公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問73|Hollandの六角形モデルとRIASEC

第5回公認心理師試験 午前問73 Hollandの六角形モデルとRIASECの解説図 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問73は、大学生が自分の興味や適性を見直し、教師志望から技術職へ進路を考え直した事例をもとに、職業興味と職業環境の適合を説明するキャリア理論を問う問題です。正答は ④ J. L. Hollandの六角形モデル です。

この問題の中心は、

  • 人に教える・交流する活動への興味が低い
  • 道具や機械を操作する活動への興味が高い
  • その自己理解に基づいて技術職を考え始めた

という点です。

Hollandは、人の職業興味と職業環境を6類型、いわゆるRIASECで整理し、人と環境の適合が職業選択や満足と関係すると考えました。

第5回公認心理師試験 午前問73 Hollandの六角形モデルとRIASECの解説図

問題

問題の要旨: 21歳の理工系大学生Aは、中学校理科教師を目指していました。しかしアルバイト経験や友人・先輩との話し合いを通じて、人と交流したり人に教えたりする活動より、道具や機械を操作する活動への興味が強いことに気づき、技術職への進路変更を考えるようになりました。

Aの興味・適性と進路との関係を説明する理論として、最も適切なものを選びます。

  1. D. E. Superのライフ・キャリア・レインボー
  2. E. H. Scheinの3つのサイクル
  3. J. D. Krumboltzの計画された偶発性
  4. J. L. Hollandの六角形モデル
  5. N. K. Schlossbergのトランジション

正答は ④ J. L. Hollandの六角形モデル です。

正答は④|Hollandの六角形モデル

Hollandの職業選択理論では、人の職業興味やパーソナリティと、職業環境の特徴を6つのタイプで整理します。

その6類型が、

R・I・A・S・E・C

です。

それぞれ、

  • R:Realistic
  • I:Investigative
  • A:Artistic
  • S:Social
  • E:Enterprising
  • C:Conventional

を表します。

この6タイプを六角形状に並べ、互いの類似性や距離を表現したものがHollandの六角形モデルです。

RIASECの6タイプ

R|Realistic:現実的

道具、機械、物、身体を使う活動を好む傾向です。

例:

  • 機械を操作する
  • 修理する
  • ものを作る
  • 技術的な作業を行う
  • 屋外で作業する

本問のAが「道具や機械を操作する活動への興味が強い」と気づいた点は、Realisticの特徴と対応します。

I|Investigative:研究的

分析、研究、探究、問題解決を好む傾向です。

例:

  • 科学的に調べる
  • データを分析する
  • 仮説を立てる
  • 複雑な問題を考える

理工系の研究職などと関連しやすいタイプです。

A|Artistic:芸術的

創造、表現、自由度の高い活動を好む傾向です。

例:

  • 文章を書く
  • 絵を描く
  • 音楽を作る
  • デザインする
  • 新しい表現を生み出す

S|Social:社会的

人を援助したり、教えたり、支えたりする活動を好む傾向です。

例:

  • 教える
  • 相談に乗る
  • 援助する
  • 対人サービスを行う

教師はSocialの要素が比較的強い職業として捉えられます。

本問ではAが「人に教えることへの興味が低い」と気づいているため、教師という環境との適合を見直しています。

E|Enterprising:企業的

人を説得したり、組織を動かしたり、目標達成へ働きかけたりする活動を好む傾向です。

例:

  • 営業
  • 交渉
  • リーダーシップ
  • 経営
  • 人を動かす

C|Conventional:慣習的

決められた手続き、情報整理、正確さ、秩序を重視する活動を好む傾向です。

例:

