公認心理師資格試験 過去問解説 問61 事例問題:多理論統合モデル

公認心理師資格試験 過去問解説 問61 事例問題:多理論統合モデル

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問61】事例問題:多理論統合モデル

問61 30歳の男性A、自営業。Aは独身で一人暮らし。仕事のストレスから暴飲暴食をすることが多く、最近体重が増えた。このままではいけないと薄々感じていたAは、中断していたジム通いを半年以内に再開するべきかどうかを迷っていた。その折、Aは健康診断で肥満の指摘を受けた。
J.O.Prochaska らの多理論統合モデル(Transtheoretical Model)では、Aはどのステージにあるか。最も適切なものを1つ選べ。

① 維持期

② 実行期

③ 準備期

④ 関心期(熟考期)

⑤ 前関心期(前熟考期)

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ 関心期(熟考期)

となります。

 

多理論統合モデル

多理論統合モデルとは❓

Prochaska, N とClemente, Dらによって提唱された多理論統合モデル Transtheoretical Model:TTM は、行動変容を予測するモデルとして、健康教育や健康的な習慣を形成するためのプログラムなどに広く適用されているモデルです。

 

多理論統合モデル Transtheoretical Model = 行動変容を予測するモデル

 

TTMの中核的な概念として、行動変容ステージが挙げられます。

 

行動変容の5つのステージ:「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」
出典:行動変容ステージモデル|e-ヘルスネット

行動変容ステージモデルでは、人が行動を変える場合は「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。行動変容のステージをひとつでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。

出典:行動変容ステージモデル|e-ヘルスネット

 

このように行動変容ステージでは、関心の程度実際の行動の程度によって、行動変容のどの時点にいるかを把握していきます。

 

各ステージ毎に、役に立つ働きかけが異なるため、各段階を見極めたうえで適切な働きかけをしていくことが、行動変容の鍵となります。

 

何事も変化することには葛藤がつきものであるため、ステージは行きつ戻りつしていくとされています。

 

以下に参考となる文献やサイトを載せておきます📗

 



選択肢の解説

行動変容ステージをまとめると以下のようになります。

  • 無関心期(前関心期):行動を実行しておらず、6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない。行動変容に対して関心がないか抵抗がある状態。
  • 関心期:行動を実行していないが、6ヶ月以内に行動を変えようと思っている。変化したいと感じつつ、変化しないことにも価値を置いている状態。
  • 準備期:行動を実行していないが、1ヶ月以内に行動を変えようと思っている。行動変容のための具体的な方法を検討している段階。
  • 実行期:行動を変えて6ヶ月未満である。行動を変えることへのメリットを感じつつも、生活習慣の変化にストレスを感じる。
  • 維持期:行動を変えて6ヶ月以上である。行動を変容し続けているため、自己効力感が高まっている。

 

行動変容ステージについて頭に留めた上で問題文の以下の記載に注目してください✔️

中断していたジム通いを半年以内に再開するべきかどうかを迷っていた。

 

この文章から、Aさんは『半年以内に行動を変えようと思っている』段階であることがわかりますね。

 

そのため、行動変容ステージの関心期に当たると考えられ、選択肢④「関心期」が正答となりますね❗️

 

因みに、その前の“このままではいけないと薄々感じていた”という記述が、最初の無関心期からステージが次の段階に移行するための重要なファクターになることも押さえておきましょう。

 

行動変容ステージ毎の対応方法のポイントをざっくりとまとめましたので確認しておきましょう❗️

  • 無関心期への対応 ⇨ 適切な情報を伝えること
  • 関心期への対応 ⇨ 変化への不安や抵抗に気づいてもらう、行動変容へのメリットを検討する
  • 準備期への対応 ⇨ 具体的な行動の方法を検討する、メリットについて繰り返し深めていく
  • 実行期への対応 ⇨ 小さな変化に気づくように促しできていることを認める、逆戻りしやすいリスクに気づく
  • 維持期への対応 ⇨ 実行できた行動やこれまでの過程を振り返る、メリットの再確認をする

 

ポイントとしては、

  • 適切な情報を伝えること
  • 変化への不安や抵抗に寄り添うこと
  • 行動が変わることのメリットを確認すること
  • 元の習慣に戻るようなリスク要因に気づいて事前に対処をすること
  • 小さな変化に気づいて認めること

などが挙げられていますね。



まとめ

第3回公認心理師資格試験の問61は、事例問題:多理論統合モデルに関する問題でした❗️

 

ポイントは以下の通りです。

 

多理論統合モデル Transtheoretical Model = 行動変容を予測するモデル

 

【行動変容ステージとステージ毎の対応】

  • 無関心期(前関心期):行動を実行しておらず、6ヶ月以内に行動を変えようと思っていない。行動変容に対して関心がないか抵抗がある状態。⇨適切な情報の提供に務める
  • 関心期:行動を実行していないが、6ヶ月以内に行動を変えようと思っている。変化したいと感じつつ、変化しないことにも価値を置いている状態。⇨変化への不安や抵抗を受け止めつつ、行動を変えることのメリットを検討する
  • 準備期:行動を実行していないが、1ヶ月以内に行動を変えようと思っている。行動変容のための具体的な方法を検討している段階。⇨メリットについてより深く検討しつつ、具体的な行動の方法を思案する
  • 実行期:行動を変えて6ヶ月未満である。行動を変えることへのメリットを感じつつも、生活習慣の変化にストレスを感じる。⇨小さな変化に気づいて認め、逆戻りしやすいリスクに気づいて対処をする
  • 維持期:行動を変えて6ヶ月以上である。行動を変容し続けているため、自己効力感が高まっている。⇨実行できた行動やこれまでの過程を振り返る

 

先延ばしへの対処にも繋がる部分がありますね!!

 

先延ばしへの対処に関しては以下の記事をご参考に💁🏻