第6回公認心理師試験・午前問21は、強迫症が疑われる成人に用いる心理検査を問う問題です。正答は⑤ Y-BOCSです。名称だけでなく、各尺度が何を評価するのかを対応させて覚えることがポイントになります。
実際の問題文
問21 強迫症が疑われる成人に用いる心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CAARS
② CAPS
③ POMS 2
④ SDS
⑤ Y-BOCS
問題文の読み解き
この問題は、疾患名と評価尺度の対応を問う典型問題です。設問には「強迫症」「成人」「心理検査」という3つの情報があります。Y-BOCSはYale-Brown Obsessive Compulsive Scaleの略で、強迫症状の重症度を評価する代表的な臨床家評価尺度です。
したがって正答は⑤です。残りの選択肢は、ADHD、PTSD、気分状態、抑うつ症状など別の領域を評価する尺度です。
正答は⑤|Y-BOCS
Y-BOCSは、強迫症状の重症度を評価するために開発された尺度です。原版は10項目で、強迫観念と強迫行為について、費やす時間、生活への支障、苦痛、抵抗、コントロールなどを評価します。
開発論文では、複数評価者による評価者間信頼性が高く、強迫症の重症度を測定する尺度としての信頼性が示されました。続く妥当性研究では、強迫症状の重症度を反映し、治療による変化にも感度をもつことが報告されています。
Y-BOCSは「診断そのもの」ではない
ここは試験でも実務でも重要です。Y-BOCSは強迫症状の重症度評価に有用ですが、得点だけで強迫症の診断を確定するものではありません。診断では、症状内容、持続期間、機能障害、他疾患との鑑別などを臨床面接で確認する必要があります。Y-BOCSは、その評価を補助し、重症度や経過を把握するための尺度と理解してください。
Y-BOCSが評価するもの
Y-BOCSでは、強迫観念と強迫行為のそれぞれについて、症状にどの程度時間を取られているか、日常生活をどの程度妨げているか、どの程度苦痛があるか、症状への抵抗やコントロールがどの程度可能か、といった側面を評価します。
つまり、単に「強迫観念があるか・ないか」をチェックするだけではなく、症状の重さと生活への影響を把握するための尺度です。
症状の種類と重症度を分けて考える
強迫症には、汚染への恐れ、確認、対称性へのこだわり、加害への恐れなど多様な症状内容があります。Y-BOCSでは症状の内容を把握するためのチェックリストと、重症度を評価する項目を分けて考えることができます。試験では、「症状のテーマが何か」より「強迫症状がどれくらい重いかを測る尺度」と覚えると選びやすくなります。
選択肢①|CAARS
CAARSはConners’ Adult ADHD Rating Scalesで、成人のADHD症状を評価するために用いられる尺度です。注意の問題、多動性・衝動性など成人ADHDに関連する特徴を把握するために使われます。
したがって、強迫症状の重症度を評価する尺度としては適切ではありません。設問に「成人」とあるため迷うかもしれませんが、成人であることだけでCAARSを選ぶのではなく、何を評価する尺度かを確認する必要があります。
選択肢②|CAPS
CAPSはClinician-Administered PTSD Scaleで、PTSD症状を評価するための臨床家面接尺度です。外傷体験後の侵入症状、回避、認知・気分の変化、覚醒の変化などを評価します。
強迫症とPTSDはいずれも不安や回避を伴うことがありますが、評価対象は異なります。CAPSはPTSD、Y-BOCSは強迫症状、と対応させて覚えましょう。
選択肢③|POMS 2
POMS 2はProfile of Mood States 2で、気分状態を多面的に評価する尺度です。緊張、不安、抑うつ、怒り、疲労などの気分プロフィールを把握するために用いられます。
気分の変化を見るには有用ですが、強迫症状の特異的な重症度評価尺度ではありません。したがって③は不適切です。
選択肢④|SDS
SDSはSelf-rating Depression Scaleとして、抑うつ症状の自己評価に用いられる尺度です。抑うつ気分や身体症状などを自己記入で評価します。
強迫症の人に抑うつ症状が併存することはありますが、SDSで強迫症そのものの重症度を評価するわけではありません。併存症状の評価と主要症状の評価を混同しないことが重要です。
選択肢⑤|Y-BOCS
⑤が正答です。Y-BOCSは強迫症状の重症度を評価する代表的な臨床家評価尺度です。症状の程度を数値化し、初回評価だけでなく、治療前後の変化や経過観察にも用いられます。
原著では、10項目からなる尺度として信頼性と妥当性が検討されました。特に、強迫症状そのものの変化を追うアウトカム尺度としての有用性が示されています。
「成人」に注目する理由