  • データ入力
  • 会計
  • 書類管理
  • 事務
  • 正確な手続き

本問の決め手はRとS

Aの事例では、2つのタイプの対比が非常に明確です。

人に教える・交流する → Social〈S〉

に対する興味が低く、

道具・機械を扱う → Realistic〈R〉

への興味が強いと気づいています。

そのため、

教師という職業環境より、技術職の方が自分の興味に合っている可能性

を考えるようになります。

これはHollandの人-環境適合理論を典型的に表した事例です。

人と環境の適合〈congruence〉

Holland理論では、自分の興味・特性と職業環境が適合していることをcongruence〈一致度・適合性〉と考えます。

たとえばRealistic傾向が強い人が、

  • 機械
  • 技術
  • 具体的な物
  • 身体活動

を扱う職業環境へ入ると、適合度が高くなる可能性があります。

反対に、Social傾向が低い人が、対人援助や教育を中心とする職業へ進むと、活動そのものに興味を感じにくい場合があります。

ただし、これは「タイプが違えば絶対にその仕事に向かない」という意味ではありません。

RIASECは、本人が職業を考えるための一つの枠組みです。

六角形にする意味

RIASECは単なる6分類ではありません。

六角形上で隣り合うタイプほど、比較的共通性が高いと考えます。

たとえば、

  • RとI
  • IとA
  • AとS
  • SとE
  • EとC
  • CとR

は隣接します。

一方、六角形の反対側に位置するタイプは、特徴の違いが比較的大きいと考えます。

この配置によって、単に「何タイプか」だけでなく、複数の興味の組合せや整合性を捉えられます。

Holland Code

実際のキャリア支援では、一つのタイプだけでなく、得点の高い上位2〜3タイプを組み合わせてHolland Codeとして表すことがあります。

たとえば、

RIA

なら、

  • Realistic
  • Investigative
  • Artistic

の順に興味が高いという意味です。

O*NET Interest Profilerなど、HollandのRIASEC構造に基づく職業興味検査もあります。

① Superのライフ・キャリア・レインボーが違う理由

D. E. Superは、キャリアを生涯発達の視点から考えました。

ライフ・キャリア・レインボーでは、

  • 子ども
  • 学生
  • 職業人
  • 家庭人
  • 市民
  • 余暇人

など、人生で担う複数の役割と、その役割が生涯の時間軸上でどのように変化するかを整理します。

本問は「人生役割の変化」ではなく、本人の興味と職業環境の適合が中心です。

したがって①ではありません。

② Scheinの3つのサイクルが違う理由

E. H. Scheinは、組織内キャリアやキャリア・アンカーで知られています。

組織内のキャリア発達では、

  • 組織への加入
  • 社会化
  • キャリアの進展

など、個人と組織の関係を扱います。

本問のAはまだ大学生であり、組織内キャリアの進展を説明する問題ではありません。

したがって②ではありません。

③ Krumboltzの計画された偶発性が違う理由

J. D. Krumboltzの計画された偶発性理論〈Planned Happenstance Theory〉では、予期せぬ出来事をキャリアの機会へ変えることを重視します。

代表的なスキルとして、

  • 好奇心
  • 持続性
  • 柔軟性
  • 楽観性
  • リスクテイキング

などが挙げられます。

Aがアルバイト経験をきっかけに気づきを得た点だけを見ると③も魅力的です。

しかし本問が中心にしているのは、

「自分は人への教育より、道具や機械を扱う活動に興味がある」

という職業興味と、技術職との適合です。

したがってHollandが最も適切です。

⑤ Schlossbergのトランジションが違う理由

N. K. Schlossbergのトランジション理論は、人生の転機や変化への適応を扱います。

転機に適応するための資源を、

  • Situation
  • Self
  • Support
  • Strategies

の4Sで整理することが有名です。

本問では大きな転機への対処資源ではなく、職業興味と進路選択の適合が問われています。

したがって⑤ではありません。

「教師に向かない」と決める理論ではない

Holland理論を使うときに注意したいのは、

RIASECの結果だけで本人の職業可能性を狭めないこと

です。

たとえばSocialが高くなくても、

  • 教科そのものへの強い関心
  • 教育技術
  • 経験
  • 価値観
  • 労働条件
  • 職場文化

などによって、教師として十分に適応する人もいます。

キャリア支援ではRIASECを「決定」ではなく、自己理解と探索の材料として使います。

大学生の進路支援とのつながり

大学生のキャリア相談では、

  • 興味
  • 能力
  • 価値観
  • 性格
  • 経験
  • 希望する働き方
  • ライフスタイル

などを整理します。

本問のAは、アルバイトや友人との会話を通じて「自分は何を好むのか」を再評価しています。

これは、キャリア選択を一度決めた後でも、新しい経験によって自己理解が深まることを示しています。

第3回問99「キャリア教育」とつなげる

第3回午後問99では、小学校段階のキャリア発達が問われました。

キャリア教育の目的は、早期に職業を固定することではなく、

  • 自己理解
  • 他者理解
  • 役割理解
  • 将来と現在の学びをつなげる

力を育てることです。

今回の問73は、その後の青年期において、より具体的な職業興味と職業選択を整理する場面と考えられます。

第5回問49「学生相談」とつなげる

第5回午前問49では、学生相談が進路や学業を含む幅広い相談を扱うことが問われています。

Aのように、

「いま考えている職業が自分に合っているのか」

と迷うことは、大学生の重要な発達課題の一つです。

必要に応じて学生相談やキャリアセンターなどを活用し、自己理解と情報探索を進めます。

試験での見分け方

次のキーワードが出たらHollandを考えます。

  • 職業興味
  • 適性
  • 人と職業環境の適合
  • Realistic
  • Investigative
  • Artistic
  • Social
  • Enterprising
  • Conventional
  • RIASEC
  • 六角形

本問では、

機械・道具=Realistic
教育・対人援助=Social

の対比が決め手です。

まとめ

第5回公認心理師試験・午前問73の正答は ④ J. L. Hollandの六角形モデル です。

Hollandは、職業興味と職業環境をRIASECの6タイプで整理しました。

本問では、Aが、

人に教える活動より、道具や機械を扱う活動への興味が強い

と気づき、技術職を考えた点が重要です。

試験では、

Realistic・Investigative・Artistic・Social・Enterprising・Conventional

の6タイプを確実に覚えておきましょう。

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参考資料

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午前問題・正答
  • National Career Development Association|Holland’s Career Theory of Personality Types and Environments
  • ONET Resource Center|ONET Interest Profiler

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