公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問61|登校しぶりとWISC-IV

公認心理師過去問第5回61 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問61は、登校しぶりや教室での困りごとがみられる7歳児に対し、情報収集と行動観察に加えて、どの心理検査をテストバッテリーへ組み込むかを問う問題です。正答は⑤ WISC-IVです。

本問では、子どもの発言から自閉スペクトラム症などを即断するのではなく、授業で「何をやったらよいか分からない」という困りごとも含めて、認知的な得意・不得意を直接評価できる検査を選ぶことがポイントです。

問題

7歳の小学1年生に登校しぶりがあり、本人は「クラスの子が話を聞いてくれない」「授業で何をしたらよいか分からない」と話しています。相談員との面接では、好きなアニメについて一方的に解説する様子もあります。適応状況の情報収集と行動観察に加えて、本人に実施するテストバッテリーとして最も適切な心理検査を選びます。

選択肢の要点

  1. AQ-J
  2. CAARS
  3. CAT
  4. NEO-PI-R
  5. WISC-IV

正答

⑤ WISC-IV

なぜWISC-IVが最も適切なのか

この事例では、対人関係だけでなく、授業場面で「何をすればよいか分からない」という学習・認知面の困りごとが示されています。WISC-IVは児童の知的・認知的機能を直接評価し、全体的な水準だけでなく、複数の指標から認知特性を整理する材料を得られます。

学校適応の問題を理解するには、本人の認知特性、授業理解、行動観察、家庭や学校からの情報を組み合わせる必要があります。そのため、直接本人を対象とする検査としてWISC-IVを加えることに意味があります。

WISC-IVで何が分かるのか

WISC-IVでは、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度などの指標を通じて、子どもの認知機能を多面的に把握します。たとえば、口頭での説明理解、視覚情報の扱い、短時間情報を保持して操作する力、単純作業を速く正確に進める力などを検討する手掛かりになります。

ただし、指標得点だけで学校での困難が自動的に説明できるわけではありません。結果は行動観察や発達歴、学習状況と統合して解釈します。

選択肢① AQ-Jを第一選択にしない理由

AQ-Jは自閉スペクトラム特性に関連する質問紙です。本事例には、一方的に好きな話題を話すという特徴があり、自閉スペクトラム症を連想しやすい場面です。しかし、事例の一部の特徴だけで特定の診断仮説に寄せるのは早計です。

本問で求められているのは、適応状況や行動観察に加えて本人へ実施するテストバッテリーです。授業理解や認知面の困りごともあるため、まず広く認知機能を捉えるWISC-IVの方が適切です。

選択肢② CAARSが不適切な理由

CAARSは成人のADHD症状を評価するための尺度であり、7歳児に直接実施する検査として適切ではありません。年齢適用が合わない検査を、症状が似ているという理由だけで選んではいけません。

心理検査問題では、測定対象だけでなく対象年齢も重要な判断材料です。

選択肢③ CATが最適ではない理由

CATは児童を対象とした投映法で、絵に対して物語を作ってもらうことで、心理的テーマや対人関係などを探索的に理解するために用いられます。しかし、本事例で中心となる「授業で何をしたらよいか分からない」という認知・学習面の理解に直接答える検査ではありません。

情緒面の理解が必要な場合に補助的に用いる可能性はありますが、選択肢の中で優先度が高いのはWISC-IVです。

選択肢④ NEO-PI-Rが不適切な理由

NEO-PI-Rは成人を中心とした人格検査で、Big Fiveの枠組みに基づいてパーソナリティ特性を評価します。7歳の小学1年生に実施する心理検査としては対象年齢が合いません。

ここでも「何を測る検査か」と「誰に使う検査か」をセットで確認することが大切です。

選択肢⑤ WISC-IVが適切な理由

WISC-IVは児童を対象としたウェクスラー式知能検査で、本人に直接実施できます。本事例では、教室適応、授業理解、対人コミュニケーションが複合して困難になっている可能性があります。その中で、WISC-IVは認知的な情報処理の特徴を整理する重要な材料になります。

正答の理由は「WISC-IVなら診断できるから」ではなく、「多面的なアセスメントの中で、本人の認知機能を把握するのに適しているから」です。

WISC-IVだけで診断はできない

WISC-IVの結果だけで、自閉スペクトラム症、ADHD、限局性学習症、不登校などを診断することはできません。特定の指標の高低や指標間の差を見て、直ちに障害名へ結びつけるのも適切ではありません。

検査結果は、発達歴、家庭での様子、教室での行動、学習到達度、友人関係、本人の主観などと合わせて解釈します。

「テストバッテリー」の考え方

テストバッテリーとは、一つの検査だけで結論を出さず、目的に応じて複数の検査や情報源を組み合わせる考え方です。今回の問題文でも、すでに適応状況の情報収集と行動観察を行うことが前提になっています。

