公認理師資格試験 過去問解説 問10 トランスアクショナルモデル

公認理師資格試験 過去問解説 問10 トランスアクショナルモデル

第5回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問10 R. S. Lazarus と S. Folkman によるトランスアクショナルモデル 〈transactional model〉の説明として、適切なものを 1 つ選べ。

① パニック発作は、身体感覚への破局的な解釈によって生じる。

② 抑うつは、自己・世界・未来に対する否定的な認知によって生じる。

③ 無気力は、自らの行動と結果に対する非随伴性の認知によって生じる。

④ ストレス反応は、ストレッサーに対する認知的評価とコーピングによって決定される。

⑤ 回避反応は、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけの原理によって形成される。

出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ④ ストレス反応は、ストレッサーに対する認知的評価とコーピングによって決定される

トランスアクショナルモデルとは

トランスアクショナルモデル transactional model は、Lazarus & Folkman(1984)によって提唱されたストレス過程について説明する理論です。

トランスアクショナルモデルは、ストレス過程を説明するモデルであり、ストレスの原因(ストレッサー)、ストレッサーに対する個人の意味づけ(認知的評価)、ストレス対処(コーピング)、ストレス反応という一連のプロセスを示している。

出典:煙山(2013). スポーツ選手用ストレス反応尺度の開発. 岐阜正徳学園大学紀要, 52, 31-38.

簡単に説明すると、

ストレッサー(原因)→ストレス反応(結果)

という二者関係のみで理解するのではなく、ストレッサーに対する認知的評価コーピングといった個人の要因もストレス反応に関係しているということになります。

これは「ストレスの個人差」を説明するためにとても有用な理論といえます。

まず何か問題が生じたとき(ストレッサー)に、その問題の重要性やコントロールできるかどうかを評価(認知的評価)します。重要性が高く、コントロールできない状況ほどストレスが高くなります。

そして、ストレスに対して何らかの対処をとります(コーピング)。その対処によってストレスがうまく緩和できないとなると大きなストレスになります。

この過程をトランスアクショナルモデルでは以下のように説明します。

  • 1次評価:問題に対する重要度(無関係、無害-肯定、ストレス)などを認知的に評価する
  • 2次評価:ストレスと評価された問題に対して対処法や行動の選択肢を検討する(コーピング)

つまりストレスを減らすためには、

  • 問題の評価の仕方を変える(価値観・考え方を修正する)
  • 対処能力を上げる(コーピングの種類を増やす)

といったことが考えられるわけです。

以上のことから、選択肢④「ストレス反応は、ストレッサーに対する認知的評価とコーピングによって決定される」が最も適切といえます。

まとめ

  • トランスアクショナルモデル:Lazarus & Folkman(1984)によって提唱されたストレス過程について説明する理論で、ストレッサーとストレス反応といった二者間の関係ではなく、認知的評価やコーピングなど一連の過程によってストレス反応が形成されていくというもの。
  • 問題に対して認知的な評価を行うことを1次評価、1次評価でストレスと判断された内容に対して対処方法や行動の選択肢を検討することを2次評価という。