第6回公認心理師試験・午前問43は、Lewy小体型認知症〈Dementia with Lewy Bodies:DLB〉の症状・特徴として不適切なものを選ぶ問題です。正答は ① 常同行動 です。
Lewy小体型認知症では、
- 認知機能の変動
- 繰り返す具体的な幻視
- レム睡眠行動障害
- Parkinson症状
- 視空間・視知覚機能の低下
- 自律神経症状
などが重要です。
一方、常同行動は前頭側頭型認知症で典型的にみられる行動症状の一つです。
認知症の問題では、「物忘れがあるか」だけでなく、どの認知機能や行動症状が前景に出るかを型ごとに整理することが重要です。
問題
問題: Lewy小体型認知症の症状や特徴として、不適切なものを1つ選びます。
- 常同行動
- 自律神経症状
- Parkinson症状
- 視空間認知障害
- レム睡眠行動障害
正答は ① 常同行動 です。
正答は①|常同行動
常同行動とは、同じ行動や決まったパターンを繰り返すことです。
たとえば、
- 同じ時間に同じ場所へ行く
- 同じルートを歩く
- 同じ行動を繰り返す
- 特定の儀式的行動を続ける
などがみられることがあります。
常同行動は、行動障害型前頭側頭型認知症〈bvFTD〉などで特徴的な症状として知られています。
一方、Lewy小体型認知症の中核的・支持的特徴として重視されるのは、認知機能の変動、幻視、REM睡眠行動障害、Parkinson症状、自律神経症状、視空間認知機能低下などです。
したがって①が不適切です。
Lewy小体型認知症とは
Lewy小体型認知症は、Lewy小体という異常なタンパク質凝集体が神経系に広くみられる神経変性疾患です。
Parkinson病とも関連が深く、認知症症状だけでなく、
- 運動症状
- 睡眠症状
- 自律神経症状
- 精神症状
が組み合わさって現れることがあります。
Alzheimer型認知症と比べ、初期から記憶障害だけが目立つとは限りません。
むしろ、
- 注意
- 遂行機能
- 視知覚
- 視空間認知
などの障害が比較的早くみられることがあります。
DLBの4つの中核的臨床特徴
2017年のDLB Consortiumの診断基準では、代表的な中核的臨床特徴として次の4つが挙げられます。
1. 認知機能の変動
注意や覚醒レベルが大きく変動します。
たとえば、
- ある時間帯は会話が明瞭
- 別の時間帯はぼんやりして反応が乏しい
- 日によって理解力が大きく変わる
など、認知状態に波がみられます。
Alzheimer型認知症でも調子の良し悪しはありますが、DLBでは比較的顕著な変動が特徴です。
2. 繰り返す具体的な幻視
人物、動物、子どもなどが、実際には存在しないのに見えることがあります。
DLBの幻視は、
- 具体的
- 鮮明
- 繰り返し起こる
ことが特徴です。
3. REM睡眠行動障害
通常、REM睡眠中は筋緊張が抑制されるため、夢を見ていても身体は大きく動きません。
REM睡眠行動障害では、この筋抑制がうまく働かず、
- 夢に合わせて手足を動かす
- 大声を出す
- 殴る・蹴るような動き
- ベッドから落ちる
などがみられることがあります。
DLBでは、認知症症状が明らかになる前からREM睡眠行動障害が出現することもあります。
4. Parkinson症状
DLBでは、
- 動作緩慢
- 筋強剛
- 安静時振戦
- 姿勢保持の不安定さ
などのParkinson症状がみられることがあります。
そのため、認知症と運動症状を別々に見るのではなく、両方を合わせて考えることが重要です。
② 自律神経症状は適切
Lewy小体型認知症では自律神経機能の障害がみられることがあります。
代表的には、
- 起立性低血圧
- 便秘
- 排尿障害
- 発汗異常
- 失神
- めまい
などです。
立ち上がったときに血圧が低下してふらつく、便秘が続く、といった症状が認知症やParkinson症状と併存する場合があります。
自律神経症状はDLBの支持的な臨床特徴として重要です。
したがって②は適切です。
③ Parkinson症状は適切
Parkinson症状はDLBの中核的臨床特徴の一つです。
代表的には、
- 動作緩慢〈bradykinesia〉
- 安静時振戦
- 筋強剛
などです。
Parkinson病とDLBはともにαシヌクレイン病理と関連するため、臨床的にも共通点があります。
試験では、
認知症+Parkinson症状
という組合せが出たらDLBを考える手掛かりになります。
Parkinson病認知症との違い
DLBとParkinson病認知症は病理学的に近い疾患ですが、臨床診断では認知症とParkinson症状の出現時期が手掛かりになります。
一般的には、
- 認知症がParkinson症状と同時期、またはその前に出現 → DLB
- Parkinson病が明確に先行し、その後に認知症が出現 → Parkinson病認知症
という「1年ルール」が用いられます。
公認心理師試験では細かな病理より、症状の組合せと時系列を整理することが重要です。
④ 視空間認知障害は適切
DLBでは、比較的早い段階から視知覚・視空間認知の障害がみられることがあります。
たとえば、
- 物の位置関係を把握しにくい
- 複雑な図形を正確に捉えにくい
- 空間内での方向が分かりにくい
