公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問48|幻肢の特徴と鏡療法

公認心理師過去問第5回47 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問48は、切断後などにみられる幻肢について、特徴と治療法を問う問題です。正答は「不適切なもの」を選ぶため、③ 上下肢を失った直後に発症するです。

実際の問題文

問48 幻肢の説明として、不適切なものを1つ選べ。

① 鏡を用いた治療法がある。
② 痛みやかゆみを伴うことがある。
③ 上下肢を失った直後に発症する。
④ 切断端より遊離したり縮小したりすることがある。

問題文の読み解き

この問題は、幻肢について「何があり得るか」ではなく、どの記述が言い切りすぎているかを見抜く問題です。①鏡療法、②痛みやかゆみ、④位置や大きさの変化はいずれも幻肢・幻肢痛の臨床像として知られています。一方、③は発症時期を「上下肢を失った直後」に限定しています。

幻肢感覚や幻肢痛は早期に出現することが多いものの、遅れて出現する例もあります。そのため、「直後に発症する」と限定した③が不適切です。

正答は③|発症時期は「直後」に限定されない

幻肢は、失われた身体部位がまだ存在するように感じられる現象です。幻肢痛はその幻肢に痛みを感じる状態を指します。切断後の比較的早い時期に出現することは多いですが、すべての人が直後に発症するわけではありません。

臨床レビューでも、幻肢痛の発症は多くの場合術後早期である一方、一部では遅れて出現することが示されています。したがって、③のように時期を断定する表現は不適切です。

試験で注意したい「限定表現」

医学・心理学の選択肢では、「必ず」「すべて」「直後に」「のみ」といった限定表現が誤りの手掛かりになることがあります。ただし、限定表現があるだけで機械的に誤りと決めるのではなく、その現象に例外があるかを知識で確認することが必要です。この問題では、幻肢の発症時期に幅があることが根拠になります。

幻肢とは何か

幻肢は、切断や身体部位の喪失後に、失った部位が依然として存在するように感じられる現象です。例えば、切断したはずの手指の位置や姿勢を感じたり、動かそうとしている感覚があったりします。単に「痛い」ことだけを指すわけではありません。

この区別は試験でも重要です。幻肢=存在感覚、幻肢痛=幻肢に生じる痛みと整理すると理解しやすくなります。

幻肢と幻肢痛は同じではない

幻肢には痛みを伴わない感覚も含まれます。温度感覚、圧迫感、位置感覚、かゆみなど、さまざまな感覚として経験されることがあります。一方、幻肢痛はそのうち痛みを伴うものです。そのため、幻肢について「必ず痛い」と覚えるのは誤りです。

選択肢①|鏡を用いた治療法がある

①は適切です。鏡療法では、鏡に映った健側の四肢を失われた側の四肢であるかのように知覚させ、視覚情報と運動・感覚のずれを調整することを狙います。幻肢痛に対するリハビリテーションの一つとして研究・実践されています。

J-STAGEのレビューでは、幻肢痛の機序として感覚運動系の不一致が論じられ、鏡療法がその感覚―運動ループを整える手法として紹介されています。ただし、治療効果には個人差があり、鏡療法がすべての症例に確実に効くと考えるべきではありません。

選択肢②|痛みやかゆみを伴うことがある

②も適切です。幻肢では、痛みだけでなく、かゆみ、しびれ、圧迫感、位置感覚などさまざまな感覚が生じることがあります。幻肢痛はその一部であり、痛みを伴わない幻肢感覚もあります。

問題文の「ことがある」という表現も重要です。すべての幻肢に痛みやかゆみがあるという意味ではなく、そうした感覚を伴う場合がある、という幅のある表現になっています。

選択肢③|上下肢を失った直後に発症する

③が不適切です。幻肢や幻肢痛は早期に出現することが多いものの、時期は一様ではありません。術後しばらくしてから現れる場合もあります。したがって、「直後に発症する」と発症時期を一つに固定する説明は正確ではありません。

この選択肢は、現象そのものではなく時間経過の一般化が誤りのポイントです。

選択肢④|切断端より遊離したり縮小したりすることがある

④は適切です。幻肢の位置や大きさは固定されているとは限りません。失われた部位が切断端から離れて感じられたり、時間経過とともに短縮して切断端へ近づくように感じられたりすることがあります。

このような縮小はしばしば「telescoping(テレスコーピング)」と呼ばれます。試験では、幻肢が「元の四肢と全く同じ大きさ・位置で固定される」と覚えないことが大切です。

テレスコーピングのイメージ

例えば、前腕を切断した人が、最初は失った手が本来の位置にあるように感じていたものの、次第にその手が切断端に近づいてくるように感じる、といった変化です。幻肢は身体表象に関わる現象であり、その感じられ方が時間とともに変化することがあります。

幻肢痛と断端痛を区別する

幻肢痛は、失われた身体部位に痛みを感じるものです。一方、断端痛は、実際に残っている切断端に生じる痛みです。両者は併存することもありますが、同じものではありません。試験では「どこに痛みを感じているか」を確認すると区別しやすくなります。

