第6回公認心理師試験 午前問8は、色覚多様性について、先天的な色覚の違いだけでなく、後天性色覚異常、錐体の機能、分類、学校での色覚検査まで横断的に問う問題です。正答は②の「後天的に生じるものがある」です。
問題
色覚多様性の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
- 男性より女性に多い。
- 後天的に生じるものがある。
- 1型、2型及び3型の3種に分けられる。
- 桿体が機能不全を起こすことによって生じるものがある。
- 色覚検査は、学校保健安全法施行規則に定める児童生徒等の健康診断における必須の検査項目である。
正答:②
この問題のポイント
色覚の違いには生まれつきのものだけでなく、網膜疾患、緑内障、視神経疾患などによって後天的に生じるものがあります。したがって②が最も適切です。
一方で、先天色覚異常の代表的な赤緑系の色覚の違いはX連鎖性遺伝を示し、男性で多くみられます。また色覚は主として錐体細胞が担うため、桿体の機能不全を中心原因として説明する④も不適切です。
色覚を支える錐体細胞
網膜には、明るい環境で働き色を識別する錐体細胞と、暗い環境での明暗知覚を主に担う桿体細胞があります。色覚にはL錐体、M錐体、S錐体という3種類の錐体が関わります。
- L錐体:比較的長い波長域に感度をもつ
- M錐体:中間的な波長域に感度をもつ
- S錐体:比較的短い波長域に感度をもつ
色は、これら複数の錐体から得られる信号の相対的な組み合わせによって知覚されます。そのため、どの錐体系に違いがあるかによって色の見え方が変化します。
選択肢ごとの解説
① 男性より女性に多い。
この選択肢は不適切です。代表的な先天赤緑色覚異常はX連鎖性遺伝で、日本眼科学会の資料では男性の約5%、女性の約0.2%とされており、男性に多くみられます。
男性はX染色体を1本しか持たないため、X染色体上の色覚に関係する遺伝子に変化があると、その影響が表現されやすくなります。試験では、先天性の赤緑系色覚の違いは男性に多いという方向を押さえておきます。
② 後天的に生じるものがある。
適切であり、この問題の正答です。色覚の変化は先天性だけではありません。日本眼科学会では、網膜疾患、緑内障、視神経疾患などに伴う後天色覚異常が説明されています。
後天性の場合は、もともとの色覚が保たれていた人に変化が生じることがあり、原因疾患や障害部位によって見え方も異なります。そのため「色覚の違いはすべて遺伝性」と考えるのは誤りです。
③ 1型、2型及び3型の3種に分けられる。
この選択肢は不適切です。1型・2型・3型という分類は、どの錐体系に関係するかを示す分類として用いられますが、色覚の分類全体を「この3種類だけ」と言い切るのは単純化しすぎています。
日本眼科学会の説明では、1色覚・2色覚・異常3色覚のような分類と、L・M・S錐体のどの系統に違いがあるかによる1型・2型・3型という分類が区別されています。つまり、分類には複数の軸があります。
試験では、「1型・2型・3型」という言葉自体が間違いなのではなく、色覚多様性全体がその3種だけに分けられるとする表現が不適切だと考えます。
④ 桿体が機能不全を起こすことによって生じるものがある。
この選択肢は不適切です。色覚を主に担うのは錐体細胞です。桿体細胞は主として暗い環境での明暗知覚に関係し、色の識別を担う中心的な受容器ではありません。
したがって、色覚異常の基本的な説明では、L錐体・M錐体・S錐体の働きを中心に理解します。心理学の感覚・知覚領域でも、色覚=錐体、暗所視=桿体という基本対応は重要です。
⑤ 色覚検査は、学校保健安全法施行規則に定める児童生徒等の健康診断における必須の検査項目である。
この選択肢は不適切です。文部科学省の資料では、色覚検査は平成14年度までは学校健診の必須項目でしたが、その後は必須項目から外れています。
ただし、これは学校で色覚検査をしてはいけないという意味ではありません。色覚に関する困難を早期に把握し、進学・就職や学習上の配慮につなげるため、希望者を対象とした個別検査や相談が行われることがあります。試験では「必須ではない」と「禁止されている」を区別しましょう。
「色覚多様性」と「色覚異常」の用語
現在は、色の見え方の個人差を尊重する観点から「色覚多様性」という表現が使われることがあります。一方、医学的資料や過去の試験では「色覚異常」「先天色覚異常」「後天色覚異常」といった用語も使われます。
