公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問69|児童養護施設入所初期の支援と生活の一貫性

第5回公認心理師試験 午前問69 児童養護施設入所初期の支援と日課の一貫性の解説図 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問69は、ネグレクトが疑われる養育環境から児童養護施設へ入所した4歳児に対して、入所初期に何を優先して支援するかを問う事例問題です。正答は ⑤ 食事・就寝・入浴など、日課の一貫性が保たれるように工夫する です。

この問題では、発語の遅れ、低栄養、虫歯、衛生状態の悪化など、複数の支援課題が示されています。そのため、言語訓練、身辺自立訓練、プレイセラピーなども必要に見えます。

しかし、「入所初期」という時期が重要です。

子どもが新しい生活環境へ移った直後には、まず安全で安定し、予測可能な生活環境をつくることが優先されます。食事、睡眠、入浴などの日課が一定していることは、「次に何が起こるか分かる」という安心感につながり、生活の基盤を整えるうえで重要です。

問題

問題の要旨: 4歳男児Aは、精神障害のある母親のもとで十分な養育を受けられず、発語の乏しさ、低体重、虫歯、低栄養などがみられました。医療機関への一時保護委託を経て、児童養護施設へ入所することになりました。入所初期の支援として最も適切なものを選びます。

  1. リービングケアを開始する
  2. 発語を促すため言語聴覚療法を開始する
  3. プレイセラピーでトラウマ体験の表現を促す
  4. 歯磨き・整髪・衣類の着脱など身辺自立訓練を優先する
  5. 食事・就寝・入浴などの日課が一貫するよう工夫する

※公式問題の趣旨を保ちながら学習用に整理しています。正答は ⑤ です。

正答は⑤|日課の一貫性を保つ

児童養護施設へ入所した直後のAにとって、まず必要なのは生活環境の安定です。

厚生労働省の児童養護施設運営指針でも、児童養護施設は子どもに対して安定した生活環境を整えながら養育することが基本とされています。

本事例のAは、これまで、

  • 母親の体調によって養育状況が変化する
  • 十分な食事を得られないことがある
  • 衛生状態が悪い
  • 医療や生活管理が十分ではない
  • 自宅に閉じこもる生活が続く

など、生活の見通しを持ちにくい環境にいた可能性があります。

そのため、施設入所直後には、

  • 決まった時間に食事がある
  • 決まった時間に入浴できる
  • 就寝の流れがある程度一定している
  • 毎日の生活が予測できる
  • 大人が継続して世話をしてくれる

といった環境を整えることが重要です。

「入所初期」が最大のヒント

この問題は、選択肢そのものだけを見ると迷います。

発語が乏しいなら言語聴覚療法、トラウマが疑われるならプレイセラピー、身辺自立が不十分なら生活訓練も必要に見えます。

しかし、問われているのは、

「入所初期の支援方針」

です。

つまり、「将来的に必要な支援」ではなく、「まず何を優先するか」を判断します。

支援の優先順位としては、

  1. 安全を確保する
  2. 基本的な生活を安定させる
  3. 安心できる関係をつくる
  4. 子どもの発達・心理状態を評価する
  5. 必要に応じて個別の専門支援へつなぐ

