公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問47|職場の自殺ポストベンション

公認心理師過去問第5回47 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問47は、職場で自殺が起きた後のポストベンションについて、適切な支援と不適切な情報共有を区別できるかを問う問題です。正答は③ 自殺の原因になったと推測される人間関係を含め詳細まで公にするです。

ポストベンションでは、遺された人や関係者の心理的負担を軽減し、必要な支援へつなぎ、二次的な危機を防ぐことが重視されます。一方で、自殺の原因を単純化したり、推測を事実のように扱ったり、個人的な情報を詳細に公表したりすることは避ける必要があります。

実際の問題文

問47 職場における自殺のポストベンションとして、不適切なものを1つ選べ。

① 必要に応じて専門職員による個別相談の機会を与える。
② 集団で行う場合には、関係者の反応が把握できる人数で実施する。
③ 自殺の原因になったと推測される人間関係を含め詳細まで公にする。
④ 強い心理的ショックを経験した直後の一般的な心身の反応について説明する。

問題文の読み解き

この問題は「不適切なもの」を選ぶ点に注意が必要です。①、②、④は、関係者の反応を把握し、必要な相談につなぎ、強いショック後に起こり得る一般的な反応を説明するという、ポストベンションの基本的な方向性に合致します。

一方、③は、自殺の原因を「推測」し、さらに人間関係を含め詳細まで「公にする」としています。自殺は通常、単一の原因で説明できるものではありません。

正答:③ 詳細な人間関係まで公にする

正答は③です。厚生労働省の職場における自殺後対応に関する資料では、遺された職員への心理的影響を軽減し、必要な支援を行うことが重視されています。

ポストベンションとは何か

ポストベンションは、自殺が生じた後に、遺族、同僚、友人、目撃者、関係者などに対して行う支援です。強い心理的ショックを受けた人の反応を理解し、必要な相談先につなぎ、孤立や二次的な危機を防ぐことを目的とします。

強いショックの後にみられやすい反応

  • 現実感が薄い、ぼんやりする
  • 強い悲しみ、怒り、罪悪感
  • 睡眠の乱れ、食欲低下
  • 動悸、疲労、頭痛などの身体症状
  • 仕事への集中困難

個別相談の機会を確保する理由

同じ出来事を経験しても、影響の大きさは人によって異なります。故人との関係が近かった人、発見者、直前に強い関わりがあった人、自殺念慮や精神疾患の既往がある人などでは、より丁寧なフォローが必要になる場合があります。

集団で行う場合のポイント

②も適切です。集団で情報提供や心理教育を行う場合、参加者一人ひとりの反応が把握できないほど大規模にすると、強い反応を示している人や個別相談が必要な人を見落としやすくなります。

「心理的デブリーフィング」を一律に強制しない

大きな出来事の後に「全員で詳細に体験を語り合えばよい」と単純化するのは適切ではありません。本人が話したくない内容まで強制的に語らせることや、同じ形式の介入を全員へ機械的に行うことは避けます。

各選択肢の考え方

① 個別相談の機会

適切です。反応の強さや必要な支援は人によって異なるため、個別相談につなげられる体制が重要です。

② 反応を把握できる人数

適切です。集団対応の中でも反応の強い人を把握し、必要に応じて個別支援へつなげます。

③ 詳細な人間関係まで公にする

不適切です。推測に基づく原因説明や個人情報の詳細な公開は、プライバシー侵害、噂、責任追及、二次的な傷つきにつながる可能性があります。

④ 一般的な心身反応を説明する

適切です。心理教育によって、本人が自分の反応を理解し、必要な支援を求めやすくなります。

関連知識:自殺予防とポストベンションは役割が異なる

Ig Knowledgeでは、第3回問4「自殺のポストベンション」で基本的な考え方を確認できます。また、第3回問3「自殺予防や自殺のリスク評価」では、発生前のリスク評価や対応を整理しています。

試験での見分け方

  • 共有しているのは確認された事実か、それとも推測か
  • 本人・遺族・関係者のプライバシーが守られているか
  • 情報共有が支援につながるものか、責任追及や噂の拡大につながるものか

情報共有は「必要最小限」が原則

職場で自殺が起きた後は、事実確認と情報共有が必要になる場面があります。しかし、共有する情報は支援や業務継続のために必要な範囲に限定し、故人や遺族、関係者のプライバシーへ配慮します。「なぜ亡くなったのか」を周囲が知りたくなることは自然ですが、推測を含む説明を広げることは支援にはつながりません。

特に特定の上司・同僚・家族との関係を「原因」として公表すると、根拠の乏しい責任追及や対立を生みやすくなります。自殺の背景は複合的であることを前提に、事実と推測を分ける必要があります。

ハイリスク者をどう見つけるか

ポストベンションでは、全員へ同じ支援を行うより、影響の強い人を把握して個別に支えることが重要です。故人との関係が非常に近かった人、発見者、直前まで対応していた人、過去に自殺企図や強い抑うつ状態がある人、反応が極端に強い人などは、より丁寧な確認が必要になる場合があります。

ただし、反応が弱く見える人が安全とは限りません。欠勤、急な飲酒増加、不眠、強い罪悪感、希死念慮などがないか、時間を置いてフォローすることも重要です。

管理職と専門職の役割

職場のポストベンションでは、管理職、人事労務、産業保健スタッフ、心理職、外部医療機関などが役割分担します。管理職は業務上必要な情報整理や職場環境への対応を行い、専門職は心理反応の評価や相談、必要な医療への紹介などを担います。誰がどの情報を扱うかを整理することも、混乱を減らすうえで重要です。

時間経過に沿った支援

自殺直後は安全確保、事実確認、必要な情報提供が中心になります。その後、数日から数週間の経過で、悲嘆、不眠、抑うつ、罪悪感などが続く人には個別支援を検討します。さらに時間が経ってから反応が強くなることもあるため、短期対応だけで終わらせず、必要に応じて再評価します。

試験での最終判断ポイント

本問では「推測」「人間関係」「詳細まで公にする」という表現が重なっている③が明確に不適切です。ポストベンションでは、支援に必要な情報は扱いますが、推測を事実化したり、必要以上に詳細な個人情報を広げたりしないことが基本です。

遺族への配慮と職場支援を両立する

職場では、同僚への支援と遺族への配慮を同時に考える必要があります。職員の不安を和らげるために一定の情報共有は必要ですが、遺族が望んでいない情報や、確認できていない私的事情まで共有する必要はありません。

また、故人について語る場では、肯定的な思い出だけでなく、怒りや混乱など複雑な反応が出ることもあります。支援者は「こう感じるべき」と決めつけず、多様な反応があり得ることを前提に対応します。

支援を終えるタイミング

ポストベンションは、一定期間が過ぎれば一律に終了するものではありません。反応が落ち着いた人には通常業務への復帰を支えつつ、症状が長引く人や新たに強い反応が出た人には、産業保健スタッフや医療機関などへの継続支援を検討します。職場全体としても、出来事を契機に過重労働やハラスメント、相談体制などの課題がないかを点検することが重要です。

まとめ

第5回午前問47の正答はです。職場の自殺後対応では、個別相談、適切な規模での集団対応、心理教育などが重要ですが、自殺原因を推測で単純化し、人間関係を含む詳細を公にすることは避けます。

参考文献

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