公認心理師資格試験 過去問解説 問78 公認心理師による情報提供
- 2021.08.12
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 公認心理師法, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問78】公認心理師による情報提供
問78 公認心理師が、成人のクライエントの心理に関する情報を医療チームに提供する場合に事前に必要なものとして、正しいものを1つ選べ。
① 成年後見人の同意
② クライエント本人の同意
③ 医療チームが作成した手順書
④ ストレングス・アセスメント
⑤ シェアード・ディシジョン・メイキング
② クライエント本人の同意
となります。
今回の問題は、公認心理師の職責のうち義務とされる公認心理師法第41条「秘密保持義務」に関連する問題です📗
秘密保持義務の例外状況には、以下の場合が含まれていました。
- 「自傷他害」の可能性が明らかであり、命の危険性がある場合
- 虐待が疑われる場合
- カンファレンスなど、そのケースに直接関わっている専門家同士の話し合いを行う場合
- 法律によって認められている、あるいは、義務づけられてる場合
- クライエント本人による明確な意思表示がある場合
今回の問題は「カンファレンスなど、そのケースに直接関わっている専門家同士の話し合いを行う場合」が該当しますね。
この場合、情報を開示するにあたって、原則としてクライエント本人の同意が必要となります。
この原則というのは、その他の守秘義務の例外状況に関連しない場合を指します。
本問題ではケースに関する詳しい情報は特に記載されていませんので、その他の守秘義務の例外状況に該当しているかは判断ができない状況となります。
したがって、原則であるクライエント本人の同意が必要が適用となるため、選択肢②「クライエント本人の同意」が選択肢として正しい記載となりますね。
選択肢の解説
① 成年後見人の同意
成年後見とは❓
成年後見制度とは,精神上の障害により判断能力が欠ける、あるいは不十分な方に援助者を選任し、契約の締結等を代わって行ったり、本人が誤った判断に基づいてした行為を取り消して本人を保護する制度です。
成年後見制度では、本人の意思や自己決定権が尊重されています。
成年後見人には同意権は与えられておらず、被成年後見人が受ける医療行為に対する同意を代理で行うこともできません。
公認心理師の介入は医療行為ではありませんが、既に記したように成年後見人は本人の意思を代諾することが適いませんので、情報開示に対する同意をする権利もないということになります。
よって、選択肢①「成年後見人の同意」は不適切な記述となります。
③ 医療チームが作成した手順書
守秘義務の例外状況の話にもありましたが、チーム内のカンファレンスであっても、情報開示に際しては、原則としてクライエント本人の同意が必要となります。
もちろん、医療チームが作成した手順書に則って、情報を提供するための手続きをクライエント本人と進めることは重要な観点ですが、やはり情報提供に先んじて最も重要なのは、クライエント本人の同意となりますね。
そのため、選択肢③「医療チームが作成した手順書」は不適切な記述となります。
④ ストレングス・アセスメント
ストレングス strength とは、「強み」を意味する英語です。
ストレングス・アセスメントは個人の能力や望み、生活の場となる環境の「強み」などを包括的にアセスメントして介入方法を提案していくというソーシャルワークで用いられるアセスメントの方法となります。
近年、問題解決的なアセスメントの反証として、非常に重要な観点ではありますが、守秘義務とは論旨がずれてしまいますね。
よって、選択肢④「ストレングス・アセスメント」は不適切な記述となります。
⑤ シェアード・ディシジョン・メイキング
シェアード・ディシジョン・メイキング Shared Decision Making とは、医療現場で用いられる用語で「共有意思決定」と訳されます。
医療者と患者の間で、治療に対する情報を共有して、治療の方針を決定していくプロセスのことを指しますが、以下の点が重要です。
確実性の高い治療ではないが、最善と思われる治療について用いられることが、通常のインフォームドコンセントとは異なる点となりますね。
公認心理師資格試験 過去問解説 問15 ケース・アドボカシー(権利擁護)
以上のことから、選択肢⑤「シェアード・ディシジョン・メイキング」は本問題の解答としては不適切になりますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問78は、公認心理師による情報提供に関する問題でした❗️
解答するには、公認心理師法第41条の「秘密保持義務」に関する理解が必要です。
【公認心理師法②】公認心理師資格試験対策:公認心理師の義務(重要!)
本問題は、秘密保持義務=守秘義務の例外状況のなかでも「カンファレンスなど、そのケースに直接関わっている専門家同士の話し合いを行う場合」に該当する状況といえ、情報提供に際しては原則としてクライエント本人の同意が必要となります。
その他のキーワードも押さえておきましょう。
キーワード・成年後見制度では本人の意思や自己決定権が尊重されるため、本人に代わる同意権はない。
・ストレングスアセスメント = 個人の「強み」を生かした支援のためのアセスメント方法
・シェアード・ディシジョン・メイキング = 確実性の高くない治療に関しても医師が患者に情報を提供して治療方針を共有・選択・決定・同意していくプロセス
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