第4回公認心理師試験・午前問58は、治療と仕事の両立支援について、事業場がどのような考え方で支援を進めるかを問う問題です。
正答は③・④です。
この問題では、「病気がある人を一律に扱う」のではなく、労働者本人の状況を個別に確認し、本人からの申出を起点として、必要な就業上の措置や治療への配慮を行うという基本姿勢を押さえることが重要です。
なお、本問は2021年に実施された第4回試験です。2026年には制度上の位置づけや名称が更新され、厚生労働省から「治療と就業の両立支援指針」が示されています。この記事では、試験当時の考え方と、2026年時点の現行制度を混同しないように整理します。
問題
治療と仕事の両立支援について、適切なものを2つ選べ。
- 仕事の繁忙などが理由となる場合には、就業上の措置や配慮は不要である。
- 労働者の個別の特性よりも、疾病の特性に応じた配慮を行う体制を整える。
- 事業場における基本方針や具体的な対応方法などは、全ての労働者に周知する。
- 労働者本人からの支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことを基本とする。
- 労働者が通常勤務に復帰した後に同じ疾病が再発した場合には、両立支援の対象から除外する。
正答
③・④です。
③は、両立支援を行うための基本方針や対応方法を組織内で共有し、労働者が相談・申出をしやすい環境を整える考え方に合致します。④は、両立支援が私傷病に関する支援であり、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に進めることを基本とするという考え方を正しく述べています。
治療と仕事の両立支援とは
治療と仕事の両立支援とは、疾病を抱える労働者が、治療を継続しながら就業を続けられるように、事業場と医療機関などが必要な情報を共有し、就業上の措置や治療への配慮を行う取組です。
重要なのは、「働かせること」そのものを目的にするのではなく、安全と健康を確保しながら、治療と職業生活の両立可能性を個別に検討することです。
たとえば、勤務時間の短縮、時間外労働の制限、深夜業の回数調整、配置・作業内容の変更、通院時間の確保などが検討されることがあります。ただし、必要な措置は疾病名だけで一律に決められるものではありません。
支援の基本は「疾病名」ではなく個別性を見ること
同じ疾病であっても、症状の程度、治療内容、副作用、職務内容、通勤条件、勤務時間、本人の希望、職場で利用できる制度は異なります。
そのため、両立支援では疾病の一般的特徴だけでなく、その労働者がどのような治療を受け、どのような仕事をし、どのような配慮を必要としているかを個別に確認します。
この点を押さえると、選択肢②の「労働者の個別の特性よりも、疾病の特性に応じた配慮を行う」という発想が不適切であることが分かります。
労働者本人からの申出が基本となる理由
両立支援は、本人の疾病や治療に関する情報を扱うため、本人の意思とプライバシーへの配慮が不可欠です。
厚生労働省の現行の案内でも、治療と就業の両立支援は労働者からの申出を原則としており、安心して相談・申出できるよう、相談窓口や情報の取扱いを明確にしておくことが求められています。
つまり、「会社が病気を把握したら自動的に介入する」のではなく、本人が必要な支援を申し出やすい環境を整えることが重要です。
組織全体への周知が必要な理由
両立支援は、実際に支援対象となった人だけが知っていればよい制度ではありません。
労働者が病気になった時点で初めて制度を探すのではなく、平時から基本方針、相談窓口、支援の流れ、情報の取扱いなどが周知されていることで、申出の心理的ハードルを下げることができます。
また、管理職が制度を理解していないと、必要な相談先につながらない、本人の希望を確認せずに対応してしまう、といった問題も起こり得ます。
選択肢①|繁忙なら就業上の措置や配慮は不要である
誤りです。
両立支援では、就労によって疾病の増悪や再発、労働災害が生じないようにすることが前提です。仕事が忙しいことを理由に、本来必要な就業上の措置や治療への配慮を行わないという考え方は適切ではありません。
試験では、「業務上の都合が優先されるから配慮不要」という方向の記述は疑ってください。
選択肢②|疾病特性を個別特性より優先する
誤りです。
疾病についての一般的知識は重要ですが、支援内容を決める際には、疾病名だけでなく、本人の症状、治療状況、仕事内容、勤務条件、希望などを総合して考えます。
「がんならこの配慮」「糖尿病ならこの勤務」といった画一的な対応ではなく、個々の労働者に応じた支援が基本です。
選択肢③|基本方針や対応方法を全労働者に周知する
適切です。
両立支援を機能させるためには、制度や相談窓口が存在するだけでは不十分です。労働者が必要なときに利用できるよう、基本方針や対応方法をあらかじめ周知しておく必要があります。
特に、申出を起点とする制度では、「どこに相談すればよいか」「情報は誰まで共有されるか」が分からないと申出そのものが難しくなります。
選択肢④|本人からの申出を端緒とする
適切です。
治療と仕事の両立支援は、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことを基本とします。
これは、疾病情報が高度に私的な情報であること、本人の治療方針や就業希望を尊重する必要があることと関係します。
一方で、「本人から言ってくるまで会社は何もしなくてよい」という意味ではありません。事業場には、相談窓口やルールを整え、申出しやすい環境を作ることが求められます。
選択肢⑤|再発したら両立支援から除外する
誤りです。
再発したことだけを理由に、一律に両立支援の対象から除外するという考え方は適切ではありません。
むしろ、再発時には治療状況や就業可能性を改めて確認し、必要に応じて支援内容を再検討することになります。両立支援は「一度支援したら終了」というものではなく、状況の変化に応じて見直していく性質があります。
試験当時と2026年現在を分けて理解する
本問は2021年9月に実施された第4回試験です。当時は「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が試験理解の中心でした。
その後、2026年には労働施策総合推進法の改正に関連して、事業主の取組の位置づけが更新され、厚生労働省から「治療と就業の両立支援指針」が公表されています。
現行の指針でも、「繁忙を理由に必要な措置を行わないことは不適切」「本人の申出を端緒とする」「個別性に応じて支援する」といった本問の中核的な考え方は維持されています。
ただし、試験問題を解説する際は、2026年の法的・制度的表現を2021年当時の根拠として遡及的に説明しないよう注意が必要です。
関連知識|職場のメンタルヘルス対策とのつながり
治療と仕事の両立支援は、職場のメンタルヘルス対策や職場復帰支援とも関連します。ただし、両立支援の対象はメンタルヘルス不調に限定されず、がん、脳卒中、心疾患、糖尿病、難病など幅広い疾病を含みます。
職場における一次・二次・三次予防との関係を整理したい場合は、第5回午前問20|職場のメンタルヘルス対策もあわせて確認すると理解しやすくなります。
試験での見分け方
| キーワード | 判断の方向 |
|---|---|
| 繁忙だから配慮しない | × 安全・健康確保に必要な措置を業務都合だけで省略しない |
| 疾病ごとに一律対応 | × 個別の労働者の状況をみる |
| 基本方針・対応方法の周知 | ○ 申出しやすい環境整備 |
| 本人からの申出を端緒 | ○ 両立支援の基本 |
| 再発したら対象外 | × 状況を再評価し支援を見直す |
まとめ
第4回午前問58の正答は③・④です。
- 両立支援は、安全と健康の確保を前提に行う。
- 疾病名だけでなく、本人の治療状況・仕事内容・希望などを個別にみる。
- 基本方針や相談・対応方法を全労働者に周知する。
- 支援は労働者本人からの申出を端緒とすることが基本。
- 再発を理由に一律に支援対象から除外しない。
- 2021年の出題と2026年の現行制度は区別して理解する。



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