- 視覚情報をうまく統合できない
などです。
DLBでは、初期から記憶障害だけが突出するとは限らず、注意、遂行機能、視空間・視知覚能力の低下が目立つ場合があります。
そのため④は適切です。
⑤ レム睡眠行動障害は適切
REM睡眠行動障害〈REM Sleep Behavior Disorder:RBD〉はDLBの重要な中核的特徴です。
夢の内容に合わせて、
- 手足を動かす
- 叫ぶ
- 殴る
- 蹴る
といった行動がみられることがあります。
本人や家族が「寝相が悪くなった」と表現することもあるため、睡眠歴を聞くことが重要です。
認知症が明らかになる何年も前からRBDが存在することもあります。
したがって⑤は適切です。
DLBで頻出の「幻視」
今回の選択肢にはありませんが、DLBを覚えるうえで具体的な幻視は非常に重要です。
たとえば、
- 「部屋に知らない人がいる」
- 「子どもがそこに立っている」
- 「小さな動物が歩いている」
と訴えることがあります。
単なる錯覚ではなく、存在しない対象を鮮明に見る幻視が反復する点が特徴です。
試験で、
認知症+幻視+Parkinson症状
が出れば、DLBを強く疑う手掛かりになります。
DLBとAlzheimer型認知症の違い
Alzheimer型認知症
初期から比較的目立ちやすいもの:
- 近時記憶障害
- 新しい出来事を覚えにくい
- 同じ話や質問を繰り返す
Lewy小体型認知症
比較的特徴的なもの:
- 認知機能の変動
- 幻視
- Parkinson症状
- REM睡眠行動障害
- 視空間認知障害
- 自律神経症状
両者は実際には病理が重なる場合もありますが、試験では典型的特徴を整理しておくと見分けやすくなります。
DLBと前頭側頭型認知症の違い
本問の①を理解するためには、前頭側頭型認知症との比較が重要です。
前頭側頭型認知症
比較的目立ちやすいもの:
- 脱抑制
- 無関心
- 共感性の低下
- 常同行動
- 食行動の変化
- 言語症状
Lewy小体型認知症
比較的目立ちやすいもの:
- 認知機能の変動
- 幻視
- Parkinson症状
- REM睡眠行動障害
- 視空間認知障害
- 自律神経症状
常同行動 → 前頭側頭型認知症
という対応を覚えておくと、本問を解きやすくなります。
抗精神病薬への過敏性
DLBでは、抗精神病薬に対して強い副作用が出ることがあります。
そのため、幻視や妄想があるからといって、薬物療法を単純に考えることはできません。
公認心理師が薬剤を処方することはありませんが、DLBでは薬物感受性に特徴があることを知っておくことは、医療チームとの連携や心理教育の理解に役立ちます。
MIBG心筋シンチグラフィとDAT画像
試験の発展知識として、DLBでは診断補助にバイオマーカーが用いられることがあります。
代表的には、
- ドパミントランスポーター〈DAT〉取り込み低下
- MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下
- 終夜睡眠ポリグラフでREM睡眠中の筋緊張消失がみられない
などです。
一般問題では、症状と特徴をまず確実に押さえることが優先です。
第5回問68とのつながり
第5回午前問68では、近時記憶障害とIADL低下からAlzheimer型認知症を判断する問題がありました。
今回の問43ではDLBを扱います。
両方を比較すると、
Alzheimer型 → 近時記憶障害が中心
DLB → 変動・幻視・Parkinson症状・RBD・視空間障害
という整理ができます。
認知症問題は、1疾患だけを暗記するより、複数の認知症を比較して覚える方が得点につながります。
試験での見分け方
DLBが出たら、次の語をチェックします。
○ DLBらしい
- 認知機能の変動
- 幻視
- Parkinson症状
- REM睡眠行動障害
- 視空間認知障害
- 自律神経症状
× より前頭側頭型認知症らしい
- 常同行動
- 著しい脱抑制
- 初期からの人格・社会行動変化
本問では①が不適切です。
まとめ
第6回公認心理師試験・午前問43の正答は ① 常同行動 です。
Lewy小体型認知症では、
- 認知機能の変動
- 幻視
- Parkinson症状
- REM睡眠行動障害
- 視空間認知障害
- 自律神経症状
などが特徴です。
一方、常同行動は前頭側頭型認知症で典型的にみられます。
試験では、
DLB=変動・幻視・Parkinson・RBD・視空間・自律神経
常同行動=前頭側頭型
と整理しておきましょう。
※本記事は公認心理師試験の学習用解説です。実際の認知症診断は、臨床症状、神経学的所見、検査、画像・バイオマーカー等を総合して医師が判断します。
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参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
- 日本神経学会|認知症疾患診療ガイドライン:Lewy小体型認知症
- McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017.

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