成人の強迫症状ではY-BOCSが代表的です。一方、小児・青年ではCY-BOCS(Children’s Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale)が用いられます。設問に年齢情報があるときは、成人用か児童用かを区別する視点が重要です。
強迫症の評価でY-BOCSが役立つ場面
強迫症では、本人が「分かっていてもやめられない」反復行為や思考に多くの時間を取られることがあります。治療前後で、強迫観念や強迫行為に費やす時間、苦痛、生活への支障がどの程度変化したかを共通の尺度で追えることは大きな利点です。
ただし、評価尺度の点数だけに注目するのではなく、学校・仕事・家庭生活への影響や、本人が何に困っているかを合わせて確認する必要があります。
試験での見分け方
この問題は、尺度名を疾患・目的と1対1で対応させると解きやすくなります。CAARS=成人ADHD、CAPS=PTSD、POMS 2=気分状態、SDS=抑うつ、Y-BOCS=強迫症状の重症度、と整理してください。
心理検査全般の考え方については、第4回問37「成人のクライエントへの心理検査」も関連します。また、症状評価尺度という枠組みを復習したい場合は、症状評価尺度(HAM-D、PANSS)の解説も参考になります。
覚え方のコツ
尺度名だけを暗記するより、「誰に」「何を」「誰が評価するか」をセットにすると定着しやすくなります。Y-BOCSなら、成人の強迫症状、主に重症度、臨床家評価、という3点をまとめて覚えると他尺度との混同が減ります。
Y-BOCSの限界
Y-BOCSは非常に広く用いられる尺度ですが、点数が同じでも症状内容や生活上の困難は人によって異なります。また、尺度得点だけでは鑑別診断や併存症を十分に評価できません。強迫症状の重症度を定量的に把握する道具として有用ですが、臨床面接や他の情報と組み合わせて用いることが前提です。
実務・臨床上の注意
強迫症状が疑われる場合、症状の内容や程度だけでなく、本人がどの程度苦痛を感じているか、日常生活にどの程度支障があるか、回避や家族の巻き込みがあるかなども確認します。評価尺度は、こうした情報を整理し、治療経過を共有する補助になります。
本記事は公認心理師試験の学習用解説であり、個別の診断を行うものではありません。
関連知識|強迫観念と強迫行為
強迫症では、本人に繰り返し浮かぶ思考・衝動・イメージである強迫観念と、不安を下げたり恐れている結果を避けたりするために繰り返される行為や心の中の儀式である強迫行為が中心になります。例えば、汚染への恐れに対する繰り返しの手洗い、鍵や火元の過度な確認、特定の順番にこだわる行為などです。
Y-BOCSが有用なのは、症状内容の有無だけでなく、こうした症状にどれほど時間を取られ、どれほど苦痛や生活障害が生じているかを整理できる点です。強迫症状は本人が隠していることもあるため、評価では恥や罪悪感に配慮しながら具体的に確認する必要があります。
関連知識|重症度尺度を使う理由
臨床では、「症状があるかどうか」だけでは治療効果を十分に評価できません。例えば、治療前は確認行為に1日3時間使っていた人が、治療後に30分まで減った場合、症状自体は残っていても大きな改善と考えられます。重症度尺度は、このような変化を共通の枠組みで追跡するために役立ちます。
一方で、尺度得点は本人の生活全体を完全に表すものではありません。得点が改善しても、学校・仕事・家族関係で困難が残っている場合があります。したがって、Y-BOCSの得点と生活機能の両方を見ることが重要です。
関連知識|成人用と児童用を区別する
設問に「成人」と書かれているのは、年齢に応じた尺度選択を意識させる情報でもあります。成人ではY-BOCSが代表的ですが、児童・青年の強迫症状にはCY-BOCSが用いられます。公認心理師試験では、疾患名だけでなく、対象年齢まで見て尺度を選ぶ問題が出るため注意が必要です。
また、成人用尺度でも、自己記入式か臨床家評価かによって使い方が異なります。Y-BOCSは代表的には臨床家が面接を通して評価する尺度です。これもSDSのような自己評価尺度との違いになります。
誤答しやすいパターン
①CAARSは「Adult」という語が入るため、設問の「成人」に引っ張られると選びたくなることがあります。しかし重要なのは年齢より対象症状で、CAARSは成人ADHDです。②CAPSは臨床家評価尺度という点ではY-BOCSと似ていますが、対象はPTSDです。③POMS 2と④SDSは気分・抑うつを評価するため、強迫症の特異的尺度ではありません。
このように、心理検査問題では、尺度名の略称を丸暗記するより、対象疾患・目的・実施形式をセットで整理する方が正答しやすくなります。
まとめ
正答は⑤ Y-BOCSです。Y-BOCSは成人の強迫症状の重症度を評価する代表的な臨床家評価尺度です。CAARSは成人ADHD、CAPSはPTSD、POMS 2は気分状態、SDSは抑うつ症状の評価に用いられます。尺度名だけでなく、対象となる症状と評価目的をセットで覚えましょう。

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