の形で表れることもあります。そのため、表面に現れた行動だけで本人や家庭を評価せず、生活背景を含めてアセスメントすることが重要です。

試験では「貧困は見れば分かる」「困っていれば自分から支援を求める」という前提を置かないようにしましょう。

④ 貧困状態にある母子世帯の8割以上が、生活保護を受給している

これは誤りです。

「8割以上」という数字が明らかに大きすぎることが判断ポイントです。厚生労働省の資料では、母子世帯の生活保護受給割合について1割台の数値が示されており、「8割以上」とは大きく異なります。

ここでは、ひとり親世帯に貧困リスクが高いことと、ひとり親世帯の大多数が生活保護受給世帯であることを混同しないようにします。

また、「生活保護受給世帯の中で母子世帯がどの程度を占めるか」と、「母子世帯のうち何割が生活保護を受給しているか」では分母が違います。統計問題では、この分母の入れ替えも典型的なひっかけです。

⑤ 生活保護を受給する家庭で育った子どもは、独立後も生活保護を受給する割合が高い

適切であり、本問の正答です。

これは貧困の世代間連鎖に関する知見です。厚生労働科学研究費による研究成果として、被保護母子世帯を対象に、母親の成育期の生活保護経験、低学歴、10代出産、DV、児童虐待、健康問題などの不利が重なっていることが報告されています。

被保護世帯を対象とした研究・審議資料では、本人が成育した家庭にも生活保護受給歴がある割合が一定程度みられ、とくに母子世帯で高いことが指摘されています。

ただし、ここでも「生活保護世帯に育ったら、将来も必ず生活保護になる」という理解は誤りです。世代間連鎖とは、教育機会、健康、就労、家族関係、住居、地域資源など複数の構造的条件が次世代の生活機会にも影響しうることを示す概念です。

本人や家族の責任に還元するのではなく、連鎖を弱めるための教育支援、生活支援、就労支援、家族支援、社会保障へのアクセスが重要になります。

関連知識:子どもの権利から考える

子どもの貧困は「家計の問題」にとどまりません。教育を受ける機会、意見を表明する機会、安全に養育される環境など、子どもの権利とも深く関わります。

第4回午前問40「児童の権利に関する条約」と合わせると、子どもの最善の利益、意見表明、養育などの観点から福祉問題を整理できます。

5つの選択肢を整理する

選択肢判断ポイント
① 教育への影響は小さい誤り学習環境・進学機会・中退等と関連する
② 貧困と児童虐待には関連がある正しい関連はあるが決定論ではない
③ 関連問題は顕在化しやすい誤り困難は見えにくく、別の問題として表れることもある
④ 母子世帯の8割以上が生活保護誤り公的統計と大きく乖離。分母の取り違えにも注意
⑤ 独立後も生活保護受給割合が高い正しい貧困の世代間連鎖に関する知見

試験での見分け方

  1. 「影響は小さい」のような過小評価表現は、教育・福祉領域では根拠を確認する。
  2. 「関連がある」「原因である」を区別する。
  3. 「顕在化しやすい」という表現に注意し、見えにくい困難を想定する。
  4. 統計では、割合の分母を必ず確認する。
  5. 世代間連鎖は「本人の責任」ではなく、構造的・複合的条件の継続として理解する。

まとめ

第4回午前問55の正答は②・⑤です。

子どもの貧困は、経済的困窮だけでなく、教育機会、虐待・DV、孤立、健康、家族機能、支援へのアクセスなどが重なる問題です。試験では、貧困と虐待の関連、困難の見えにくさ、母子世帯と生活保護の統計、貧困の世代間連鎖を区別して理解しておきましょう。

参考資料

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