第4回公認心理師試験・午後問85は、同じ確率・同じ事実でも、表現の仕方によってリスクの感じ方や意思決定が変わる現象を問う問題です。正答は ④ フレーミング効果 です。
「10%が死亡する」と「90%が生存する」は、数理的には同じ情報を表しています。それでも、前者の方が危険に感じられやすいことがあります。このように、客観的な内容が同じでも、情報をどのような枠組み〈frame〉で提示するかによって判断が変わる現象をフレーミング効果といいます。
公認心理師試験では、フレーミング効果だけでなく、アンカリング、確証バイアス、利用可能性ヒューリスティックなど、意思決定や認知バイアスの類似概念が並ぶことがあります。重要なのは、何が判断を偏らせているのかを見分けることです。
問題
問題の要旨: ある病気について、「10%が死亡する」と説明された場合の方が、「90%が生存する」と説明された場合よりもリスクが高く感じられる現象を表す用語を選びます。
- 連言錯誤
- 確証バイアス
- アンカリング効果
- フレーミング効果
- 利用可能性ヒューリスティック
※公式問題の趣旨を保ちながら学習用に整理しています。正答は ④ フレーミング効果 です。
正答は④|フレーミング効果
フレーミング効果〈framing effect〉とは、内容そのものは同じでも、その表現・提示方法によって判断や選択が変化する現象です。
本問では、
- 「10%が死亡する」
- 「90%が生存する」
という2つの表現が使われています。
数学的にはどちらも同じ状況です。しかし、「死亡」という損失側の表現と、「生存」という利得側の表現では、受け手の印象が変わることがあります。
つまり、情報の中身ではなく、どの側面を強調して提示したかが判断に影響しているため、フレーミング効果が正答です。
「フレーム」とは何か
フレーム〈frame〉とは、情報を見るときの「枠組み」や「切り取り方」です。
たとえば同じ治療成績でも、
- 90%が成功する
- 10%が失敗する
と表現できます。
また、食品表示でも、
- 脂肪分10%
- 90%脂肪分なし
と表現できます。
客観的な数値が同じでも、人は必ずしも完全に同じ判断をするとは限りません。
このような判断の変化がフレーミング効果です。
ポジティブ・フレームとネガティブ・フレーム
フレーミング効果は、利得を強調する表現と損失を強調する表現の違いとして整理すると分かりやすくなります。
ポジティブ・フレーム
得られるもの、成功、生存などを強調します。
例:
- 90%が生存する
- 80%が成功する
- 95%が満足している
ネガティブ・フレーム
失われるもの、失敗、死亡などを強調します。
例:
- 10%が死亡する
- 20%が失敗する
- 5%が不満を感じている
どちらも数理的に同じ情報であっても、後者の方が危険や損失を強く意識させることがあります。
プロスペクト理論との関係
フレーミング効果は、TverskyとKahnemanによる意思決定研究と深く関係します。
プロスペクト理論では、人は客観的な最終状態だけでなく、ある基準点から見た「利得」や「損失」として選択肢を評価すると考えます。
また、同じ大きさであれば、利益を得る喜びよりも損失の痛みを強く感じやすいという損失回避が知られています。
そのため、同じ事実でも「損失として表現された情報」が意思決定へ強く影響することがあります。
ただし、
フレーミング効果=損失回避そのもの
ではありません。
フレーミング効果は「提示の仕方によって判断が変わる現象」、損失回避は「損失を利益より重く評価しやすい傾向」と整理します。
① 連言錯誤が違う理由
連言錯誤〈conjunction fallacy〉は、2つの出来事が同時に起きる確率を、片方だけが起きる確率より高いと判断してしまう誤りです。
確率論では、
AかつBが起きる確率は、Aだけが起きる確率を超えません。
しかし、物語としてもっともらしい説明が提示されると、「Aだけ」より「AかつB」の方が起こりそうだと感じる場合があります。
本問では確率の包含関係ではなく、同じ情報の表現方法が判断へ影響しているため、連言錯誤ではありません。
② 確証バイアスが違う理由
確証バイアス〈confirmation bias〉は、自分がすでに持っている考えや仮説を支持する情報を集めやすく、それに反する情報を軽視しやすい傾向です。
たとえば、
「この方法は効果があるはずだ」
と考えている人が、うまくいった事例ばかりを注目し、失敗例を見落とす場合です。
本問では既存の信念を支持する情報を選択しているわけではありません。
同じ数値情報を異なる言葉で提示したことが問題なので、フレーミング効果です。
③ アンカリング効果が違う理由
