第4回公認心理師試験・午後問93は、世界保健機関〈WHO〉によるICF〈International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類〉の基本的な考え方を問う問題です。
正答は ④ 生活上のプラス面を加味して生活機能を分類する です。
ICFを理解するときの最大のポイントは、「障害やできないことだけを分類する枠組み」ではないことです。ICFは、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子などを通して、その人が生活の中でどのように機能しているかを、問題点だけでなく中立的・肯定的側面も含めて捉える枠組みです。

問題
世界保健機関〈WHO〉による国際生活機能分類〈ICF〉の説明として、正しいものを1つ選べ。
- 分類対象から妊娠や加齢は除かれる。
- 医学モデルと心理学モデルに依拠する。
- 社会的不利が能力障害によって生じるとみなす。
- 生活上のプラス面を加味して生活機能を分類する。
- 心身機能・構造と活動が、それぞれ独立しているとみなす。
正答は ④ です。
正答④|ICFは「障害」だけでなく「生活機能」を見る
ICFは、2001年にWHO総会で承認された、健康と障害に関する国際的な分類枠組みです。
ICFでは、人の健康状態を単に診断名だけで表すのではなく、
- 心身機能・身体構造
- 活動
- 参加
- 環境因子
- 個人因子
などを関連づけて理解します。
特に重要なのは、ICFが機能障害、活動制限、参加制約といった問題面だけでなく、問題のない状態や保たれている機能も含めて記述できるという点です。
つまり、「何ができないか」だけではなく、
- 何ができているか
- どの環境ならできるか
- どの支援があれば参加できるか
- どのような社会資源が促進因子になるか
まで含めて考えることができます。
ICFの構成
ICFは大きく、生活機能・障害と背景因子から構成されます。
心身機能・身体構造
身体の生理的機能や解剖学的構造に関する側面です。
たとえば、
- 記憶
- 注意
- 気分
- 関節可動域
- 視覚
- 脳や四肢などの身体構造
が含まれます。
活動
課題や行為を個人が実行することです。
たとえば、
- 歩く
- 読む
- 書く
- 食事をする
- 電話を使う
などです。
参加
生活・社会場面への関与を表します。
たとえば、
- 学校へ通う
- 仕事をする
- 家族の役割を担う
- 地域活動へ参加する
などです。
環境因子
本人を取り巻く物理的・社会的・態度的環境です。
環境因子は、
- 支援者がいる
- バリアフリー環境がある
- 補助具が利用できる
といった促進因子になることもあれば、
- 偏見
- 段差
- 支援制度へのアクセス困難
といった阻害因子になることもあります。
「できる/できない」は本人だけでは決まらない
ICFの大切な考え方は、生活上の困難を「本人の機能低下だけの問題」として扱わないことです。
たとえば、車椅子を利用している人が建物へ入れない場合、
「歩けないから入れない」
とだけ考えるのではなく、
「段差があり、スロープやエレベーターがないため参加が制限されている」
と環境との相互作用として考えることができます。
この視点は、支援を考えるうえで非常に重要です。
本人の機能を変えるだけでなく、環境を変えることで活動や参加が改善する可能性が見えるからです。
ICIDHからICFへ
ICFの前身には、WHOの国際障害分類〈ICIDH〉があります。
ICIDHでは、
機能・形態障害 → 能力障害 → 社会的不利
という比較的直線的な理解が示されていました。
ICFでは、このような一方向の因果関係ではなく、
- 健康状態
- 心身機能・身体構造
- 活動
- 参加
- 環境因子
- 個人因子
が相互に影響し合う枠組みへ整理されています。
この変化を理解すると、③と⑤を見分けやすくなります。
① 妊娠や加齢は分類対象から除外される|誤り
ICFは特定の疾患や障害のある人だけを対象にするものではありません。
WHOはICFを、健康と健康関連領域を記述するための共通言語・枠組みとして位置づけています。
加齢や妊娠なども、人の生活機能や健康関連状態を理解する文脈として扱うことができます。
したがって「妊娠や加齢は除外される」という①は誤りです。
② 医学モデルと心理学モデルに依拠する|誤り
ICFは、医学モデルだけでも、心理学モデルだけでもありません。
ICFは、健康や障害を、
- 生物学的側面
- 心理・行動的側面
- 社会・環境的側面
の相互作用として理解する生物心理社会的な統合的視点と親和性があります。
Ig Knowledgeでは、第3回問130|生物心理社会モデルでもICFを扱っています。
③ 社会的不利が能力障害によって生じるとみなす|誤り
これは、ICFよりも前のICIDHに近い考え方です。
ICFでは、
「能力障害があるから社会的不利が生じる」
という一方向の因果モデルを採りません。
本人の状態と環境の相互作用によって活動・参加が変化すると考えます。
したがって③は誤りです。
⑤ 心身機能・構造と活動が独立している|誤り
ICFの各構成要素は独立して存在するものではありません。
心身機能の変化が活動へ影響することもあれば、環境調整によって活動や参加が改善することもあります。
さらに、社会参加の変化が心理状態へ影響することもあります。
つまりICFは、各要素を相互作用するシステムとして理解します。
DSMとICFの違い
DSMは精神疾患の診断分類を中心とする枠組みです。
一方ICFは、
その人が生活の中でどのように機能しているか
を記述します。
同じ診断名でも、
- 学校へ通える人
- 就労に困難がある人
- 家族支援が十分にある人
- 環境調整で活動が大きく改善する人
など、生活機能は異なります。
診断と生活機能を区別する視点は、第3回問88|DSM-5とICFでも確認できます。
試験での見分け方
ICFの問題では、次のキーワードを押さえます。
ICF=できないことだけではなく、できることも含めて生活機能を見る
そして、
本人の状態 × 活動 × 参加 × 環境
を相互作用として考えます。
選択肢に、
- 一方向の因果関係
- 障害だけを分類
- 各要素が独立
- 医学モデルだけ
といった記述があれば注意してください。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問93の正答は ④ 生活上のプラス面を加味して生活機能を分類する です。
ICFは、
心身機能・身体構造/活動/参加/環境因子などを相互作用として捉え、生活上の問題だけでなく保たれている機能も含めて記述する枠組み
と理解してください。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- World Health Organization|International Classification of Functioning, Disability and Health〈ICF〉


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