第5回公認心理師試験・午前問77は、統合失調症の退院後の再発予防を考える事例問題です。
正答は ① Aに対するSST と ③ Bに対する心理教育 の2つです。
本問では、本人Aへの心理社会的支援だけでなく、同居する父親Bの関わり方が再発予防に影響し得る点を読み取る必要があります。
父親BはAに対して、
- 「自分で治そうという気がない」
- 「薬に頼っているからだめだ」
- 「もっとしっかりしろ」
と繰り返しています。
このような批判的・責めるようなコミュニケーションが続けば、本人にとって強いストレス源となり得ます。
そのため、本人には社会生活技能を高めるSST、父親には疾患理解と適切な関わり方を学ぶ心理教育を検討する、というのが試験上のポイントです。

問題
20歳の男性A。現在、精神科病院に入院中である。Aの母親はすでに他界している。Aは19歳のときに統合失調症を発症し、2回目の入院である。近々退院予定であり、退院後は父親Bとの二人暮らしとなる。
BはAに対して、「また入院したのは、自分で治そうという気がないからだ」、「いつも薬に頼っているからだめなんだ。もっとしっかりしろ」とたびたび言っている。
Aの主治医は、公認心理師Cに退院後の再発予防に有用な支援を検討してほしいと依頼した。
このときCが実施を検討すべきものとして、適切なものを2つ選べ。
- Aに対するSST
- Bに対する回想法
- Bに対する心理教育
- Aに対するTEACCH
- AとBに対するリアリティ・オリエンテーション
正答は ①と③ です。
正答①|Aに対するSST
SST〈Social Skills Training:ソーシャル・スキルズ・トレーニング〉は、対人場面や生活場面で必要になる行動を具体的に練習する心理社会的支援です。
一般に、
- モデリング
- ロールプレイ
- フィードバック
- 反復練習
- 宿題や実生活での練習
などを用います。
統合失調症では、症状そのものだけでなく、
- 人と話す
- 困ったときに援助を求める
- 服薬や通院について伝える
- ストレスの高い場面で対処する
- 地域生活で必要な技能を使う
といった社会生活上の課題が生じることがあります。
本問では、退院後に父親と生活するAに対する再発予防・地域生活支援の一つとしてSSTが選択されています。
SSTの具体的な内容については、第6回問24|慢性期統合失調症とSSTも参照してください。
正答③|父親Bに対する心理教育
本問でより重要なのが③です。
父親Bは、統合失調症を本人の「意志の弱さ」や「努力不足」のように捉えています。
しかし統合失調症は、本人が「しっかりしよう」と努力するだけで再発を防げる疾患ではありません。
家族への心理教育では、
- 統合失調症の症状
- 治療の必要性
- 薬物療法の役割
- 再発兆候
- ストレスと症状の関係
- 本人への接し方
- 支援機関への相談方法
などを共有します。
父親の疾患理解が進めば、本人を責める関わりを減らし、再発兆候へ早く対応しやすくなる可能性があります。
家族の感情表出〈Expressed Emotion:EE〉
統合失調症の家族支援では、Expressed Emotion〈EE〉という概念が重要です。
EEでは、家族から本人への
- 批判
- 敵意
- 情緒的巻き込まれすぎ
などに注目します。
家族関係を単純に「悪い家族」と評価する概念ではありません。
むしろ、家族自身も不安や負担を抱え、病気への理解が不十分な中で、結果として強い批判や過干渉が生じることがあります。
そのため、家族を責めるのではなく、
病気への理解を共有し、本人と家族の双方のストレスを下げる
ことが重要です。
心理教育は家族を「指導する」だけではない
心理教育という言葉から、
「専門家が家族へ正しい知識を一方的に教える」
と考えると不十分です。
実際には、
- 家族が困っていることを聞く
- 家族の負担を確認する
- 誤解や不安を整理する
- 再発時の対応を共有する
- 本人への声かけを一緒に考える
- 利用できる社会資源を確認する
といった双方向的な支援が重要です。
家族への心理教育というテーマは、第3回問146|家族への心理教育も関連します。
② 父親Bへの回想法|不適切
回想法は、高齢者支援や認知症ケアなどで、自分の過去の経験を振り返り語ることを通して心理的安定や自己理解を促すために用いられることがあります。
本問では、父親Bの年齢や認知症などの情報はありません。
しかも課題は、統合失調症を発症した息子への理解と再発予防です。
したがって②は適切ではありません。
④ AへのTEACCH|不適切
TEACCHは、自閉スペクトラム症のある人への支援で知られる包括的なアプローチです。
構造化、視覚的支援、環境調整などを重視します。
本問のAは統合失調症であり、TEACCHを選択する根拠はありません。
したがって④は不適切です。
⑤ リアリティ・オリエンテーション|不適切
リアリティ・オリエンテーションは、主に認知症の人に対し、
- 時間
- 場所
- 人物
- 日付
などの現実見当識を支えるために用いられる方法です。
本問ではAにもBにも認知症や見当識障害を示す情報はありません。
したがって⑤は不適切です。
現在のガイドラインとの関係
ここは試験対策として重要な補足です。
第5回試験の公式正答は ①SST+③心理教育 です。
一方、現在のNICEガイドラインでは、統合失調症に対してSSTを特異的介入として routinely 提供することは推奨していません。それに対し、家族介入については、本人と密接に生活する家族へ提供することが推奨されています。
したがって、実務では、
- 公式試験問題の正答
- 現在のエビデンス・ガイドライン
- 本人のニーズや地域資源
を区別して考える必要があります。
試験では、出題当時の公式正答を押さえつつ、「SSTは万能な単独治療ではない」と理解しておくと安全です。
再発予防で見るべきポイント
統合失調症の再発予防では、単に本人へ「薬を飲み続けましょう」と伝えるだけでは不十分です。
実際には、
- 服薬継続
- 睡眠
- 生活リズム
- ストレス
- 再発兆候
- 家族関係
- 社会参加
- 支援機関とのつながり
などを包括的に見ます。
本人と家族の双方が、
「再発のサインは何か」「悪化したときにどこへ相談するか」
を共有しておくことが重要です。
試験での見分け方
本問では、選択肢を「誰に・何をする支援か」で整理します。
- 統合失調症の本人の社会生活技能 → SST
- 家族の疾患理解と接し方 → 心理教育
- 高齢者の過去の振り返り → 回想法
- ASDへの構造化支援 → TEACCH
- 認知症の見当識支援 → リアリティ・オリエンテーション
対象と技法を対応させると判断しやすくなります。
まとめ
第5回公認心理師試験・午前問77の正答は、
① Aに対するSST
③ Bに対する心理教育
です。
本問は、
本人への心理社会的支援+家族への心理教育
を組み合わせて再発予防を考える問題です。
特に、父親Bの批判的な関わりが示されているため、家族への心理教育が重要な選択肢になります。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午前問題・正答
- NICE|Psychosis and schizophrenia in adults: prevention and management


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