アンカリング効果〈anchoring effect〉は、最初に示された数字や情報が「錨〈anchor〉」のように基準となり、その後の判断が引っ張られる現象です。
たとえば、
「この商品の通常価格は10万円です」
と最初に提示された後に「今だけ6万円」と示されると、最初の10万円が判断基準になり、6万円を安く感じやすくなることがあります。
本問では最初の数値に後の判断が引っ張られているのではなく、同一の確率情報を死亡/生存のどちらで表現するかが問題です。
⑤ 利用可能性ヒューリスティックが違う理由
利用可能性ヒューリスティック〈availability heuristic〉は、思い出しやすい事例や印象の強い出来事を手掛かりに、出来事の頻度や確率を判断する方法です。
たとえば、航空事故のニュースを繰り返し見た直後に、実際の統計以上に飛行機事故の可能性を高く感じる場合などです。
本問では、記憶から思い出しやすい出来事を使って判断しているわけではありません。
情報の提示方法が判断に影響しているため④です。
5つの概念を一気に区別する
フレーミング効果
同じ情報でも表現の仕方で判断が変わる
キーワード:
- 生存率/死亡率
- 成功率/失敗率
- 利得/損失の表現
アンカリング効果
最初の数字・情報が判断基準になる
キーワード:
- 最初に提示された値
- 基準点
- 値引き前価格
確証バイアス
自分の考えを支持する情報を重視する
キーワード:
- 仮説
- 先入観
- 反証情報を軽視
利用可能性ヒューリスティック
思い出しやすさで頻度・確率を判断する
キーワード:
- 印象的なニュース
- 最近の出来事
- 思い出しやすい事例
連言錯誤
AかつBを、A単独より起こりやすいと判断する
キーワード:
- 「かつ」
- ストーリーのもっともらしさ
- 確率の包含関係
医療・心理支援でフレーミングが重要な理由
心理職や医療職がリスクを説明するとき、情報の提示方法は意思決定へ影響し得ます。
たとえば、
- 治療を受けた場合の改善率
- 副作用の発生率
- 再発率
- 検査で異常が見つかる確率
などを説明するとき、ポジティブな表現だけ、あるいはネガティブな表現だけを強調すると、本人の判断に偏りを生じさせる可能性があります。
そのため、支援では単に「数字を示したから中立」と考えるのではなく、その数字をどのような言葉で提示したかにも注意する必要があります。
これは、本人の意思決定を操作するという意味ではなく、より理解しやすく偏りの少ない説明を目指すということです。
インフォームド・コンセントとのつながり
リスク説明では、
- 利益
- 不利益
- 代替案
- 不確実性
- 本人の価値観
などを含めて説明する必要があります。
フレーミング効果を理解していると、「同じ確率でも表現で印象が変わる」ことを意識できます。
したがって、心理職にとっても、意思決定支援や説明場面に関係する基礎知識です。
第3回問14とのつながり
第3回問14では、自己中心性バイアスに該当する現象を選ぶ問題の選択肢に、フレーミング効果が登場しました。
そこでも、
客観的状況が同じでも、心的な構成・提示の仕方によって判断が変化する
という考え方が重要でした。
第4回問85では、この概念そのものが正答として問われています。
複数回の試験に登場しているため、バイアス・ヒューリスティック領域の頻出概念として整理しておきましょう。
試験での見分け方
本問では、次の2点だけでも正答できます。
- 数字の中身は同じ
- 表現だけが「死亡」と「生存」で違う
この組合せを見たら、
同じ内容+表現の違い → フレーミング効果
と判断します。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問85の正答は ④ フレーミング効果 です。
「10%が死亡する」と「90%が生存する」は数理的には同じ情報ですが、表現の仕方によってリスクの感じ方が変わることがあります。
試験では、
表現の枠組みで判断が変わる → フレーミング効果
と覚えます。
アンカリング、確証バイアス、利用可能性ヒューリスティック、連言錯誤とは、「何が判断を偏らせているか」という軸で区別しましょう。
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参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- Tversky A, Kahneman D. The framing of decisions and the psychology of choice.


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