という流れで考えると分かりやすくなります。

児童養護施設の役割

児童養護施設は、保護者のいない子どもや、家庭での養育が適当でない子どもなどを入所させ、養護するとともに、自立支援などを行う施設です。

施設での支援は、単に住居を提供するだけではありません。

子どもに対して、

  • 安全な生活環境
  • 基本的生活習慣
  • 学習機会
  • 対人関係
  • 心理的支援
  • 家庭環境の調整
  • 自立支援

などを総合的に提供します。

本問では、その中でも安定した生活環境が入所初期の中心になります。

ネグレクトが疑われる事例で見るポイント

本事例では、

  • 低体重
  • 臀部の皮膚トラブル
  • 菓子だけで過ごすことがある
  • 多数の虫歯
  • 低栄養
  • 発語の乏しさ
  • 親子で閉じこもる

といった情報があります。

これらは、必要な食事、衛生、医療、発達を支える関わりが十分に提供されていなかった可能性を示します。

ここで重要なのは、「母親に精神障害があるから虐待」と判断しないことです。

親の精神障害そのものが虐待を意味するわけではありません。

試験では、実際に子どもの基本的な養育ニーズが満たされていたかどうかを読みます。

安定した日課が重要な理由

子どもにとって、毎日の生活が予測できることは大切です。

「いつ食事が出るか分からない」「いつ大人が世話をしてくれるか分からない」という環境では、安心して生活しにくくなります。

一方、

  • 朝起きる
  • 食事をとる
  • 遊ぶ
  • 入浴する
  • 就寝する

といった流れがある程度一定していると、子どもは次に起こることを予測しやすくなります。

特に、新しい施設へ移った直後は、環境も人間関係も大きく変化しています。

そのため、過度に多くの訓練や治療を一度に導入するより、まず生活を安定させることが重要です。

① リービングケアが違う理由

リービングケアは、児童養護施設などから退所し、社会生活へ移行する時期の支援です。

たとえば、

  • 住居
  • 就労
  • 進学
  • 金銭管理
  • 社会資源の利用
  • 退所後の相談先

などを準備します。

本事例のAは4歳であり、施設へ「入所する」段階です。

したがって、退所を前提とするリービングケアは時期が合いません。

入所初期 ↔ 退所準備

という時間軸の違いで判断できます。

② 言語聴覚療法をすぐ開始するのが最優先ではない理由

Aには発語の乏しさがあります。

そのため、発達評価や必要に応じた言語支援を検討すること自体は重要です。

しかし、発語が乏しい背景には、

  • 発達特性
  • 聴力
  • 養育環境
  • 栄養状態
  • 対人交流の少なさ
  • 心理的ストレス

など複数の要因が考えられます。

したがって、入所直後から「発語を増やす」ことだけを最優先にするのではなく、まず安定した生活と関係性をつくり、その後に必要な評価と支援を行います。

③ トラウマ体験の表現を促すのが最優先ではない理由

Aは不適切な養育環境を経験していた可能性があり、心理的なケアが必要になることも考えられます。

しかし、入所直後にプレイセラピーでトラウマ体験の表出を積極的に促すことが、常に最初の支援になるわけではありません。

まず必要なのは、

  • 現在の安全
  • 生活の安定
  • 支援者との関係
  • 子どもの状態の把握

です。

心理療法を行うとしても、子どもの状態や発達段階、治療目標を評価したうえで検討します。

「つらい体験があるかもしれない → すぐに語らせる」という発想は避けます。

④ 身辺自立訓練を最優先にしない理由

歯磨き、整髪、着替えなどの生活習慣は重要です。

しかし、4歳児は発達段階上、大人の援助を受けながら生活習慣を身につけていく時期です。

さらにAは、これまで十分な養育や生活習慣形成の機会がなかった可能性があります。

その状態で「自分でできるようにすること」を第一目標にすると、子どもに過度な要求をする可能性があります。

まず大人が適切にケアを提供し、その中で少しずつ基本的生活習慣を形成していくことが重要です。

「訓練」より先に「養育」

本問を理解するための重要な視点です。

施設に入所した子どもに対して、支援者は専門的な訓練を提供するだけではありません。

まず、

  • 食べられる
  • 眠れる
  • 清潔に過ごせる
  • 安心できる大人がいる
  • 毎日がある程度予測できる

という、基本的な養育環境を提供することが必要です。

特に不適切な養育環境を経験してきた子どもでは、「当たり前の日常を安定して繰り返すこと」自体が重要な支援になります。

生活の一貫性と関係の一貫性

本問の選択肢では日課が問われていますが、施設支援では人との関係の安定も重要です。

可能な範囲で、

  • 子どもの担当者が分かる
  • 困ったときに頼れる大人がいる
  • 大人の対応が極端に変わらない
  • 約束したことが守られる

といった経験も、子どもの安心につながります。

生活と関係の両面で「予測可能性」を高めることが、入所初期の支援では重要です。

児童相談所との連携

Aは一時保護を経て児童養護施設へ入所しています。

そのため、施設だけで支援を完結させるのではなく、

  • 児童相談所
  • 医療機関
  • 保育・教育機関
  • 家族
  • 必要に応じた発達支援機関

などと連携しながら支援方針を考えます。

Aの発語、栄養、歯科、心理面などは、生活が安定してきた段階で必要な専門評価につなげていきます。

第6回問3「児童相談所の社会診断」とつなげる

第6回午前問3では、児童相談所で家庭環境や社会資源などを整理する「社会診断」を児童福祉司が担うことが問われました。

今回の問69は、その先の施設入所後の生活支援です。

つまり、

  1. 子どもと家庭の状況を把握する
  2. 必要な保護・措置を行う
  3. 安全で安定した生活環境をつくる
  4. 発達・心理・家族支援へつなぐ

という流れで理解できます。

試験での見分け方

本問では次の3点に注目します。

1. 年齢

Aは4歳です。

自立を急がせる段階ではありません。

2. 養育歴

基本的な生活・栄養・衛生が十分でなかった可能性があります。

まず養育環境を整える必要があります。

3. 入所初期

専門治療や訓練を急ぐ前に、安全・安定・予測可能な生活をつくります。

したがって⑤が最も適切です。

まとめ

第5回公認心理師試験・午前問69の正答は ⑤ 食事や就寝、入浴など、日課の一貫性が保たれるように工夫する です。

Aには発達、栄養、歯科、心理など複数の支援課題があります。しかし、入所初期に最優先するのは、それぞれの課題を個別訓練で修正することではありません。

まず、

安全で安定し、予測可能な生活をつくる

ことが重要です。

試験では、

入所初期 → 生活の安定 → 日課の一貫性

と整理しておきましょう。

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参考資料

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午前問題・正答
  • 厚生労働省|児童養護施設運営指針
  • 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準

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