公認理師資格試験 過去問解説 問92 うつ病の可能性を評価する
- 2021.11.15
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 気分障害, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問92】うつ病の可能性を評価する
問92 うつ病を疑わせる発言として、最も適切なものを1つ選べ。
① 眠る必要はないと思います。
② いつも誰かに見られている気がします。
③ 何をするのもおっくうで面倒くさいです。
④ 人前で何かするときにとても不安になります。
⑤ 鍵がかかっているかを何度も確認したくなります。
③ 何をするのもおっくうで面倒くさいです
となります。
うつ病の評価
今回の問題は、公認心理師が面談しているクライエントさんの発言から、「うつ病」を疑わせる発言を選択する問題となっています。
ぱっと見で解答可能な問題ですが、どういった発言がどのような症状を反映しているかという部分を押さえていけるといいでしょう。
うつ病の症状評価として、以下の記事にあるハミルトンうつ病評価尺度は是非おさえておきましょう💁🏻
選択肢の解説
① 眠る必要はないと思います
こちらの選択肢は、「睡眠欲求の減少」を暗示する発言となります。
睡眠欲求の減少は、躁状態によくみられる症状で、基本的には「うつ病」とは異なりますね。
うつ病の方では、睡眠障害(主に、入眠困難)は出現する頻度の高い症状になりますが、「眠る必要がない」と感じることはほとんどないでしょう。
敢えて疑うのであれば、うつ状態と躁状態を繰り返す双極性障害が妥当と考えられます。
よって、選択肢①「眠る必要はないと思います」は、うつ病ではなく双極性障害の可能性を示唆する発言と考えられるため、今回の問題の正答ではありません。
② いつも誰かに見られている気がします
こちらの選択肢は、「被注察感」という見られている感じという症状を暗示する発言となります。
この被注感は統合失調症を疑わせる発言にはなりますが、実は思春期に一時的に同様の訴えが見られることは少なくありません。
この見られている感じが確信に変わっていくと、注察妄想となっていきます。
よって、選択肢②「いつも誰かに見られている気がします」は、うつ病ではなく統合失調症の可能性を示唆する発言と考えられるため、今回の問題の正答とはいえません。
③ 何をするのもおっくうで面倒くさいです
こちらの選択肢は、「意欲の低下」や「気力の低下」を示唆する発言となります。
DSM-5による診断基準でのうつ病、つまり、大うつ病性障害では以下の2項目のうち少なくとも1つは含まれる必要があります。
- 抑うつ気分
- 興味または喜びの喪失
「何をするのも億劫で面倒くさい」という発言は、興味または喜びの喪失に関連する発言の可能性がありますね。
この発言だけでうつ病の可能性を論じるのはいささか早急な感じがしますが、たとえば、やるべきことのみではなく、以前興味があった活動や趣味など楽しめる活動に関しても同様に面倒くさく感じ、実際に活動ができていないのであれば、興味または喜びの喪失に該当する可能性が高まります。
そのため、選択肢③「何をするのもおっくうで面倒くさい」という発言は、うつ病の症状のひとつである「興味または喜びの喪失」に関連した発言の可能性があり得るため、今回の問題の正答となりますね。
④ 人前で何かするときにとても不安になります
こちらの選択肢は、「社交不安あるいは対人不安」を示唆する発言となります。
社交不安はうつ病の症状ではなく、社交不安障害に代表される症状となっています。
社交不安自体も思春期によくある訴えであり、また、自閉スペクトラム症の当事者の方にもよく見られます。
よって、選択肢④「人前で何かするときにとても不安になります」は、うつ病というよりも社交不安障害を示唆する発言と考えられるため、問題の解答としては不適切といえます。
⑤ 鍵がかかっているかを何度も確認したくなります
こちらの選択肢は、「確認行為」を示唆する発言で、考えられる疾患の可能性は強迫性障害となります。
強迫観念や強迫行為は自閉スペクトラム特性を有する方にも多い訴えとなりますね。
よって、選択肢⑤「鍵がかかっているかを何度も確認したくなります」は、うつ病というよりも強迫性障害を示唆する発言と考えられるため、問題の解答として不適切といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問92は、うつ病の評価に関する問題でした❗️
ぱっと見でわかりやすい問題ですし、発言内容から読み取れる症状が明らかに異なっているので、消去法でも解答できる問題ですね。
それぞれの疾患や代表される症状に加えて、その症状をどのように評価するのかという観点の知識を得ておくことが大切です。
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