幻肢の基礎概念は、第3回問47「知覚や意識―共感覚、幻覚、入眠時幻覚、幻肢」も合わせて読むと整理しやすくなります。

鏡療法をどう理解するか

鏡療法を「鏡を見れば痛みが消える治療」と単純化しないことが重要です。視覚的フィードバックを利用して、失われた四肢の運動イメージや感覚運動の不一致に働きかける方法と理解するとよいでしょう。研究では一定の効果が報告される一方、幻肢痛の病態は複雑で、治療反応にも個人差があります。

そのため、臨床では痛みの性質、断端の状態、神経障害性疼痛、生活への影響などを評価し、薬物療法やリハビリテーションなどを組み合わせて検討します。

「鏡療法がある」ことと「必ず効く」ことは別

この問題の①は「鏡を用いた治療法がある」と述べているだけで、効果を保証しているわけではありません。選択肢の強さを正確に読むことが重要です。研究で使われる治療法であることと、個々の患者に確実な効果があることは別の命題です。

試験での見分け方

幻肢に関する選択肢では、次の4点を整理すると解きやすくなります。幻肢は痛みを伴うとは限らない、幻肢痛は失われた部位に感じる痛み、鏡療法という治療法がある、発症時期や位置・大きさには幅がある、という点です。

今回の③は「直後に発症する」と時期を固定しており、そこが誤りです。

実務・臨床上の注意

切断後の痛みは、幻肢痛だけでなく断端痛や神経障害性疼痛など複数の要因が関わり得ます。痛みの部位、性質、発症時期、持続時間、誘発因子、生活への影響などを確認し、必要に応じて医師やリハビリテーション専門職と連携します。

本記事は試験問題の解説であり、個別の痛みの診断や治療選択を目的とするものではありません。

関連知識|幻肢感覚・幻肢痛・断端痛

切断後の感覚を整理するときは、少なくとも「幻肢感覚」「幻肢痛」「断端痛」を分けて考えると理解しやすくなります。幻肢感覚は、失われた身体部位の存在や位置、動き、温度、かゆみなどを感じる現象です。幻肢痛は、その失われた部位に痛みを感じる状態です。断端痛は、実際に残っている切断端に感じる痛みです。

これらは排他的ではなく、同じ人に複数みられることがあります。そのため、「切断後に痛い=すべて幻肢痛」と考えるのは誤りです。臨床では、痛みを感じる場所、痛みの性質、持続時間、誘発因子、断端の皮膚・神経・装具の状態などを確認して区別していきます。

関連知識|幻肢を身体表象から考える

幻肢は、身体が物理的に失われた後も、その部位に関する脳内の身体表象がすぐには消えないことと関係すると考えられています。鏡療法が注目されるのも、視覚情報を用いて感覚と運動の不一致に働きかけるという考え方が背景にあるためです。

ただし、幻肢痛の機序は一つの説明だけで完結するものではありません。末梢神経、脊髄、中枢神経、感覚運動系、心理社会的要因など複数の要因が関与すると考えられています。試験では機序を単純化しすぎず、「鏡療法がある」「感覚運動系の不一致が一つの説明としてある」程度に整理するのが安全です。

発症時期をどう覚えるか

③の誤りを確実に見抜くには、「幻肢は直後だけではない」と覚えるのが最も実用的です。術後早期に生じることは多いものの、遅れて出現する人もいます。また、時間とともに感覚の頻度や強さが変化することもあります。したがって、発症時期や経過を一律に固定する表現には注意が必要です。

こうした時間経過の幅は、幻肢に限らず臨床問題全般で重要です。「典型的に多い」と「必ずそうなる」は別物であり、試験ではこの差が誤答選択肢に利用されます。

誤答しやすいパターン

①の鏡療法を知らないと、「鏡で治療するのは特殊すぎる」と考えて誤答しやすくなります。しかし鏡療法は幻肢痛に対してよく知られた介入です。逆に③は一見もっともらしく、「切断した直後に感じるもの」と直感的に思いやすいため、知識が曖昧だと見逃しやすい選択肢です。

この問題では、珍しそうな選択肢を疑うのではなく、各選択肢がどの程度強い断定をしているかを確認することが重要です。

関連知識|幻肢の経過には個人差がある

幻肢感覚や幻肢痛の経過は人によって異なります。術後早期から強く感じる人もいれば、時間がたってから出現する人、次第に頻度が減る人、長期間続く人もいます。痛みの強さや感覚の質も一定ではなく、日によって変動することがあります。

この個人差を理解しておくと、③の「直後に発症する」という断定がなぜ不適切なのかがさらに明確になります。典型的な経過を覚えるだけでなく、例外や幅がある現象では、時間軸を固定する選択肢に注意することが重要です。

まとめ

正答は③ 上下肢を失った直後に発症するです。幻肢・幻肢痛は早期に現れることが多いものの、発症時期は直後に限定されません。①鏡療法、②痛みやかゆみ、④位置や大きさの変化はいずれも幻肢の理解に必要な知識です。

参考資料

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