第4回公認心理師試験・午前問56は、文部科学省の「特別支援教育の推進について」(平成19年4月1日)に示された特別支援教育コーディネーターの役割を問う問題です。
正答は①・④です。
この問題では、「特別支援教育コーディネーター=特別支援教育を担当する先生」と大まかに覚えるだけでは不十分です。試験では、学校内外の連絡・調整、保護者に対する学校の窓口、校内支援体制の推進というコーディネート機能と、対象児童生徒の決定や直接指導といった別の機能を区別できることが重要です。
問題
「特別支援教育の推進について」(平成19年4月、文部科学省)が示す特別支援教育コーディネーターの役割として、適切なものを2つ選べ。
- 保護者に対する学校の窓口となる。
- 特別支援教育の対象となる児童生徒を決定する。
- 特別支援教育の対象となる児童生徒に対して、直接指導を行う。
- 特別支援教育の対象となる児童生徒について、学校と関係機関との連絡や調整を担う。
- 外部の専門機関が作成した「個別の教育支援計画」に従い、校内の支援体制を整備する。
正答:①・④
特別支援教育とは
平成19年の通知では、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支えるという視点に立ち、一人ひとりの教育的ニーズを把握し、持てる力を高め、生活上・学習上の困難を改善または克服するために、適切な指導と必要な支援を行うものとされています。
ここで重要なのは、特別支援教育が一部の教員だけの仕事ではなく、学校全体の支援体制として進められる点です。校長のリーダーシップの下で校内委員会を設置し、必要な支援方策を検討し、学校内外の関係者が連携することが求められます。
この学校全体の連携を円滑にする中核的な役割の一つが、特別支援教育コーディネーターです。
特別支援教育コーディネーターの中心は「連絡・調整」
文部科学省の資料では、特別支援教育コーディネーターは、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整、保護者に対する学校の窓口として、校内における特別支援教育をコーディネートする役割を担う者と整理されています。
また、平成19年通知を踏まえたガイドでは、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などが主な役割として挙げられています。
つまり、コーディネーターという名称の通り、役割の中心は「一人で支援を決める人」ではなく、「必要な人・情報・支援をつなぐ人」です。
① 保護者に対する学校の窓口となる
適切であり、本問の正答です。
保護者に対する学校の窓口は、特別支援教育コーディネーターの代表的な役割です。保護者からの相談を受け、担任、管理職、校内委員会、必要に応じて外部機関との連携につなげていきます。
ここで「窓口」とは、コーディネーターが単独で全ての問題を解決するという意味ではありません。相談内容を整理し、校内外の支援資源へつなぎ、学校としての支援を調整することが役割です。
② 特別支援教育の対象となる児童生徒を決定する
これは誤りです。
特別支援教育コーディネーターには、児童生徒が特別支援教育の「対象」であるかを単独で決定する権限が与えられているわけではありません。
学校では、校内委員会等を通して児童生徒の実態把握や必要な支援方策を検討します。また、就学先や学びの場に関する判断には、本人・保護者の意向、教育的ニーズ、専門的見地、教育委員会の手続など複数の要素が関係します。
就学相談や学びの場の決定については、第5回午前問24「障害のある子どもの就学先決定」で整理しています。コーディネーターの「連絡・調整」と、就学先を含む制度上の意思決定を混同しないようにしましょう。
③ 特別支援教育の対象となる児童生徒に対して、直接指導を行う
これは誤りです。
特別支援教育コーディネーターに指名された教員が、別の校務や担任・担当者として児童生徒を直接指導することはあり得ます。しかし、平成19年通知がコーディネーター固有の役割として示している中心は、校内外の連絡・調整、校内体制の推進、保護者の相談窓口などです。
したがって、「直接指導を行うこと」が特別支援教育コーディネーターの役割そのものだとする選択肢は不適切です。
試験では、その人が実際に行う可能性がある仕事と、制度上その職・役割に定義されている中心機能を区別することが重要です。
④ 学校と関係機関との連絡や調整を担う
適切であり、本問の正答です。
特別支援教育では、学校だけで全ての支援を完結させるのではなく、必要に応じて教育委員会、特別支援学校、医療、保健、福祉、労働などの関係機関と連携します。
コーディネーターは、そのような校内外の関係者をつなぎ、情報共有や支援方針の調整を進める役割を担います。
発達障害者支援法と教育・福祉等の連携については、第3回問121「発達障害者支援法」も関連します。特別支援教育では、学校内の教育支援と外部機関による支援を切り離さず、一貫した支援へつなげる視点が重要です。
⑤ 外部の専門機関が作成した「個別の教育支援計画」に従い、校内の支援体制を整備する
これは誤りです。
「個別の教育支援計画」は、外部の専門機関が一方的に作成し、学校がそれに従うという性質のものではありません。
文部科学省は、個別の教育支援計画を、障害のある幼児児童生徒一人ひとりのニーズを把握し、福祉・医療・労働等の関係機関と連携しながら、乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点で一貫した支援を行うための計画としています。
したがって、学校は外部機関から「完成した計画」を受け取り従うだけではなく、本人・保護者や関係機関と連携しながら計画を作成・活用し、必要に応じて見直します。
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の違い
試験では、この2つも区別しておく必要があります。
- 個別の教育支援計画:教育だけでなく、福祉・医療・労働などとの連携を含み、長期的・一貫した支援を見通す。
- 個別の指導計画:学校での具体的な指導目標、指導内容、方法などを個別に整理する。
前者は関係機関を含む長期的な支援の「つながり」を重視し、後者は学校での具体的な教育実践により近い計画です。
試験での見分け方
| 選択肢の表現 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 保護者への学校の窓口 | ○ | コーディネーターの代表的役割 |
| 関係機関との連絡・調整 | ○ | 役割の中核 |
| 対象児童生徒を単独で決定 | × | 単独決定者ではない |
| 対象児童生徒を直接指導 | × | 直接指導はコーディネーター固有の役割ではない |
| 外部機関の計画に学校が従う | × | 個別の教育支援計画は連携して作成・活用する |
この問題で押さえたい関連知識
特別支援教育コーディネーターを理解する際は、役職名だけでなく、校内委員会、保護者相談、担任支援、関係機関連携、個別の教育支援計画を一つの支援体制として理解すると整理しやすくなります。
公認心理師が学校領域で働く場合にも、一人で支援を完結するのではなく、担任、養護教諭、管理職、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、教育委員会、医療・福祉機関などとの役割分担が重要です。
「誰が何を決めるか」と「誰が誰をつなぐか」を区別することが、本問の最大のポイントです。
まとめ
第4回午前問56の正答は①・④です。
- 特別支援教育コーディネーターは、保護者に対する学校の窓口となる。
- 学校内の関係者や外部の関係機関との連絡・調整を担う。
- 対象児童生徒を単独で決定する役割ではない。
- 直接指導そのものがコーディネーター固有の役割ではない。
- 個別の教育支援計画は、外部機関が一方的に作成し学校が従うものではなく、関係者が連携して作成・活用する。


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