試験対策では用語そのものに引っ張られず、先天性か後天性か、どの受容器が関係するか、どのような分類軸かを整理することが重要です。特に後天性では、眼疾患や視神経疾患など病理的な変化に伴う色覚障害を扱うため、単なる個人差として一括りにしないことも大切です。
試験での見分け方
この問題は、次の4点を押さえると解けます。
- 先天赤緑色覚異常は男性に多い
- 後天性色覚異常もある
- 色覚は主に錐体が担う
- 学校の色覚検査は健康診断の必須項目ではない
この4点が整理できていれば、②だけが適切であることが分かります。
先天性と後天性を分けて考える
色覚に関する問題では、まず先天性と後天性を分けて考えることが重要です。先天性の代表的な赤緑色覚の違いは遺伝的背景をもち、左右眼で比較的一定した特徴を示します。一方、後天性色覚異常は、網膜や視神経などの疾患に伴って生じるため、発症時期や進行、左右差などが先天性とは異なることがあります。
そのため、「色覚の違いはすべて生まれつき」とする理解は誤りです。今回の②は、この基本的な区別を確認している選択肢といえます。試験では、先天性の頻度や遺伝形式だけでなく、後天的な色覚変化も存在することまで押さえておく必要があります。
分類には複数の軸がある
色覚の分類では、どの錐体系が関係するかという分類と、どの程度色を識別できるかという分類が併存します。したがって、1型・2型・3型という表現を見たときに、それだけで色覚全体を完全に分類できると考えるのは不十分です。
例えば、1型・2型・3型はL・M・S錐体系との関係をみる分類です。一方で、1色覚・2色覚・異常3色覚という表現は、色覚機能の程度や残存する錐体系の組み合わせを示す別の分類軸です。試験では、「用語が存在する」ことと「その分類だけで全てを説明できる」ことを区別する必要があります。
錐体と桿体の役割を整理する
感覚・知覚領域では、錐体と桿体の役割を対比して覚えておくと多くの問題に応用できます。錐体は明るい環境で働き、色覚や細かな形の識別に重要です。これに対して桿体は暗い環境での感度が高く、主として明暗の知覚に関与します。
そのため、色覚異常の基本問題で桿体を中心原因として説明する選択肢が出てきた場合は注意が必要です。色覚に直接関係する中心的な受容器は錐体であり、L・M・S錐体の働きの違いを押さえることが基本です。
学校での色覚検査をどう理解するか
学校の健康診断における色覚検査は、以前は必須項目でしたが、現在は必須項目ではありません。しかし、必須から外れたことは「検査をしてはいけない」「学校で扱ってはいけない」という意味ではありません。
文部科学省資料では、本人や保護者が希望する場合などに個別の検査や相談につなげる考え方が示されています。色の見え方は、教材、地図、グラフ、実習、進路選択など学校生活のさまざまな場面に関係するため、必要に応じて本人が自分の見え方を理解できるように支援することが大切です。
用語の扱いで注意すること
「色覚多様性」という表現は、色の見え方の個人差を尊重するために用いられることがあります。一方、医学的な資料では現在も「先天色覚異常」「後天色覚異常」という用語が使われます。試験問題では出典や制度上の用語に合わせてこれらが併存するため、単語だけで正誤を判断しないことが重要です。
特に後天性の色覚変化は、眼疾患や視神経疾患に伴う病理的な変化を含みます。したがって、すべてを単なる個性や多様性として同じように扱うのではなく、先天的な色覚特性と、疾患に伴う後天的な色覚障害を区別することが必要です。
なお、色覚に関する支援では、本人の見え方を一律に推測せず、必要に応じて本人の経験や検査結果を確認することが重要です。同じ分類名であっても見え方には幅があり、教材や進路上の困難も個人ごとに異なります。試験でも、分類名だけから日常機能を決めつける表現には注意が必要です。
まとめ
第6回午前問8の正答は②です。色覚の違いには先天性だけでなく、網膜や視神経などの疾患に伴って後天的に生じるものがあります。
合わせて、代表的な先天赤緑色覚異常は男性に多いこと、色覚は主に錐体が担うこと、分類には複数の軸があること、学校色覚検査は必須項目ではないことを整理しておきましょう。


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