そこへWISC-IVを加えることで、「学校で困っている」という現象を、認知機能の側面から補足できます。

行動観察と検査結果をつなげる

例えば検査中に、課題の指示を何度も確認する、複数手順になると混乱する、得意な課題では集中が続くなどの様子がみられた場合、得点だけでなく行動そのものが重要な情報になります。

検査は数字を出すためだけのものではなく、「どのような条件で力を発揮し、どのような条件でつまずくか」を観察する機会でもあります。

学校支援へどうつなげるか

認知的な特徴が分かったら、授業での指示の出し方、課題量、視覚的手掛かり、確認のタイミング、席配置など、具体的な支援に落とし込みます。検査結果を診断名の推測だけで終わらせず、学習環境の調整へつなげる視点が重要です。

「授業で何をすればよいか分からない」をどう読むか

この発言は、理解力の問題だけを意味しません。指示の聞き取り、複数情報の保持、場面の見通し、注意の切り替え、学習内容の難易度、教室での不安など複数の可能性があります。WISC-IVはそのすべてを測る検査ではありませんが、認知機能の側面を切り分ける材料になります。

一方的なアニメの説明だけでASDと決めない

好きな話題を一方的に話す様子は、自閉スペクトラム症を検討するきっかけにはなり得ます。しかし、その1場面だけで診断はできません。社会的コミュニケーションの発達歴、反復的行動やこだわり、複数場面での持続性などを総合的に確認する必要があります。

関連して、第6回午前問17|ASDの診断用評価尺度を確認すると、WISC-IVと発達障害評価尺度の役割の違いが整理できます。

WISC-IVの指標を暗記するだけでは不十分

試験では「言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度」という指標名を覚えるだけでなく、どのような相談場面で知能検査を選ぶのかを理解することが重要です。本問では、学習・理解面の困りごとがあり、本人の認知機能を直接把握したいという目的が明確です。

現在はWISC-Vが用いられている

この問題は第5回試験当時の検査体系に基づいており、選択肢ではWISC-IVが正答です。一方、2026年現在、日本版WISCの現行版はWISC-Vです。過去問を解く際には歴史的な選択肢としてWISC-IVを正答にしつつ、現在の実務では後継版が使用されていることを区別しておきましょう。

WISC-Vへ変わっても基本姿勢は同じ

検査版が更新されても、一つの得点だけで子どもを決めつけず、複数の情報源と統合する基本姿勢は変わりません。検査の目的を明確にし、その結果を支援へつなげることがアセスメントの中心です。

試験での見分け方

心理検査の選択問題では、①対象年齢、②何を測る検査か、③この事例で知りたいこと、の3点を照合します。本問では7歳児で、認知・学習面を直接評価したいのでWISC-IVです。成人用のCAARSやNEO-PI-Rは対象年齢で外せます。

関連する過去問

知能検査の基本は、第6回午前問13|知能と知能検査が関連します。また、ウェクスラー式検査の下位検査を整理するには、第5回午前問17|WAIS-IVの下位検査も参考になります。

FSIQだけを見ない

ウェクスラー式知能検査では全検査IQ〈FSIQ〉が注目されやすいですが、支援を考えるときは、各指標や課題中の行動も合わせて見ます。総合得点が平均域でも、特定の情報処理で負荷が高いことがありますし、逆に指標差があるだけで直ちに障害を意味するわけでもありません。

「得点を診断名へ変換する」のではなく、子どもの学習場面で何が起きているかを理解するための仮説形成に使います。

登校しぶりは一つの原因で説明しない

登校しぶりには、学習上のつまずき、対人関係、不安、疲労、発達特性、家庭環境、学校環境など複数の要因が関係し得ます。本事例でも、友人とのやり取りと授業理解の双方が示されています。WISC-IVはそのうち認知面を検討する道具であり、登校しぶり全体の原因を一つで説明する検査ではありません。

結果説明では強みも扱う

心理検査のフィードバックでは、苦手な点だけでなく、どのような課題なら力を発揮しやすいかも伝えます。強みを支援方法へ結びつけることで、本人や保護者が「できないことの一覧」として結果を受け取るのを防ぎやすくなります。

まとめ

第5回午前問61の正答は⑤ WISC-IVです。7歳児の登校しぶり、授業場面の困りごと、対人コミュニケーションの特徴を理解するためには、適応状況の情報収集と行動観察に加え、本人の認知機能を直接評価できるWISC-IVをテストバッテリーに含めるのが適切です。WISC-IVは診断を単独で決める検査ではなく、多面的なアセスメントの一部として用います。

参考資料

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