公認理師資格試験 過去問解説 問118 児童相談所の対応件数

公認理師資格試験 過去問解説 問118 児童相談所の対応件数

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問118 児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)が施行された 2000 年(平成 12 年) から 2018 年(平成 30 年)までの間、児童相談所における児童虐待相談対応件数は年々増加しているが、その背景として想定されるものの中で、不適切なものを1つ選べ。

① 警察との連携強化により、警察からの通告が急増した。

② 児童相談所全国共通ダイヤルの運用などにより、社会的意識が高まった。

③ 相談対応件数全体におけるネグレクトによる通告件数の割合が急増した。

④ 子どもの面前の家庭内暴力DVが心理的虐待に含まれるようになった。

⑤ きょうだい児への虐待は、他のきょうだい児への心理的虐待であるとみなされるようになった。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ③相談対応件数全体におけるネグレクトによる通告件数の割合が急増した

となります。

選択肢の解説

本問題は、厚生労働省が出している「児童虐待防止対策の状況について」を読み解くことで回答可能です。

それぞれの選択肢を見ていきましょう。

①警察との連携強化により、警察からの通告が急増した

虐待相談の相談経路を見てみると

  • 警察等 全体の50%
  • 近隣知人 全体の13%
  • 学校等 全体の7%
  • 家族 全体の7%

相談経路として警察の割合が高いことがわかります。

また同様に相談経路の増加件数も警察が最も多くなっています。

よって選択肢①「警察との連携強化により、警察からの通告が急増した」は正しい記述といえます。

②児童相談所全国共通ダイヤルの運用などにより、社会的意識が高まった

2015年(平成27年)7月に、児童相談所全国共通ダイヤルの3桁化「189(イチハヤク)」が始まりました。

2015年から2016年にかけての虐待相談の対応件数を見てみると、103286件から133778件へと増加しています。

これは共通ダイヤルの啓蒙活動やアクセスのしやすさによって社会的意識が高まった影響と考えられます。

よって、選択肢②「児童相談所全国共通ダイヤルの運用などにより、社会的意識が高まった」は正しい記述といえます。

③相談対応件数全体におけるネグレクトによる通告件数の割合が急増した

虐待件数の内容別割合を見てみると、

  • 心理的虐待 55.3%
  • 身体的虐待 25.2%
  • ネグレクト 18.4%
  • 性的虐待 1.1%

であり、総数における割合が最も高いのは心理的虐待となります。

同様に件数の増加率も心理的虐待がトップとなっています。

以上のことから、選択肢③「相談対応件数全体におけるネグレクトによる通告件数の割合が急増した」は正しくは「心理的虐待」となるため不適切な記述となります。

不適切なものを選ぶ設問であるため、こちらが正答となります。

④子どもの面前の家庭内暴力DVが心理的虐待に含まれるようになった

いわゆる面前DVは2004年(平成16年)の児童虐待防止法の改正によって心理的虐待に含まれるようになりました。

2013年(平成25年)より警察がDV事案への積極的な介入や体制を確立したことで、警察からの面前DV(心理的虐待)の通告件数が増加していき、2016年には警察からの通告の半数程度が面前DVとなったこともあるようです。

よって、選択肢④「子どもの面前の家庭内暴力DVが心理的虐待に含まれるようになった」は正しい記述といえます。

⑤きょうだい児への虐待は、他のきょうだい児への心理的虐待であるとみなされるようになった

2013年(平成25年)子ども虐待対応の手引き|厚生労働省において、他のきょうだいへの虐待はそれ以外のきょうだいに対する心理的虐待に含まれることが例示されました。

よって、選択肢⑤「きょうだい児への虐待は、他のきょうだい児への心理的虐待であるとみなされるようになった」は正しい記述となります。

まとめ

  • 警察との連携強化により、警察からの通告件数が増加した(全体の50%)
  • 相談対応件数全体における心理的虐待の割合が増加した(全体の55.3%)
  • 2004年(平成16年)の児童虐待防止法の改正によって心理的虐待に含まれるようになった
  • 2013年(平成25年)子ども虐待対応の手引き|厚生労働省において、他のきょうだいへの虐待はそれ以外のきょうだいに対する心理的虐待に含まれることが例示された。