公認理師資格試験 過去問解説 問121 発達障害者支援法

公認理師資格試験 過去問解説 問121 発達障害者支援法

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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問121 発達障害者支援法について、不適切なものを1つ選べ。

① 発達支援には、医療的援助も含まれる。

② 支援対象には、18 歳未満の者も含まれる。

③ 支援対象には、発達障害者の家族も含まれる。

④ 国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められている。

⑤ 支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ⑤支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う

となります。

発達障害者支援法とは

発達障害者支援法は、簡単に説明すると、発達障害の早期発見や発達支援を目的とした法律になります。

第1条 目的

この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うとともに、切れ目なく発達障害者の支援を行うことが特に重要であることに鑑み、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、発達障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加のためのその生活全般にわたる支援を図り、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

出典:発達障害者支援法

2016年の発達障害者支援法の改正により、”個人としての尊厳に相応しい日常生活・社会生活を営むことができるように””支援が切れ目なく行われる””障害の有無によって分け隔てられること無く(社会的障壁の除去)””相互に人格と個性を尊重(意思決定の支援に配慮)しながら共生する社会の実現に資する”といった重要な文言が含まれるようになりました。

選択肢の解説

①発達支援には、医療的援助も含まれる

発達障害者支援法の第2条(定義)をみてみましょう。

4 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う個々の発達障害者の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。

出典:発達障害者支援法

こちらをみると、医療・福祉・教育による援助が含まれていることがわかります。

よって選択肢①「発達支援には、医療的援助も含まれる」は正しい記述といえます。

②支援対象には、18 歳未満の者も含まれる

こちらも発達障害者支援法の第2条(定義)に記載があります。

2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。

出典:発達障害者支援法

こちらの条文をみると、18歳未満のものは「発達障害児」と定義され、発達障害者支援法の支援範囲に含まれることになりますね。

よって選択肢②「支援対象には、18 歳未満の者も含まれる」は正しい記述といえます。

③支援対象には、発達障害者の家族も含まれる

こちらの選択肢に関連する条文は第13条に記載があります。

第13条 発達障害者の家族等への支援

都道府県及び市町村は、発達障害者の家族その他の関係者が適切な対応をすることができるようにすること等のため、児童相談所等関係機関と連携を図りつつ、発達障害者の家族その他の関係者に対し、相談、情報の提供及び助言、発達障害者の家族が互いに支え合うための活動の支援その他の支援を適切に行うよう努めなければならない。

出典:発達障害者支援法

このように「家族支援」は法律上にも明記されています。

よって選択肢③「支援対象には、発達障害者の家族も含まれる」は正しい記述といえます。

④国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められている

発達障害者支援法第3条には国及び地方公共団体の責務が定められています。

よって選択肢④「国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められている」は正しい記述といえます。

⑤支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う

2016年の改正により、発達障害者支援法に「個々の発達障害の特性」というキーワードが含まれるようになりました。

第2条の2(基本理念)

3 発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。

出典:発達障害者支援法

いくつか実際の条文を確認してみましょう。

第4条 国民の責務

国民は、個々の発達障害の特性その他発達障害に関する理解を深めるとともに、基本理念にのっとり、発達障害者の自立及び社会参加に協力するように努めなければならない。

出典:発達障害者支援法

第8条 教育

国及び地方公共団体は、発達障害児(十八歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校及び特別支援学校並びに専修学校の高等課程に在学する者を含む。以下この項において同じ。)が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするため、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、適切な教育的支援を行うこと、個別の教育支援計画の作成(教育に関する業務を行う関係機関と医療、保健、福祉、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連携の下に行う個別の長期的な支援に関する計画の作成をいう。)及び個別の指導に関する計画の作成の推進、いじめの防止等のための対策の推進その他の支援体制の整備を行うことその他必要な措置を講じるものとする。

2 大学及び高等専門学校は、個々の発達障害者の特性に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。

出典:発達障害者支援法

第10条の3 就労支援

事業主は、発達障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の発達障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。

出典:発達障害者支援法

国民の責務・教育・就労支援のいずれにおいても、「個々の発達障害の特性」にあわせて支援や配慮を講じる必要があることが記載されています。

よって選択肢⑤「支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う」は不適切な記述といえます。

まとめ

  • 発達障害者支援法は、発達障害の早期発見や早期からの支援を目的とした法律
  • 2016年の発達障害者支援法改正によって以下の文言が法律に含まれた
    • ”個人としての尊厳に相応しい日常生活・社会生活を営むことができるように”
    • ”支援が切れ目なく行われる””障害の有無によって分け隔てられること無く(社会的障壁の除去)”
    • ”相互に人格と個性を尊重(意思決定の支援に配慮)しながら共生する社会の実現に資する”
  • 発達障害者支援法の支援対象には、18歳未満の「発達障害児」から、家族に至るまで対象として含まれている