第4回公認心理師試験・午後問82は、実験計画を読んで「被験者間要因」と「被験者内要因」を見分け、適切な分析法を選ぶ問題です。正答は ① 2要因混合分散分析 です。
この問題は、分散分析の名称を暗記するだけではなく、「誰がどの条件を経験しているか」を整理できるかがポイントです。観察者の有無は参加者ごとに異なる一方、単純課題と複雑課題は同じ参加者が両方経験します。したがって、被験者間要因と被験者内要因が1つずつ含まれる「混合計画」になります。
問題
問題の要旨:観察者の有無が作業に与える影響を調べるため、参加者を「観察者あり群」と「観察者なし群」に分け、各参加者には単純課題と複雑課題の両方を行わせました。この結果を分析する方法として最も適切なものを選びます。
- 2要因混合分散分析
- 2要因被験者間分散分析
- 2要因被験者内分散分析
- 複数個の1要因被験者間分散分析
- 複数個の対応のある平均値のt検定
※公式問題の趣旨をもとに要約しています。
問題の要点
実験では、参加者を「作業中に観察者がいる群」と「観察者がいない群」に分けています。そのうえで、それぞれの参加者が単純課題と複雑課題の両方を行います。
ここで整理すべきなのは次の2点です。
- 観察者の有無:参加者ごとにどちらか一方の群へ所属する
- 課題の種類:同じ参加者が単純課題・複雑課題の両方を経験する
つまり、「観察者の有無」は被験者間要因、「課題の種類」は被験者内要因です。
正答は①|2要因混合分散分析
2要因混合分散分析は、複数の要因のうち、被験者間要因と被験者内要因が混在している実験計画で用いられます。
本問では、
- 要因A:観察者の有無(あり/なし)
- 要因B:課題の種類(単純/複雑)
という2つの要因があります。
要因Aでは、同じ参加者が「観察者あり」と「観察者なし」の両方を経験するわけではありません。参加者はどちらか一方の群に所属するため、これは被験者間要因です。
一方、要因Bでは、同じ参加者が単純課題と複雑課題の双方を行います。したがって、これは被験者内要因です。
このように、被験者間要因と被験者内要因が1つずつ含まれるため、2要因混合分散分析が適切です。
「被験者間」と「被験者内」の見分け方
統計問題で迷ったときは、「同じ人が複数条件を経験しているか」を先に確認します。
被験者間要因
被験者間要因では、条件ごとに参加者が異なります。
たとえば、
- 観察者あり群:Aさん、Bさん、Cさん
- 観察者なし群:Dさん、Eさん、Fさん
というように、1人の参加者は基本的にどちらか一方の条件に入ります。
被験者内要因
被験者内要因では、同じ参加者が複数の条件を経験します。
本問では、AさんもBさんも、単純課題と複雑課題の両方を行います。これは反復測定を含む被験者内要因です。
混合計画
「一部の要因は別々の参加者」「別の要因は同じ参加者を繰り返し測定」という組み合わせが混合計画です。
試験では、
別々の人 × 同じ人 = 混合
と整理すると判断しやすくなります。
2要因分散分析で何を検討するのか
2要因分散分析では、主に2つの主効果と1つの交互作用を検討します。
観察者の有無の主効果
単純課題・複雑課題をまとめて見たときに、観察者がいる場合といない場合で作業成績に差があるかを検討します。
課題の種類の主効果
観察者の有無をまとめて見たときに、単純課題と複雑課題で作業成績に差があるかを検討します。
観察者 × 課題の種類の交互作用
観察者の影響が、課題の種類によって変わるかを検討します。
たとえば、単純課題では観察者がいると成績が上がる一方、複雑課題では成績が下がるという結果なら、「観察者の効果が課題の種類によって異なる」と考えられます。
このような「ある要因の効果が、別の要因の水準によって変わる」関係が交互作用です。
② 2要因被験者間分散分析が不適切な理由
2要因被験者間分散分析では、両方の要因について条件ごとに別々の参加者を用います。
しかし本問では、単純課題と複雑課題を同じ参加者が両方経験します。そのため、課題の種類を被験者間要因として扱うことはできません。
「単純課題群」と「複雑課題群」が別々に用意されていたなら、被験者間計画を検討できますが、本問の構造とは異なります。
③ 2要因被験者内分散分析が不適切な理由
2要因被験者内分散分析では、同じ参加者が両方の要因の全条件を経験します。
本問でこれを成立させるには、同一人物が「観察者あり」と「観察者なし」の両方の条件でも作業する必要があります。
しかし実際には、参加者は観察者あり群か、観察者なし群のどちらか一方に分けられています。したがって、観察者の有無は被験者内要因ではありません。
④ 複数の1要因被験者間分散分析が不適切な理由
要因を別々に分解して複数の1要因分散分析を行うと、2つの要因を同時に扱うという実験計画の利点が失われます。
特に重要なのは交互作用です。
本問では、「観察者の影響が単純課題と複雑課題で異なるか」という問いが考えられます。これは2要因を同時にモデルへ入れなければ直接検討できません。
そのため、複数の1要因分析に分解するより、2要因混合分散分析で全体を検討する方が適切です。
⑤ 複数の対応のあるt検定が不適切な理由
対応のあるt検定は、同じ参加者から得た2つの平均値を比較する基本的な方法です。
しかし本問は、「観察者の有無」と「課題の種類」という2要因を同時に扱う計画です。複数回のt検定に分解すると、交互作用を直接検討できず、多重検定による第I種過誤の増加も問題になります。
選択肢の中では、実験計画全体に対応した2要因混合分散分析が最も適切です。
「混合」という言葉で混乱しない
「混合分散分析」の「混合」は、データが混ざっているという意味ではありません。
被験者間要因と被験者内要因が同じ分析計画に含まれていることを意味します。
また、統計学でいう「混合モデル〈mixed model〉」というより広い概念と、試験で扱われる「混合分散分析」は文脈が異なる場合があります。公認心理師試験では、まず「被験者間要因+被験者内要因」という実験計画の構造を正確に読めることが重要です。
試験での見分け方
統計の選択問題では、分析法の名前を見る前に、研究デザインを図にします。
本問なら、
観察者あり群
- 単純課題
- 複雑課題
観察者なし群
- 単純課題
- 複雑課題
となります。
縦方向の「観察者あり/なし」は別々の参加者、横方向の「単純/複雑」は同じ参加者です。
この図が描ければ、混合計画であることがほぼ一目で分かります。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問82の正答は ① 2要因混合分散分析 です。
観察者の有無は、参加者がどちらか一方の群に所属するため被験者間要因です。一方、単純課題と複雑課題は同じ参加者が両方経験するため被験者内要因です。
試験では、
「別々の人で比べる要因」と「同じ人を繰り返し測る要因」が同時にある → 混合分散分析
と整理しておくと判断しやすくなります。
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参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験(午後問題・正答)
- UCLA Statistical Consulting|Repeated Measures / Mixed ANOVA resources


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