公認心理師資格試験 過去問解説 問77 事例問題:学級崩壊への対応

公認心理師資格試験 過去問解説 問77 事例問題:学級崩壊への対応

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問77】事例問題:学級崩壊への対応

問77 24 歳の女性 A、小学5年生の担任教師。A の学級は、前任からの担任教師の交代をきっかけに混乱した状態に陥った。A の学級の複数の児童が、授業中の私語や立ち歩きなどの身勝手な行動をしていた。学級のその他の児童たちは知らん顔で、学習にはある程度取り組むものの、白けた雰囲気であった。A は学級を立て直したいが、どうすればよいか分からない。
スクールカウンセラーが A に対してこの学級についてのコンサルテーションを行う際に、重視すべき事項として、適切なものを2つ選べ。

① 保護者の意見

② 児童の家庭環境

③ 個々の児童の学力

④ 学級のルールの定着

⑤ 教師と児童の人間関係

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④と⑤

 

④ 学級のルールの定着

⑤ 教師と児童の人間関係

となります。

 

事例を見ると、学級崩壊の初期段階と考えることができますね。

 

学級崩壊の初期対応としては、以下の項目が挙げられています。

  • 迅速に当該学級の教職員と児童生徒の実態を調査する
  • 事象を学校全体の問題ととらえ、全教職員が組織的に対応する
  • 集団生活(学級)におけるルールづくりとその確認を教職員と児童生徒が一緒に行い、お互いの信頼関係の回復に努める
  • 当該学級の授業公開等を実施し、保護者やスクールカウンセラー及び関係機関等からのアドバイスや協力も活用する

 



 

選択肢の解説

① 保護者の意見

授業公開等を実施した上で保護者の意見を聞くことは、学級崩壊時の初期対応で行われるべき事項として挙げられています。

 

一方で、事例の現段階では、担任が交代したことにより児童が混乱してルールが崩壊したことが明白な状況ですから、ある程度学級運営を立て直す見通しが立った状況で保護者の意見を取り入れないと、担任であるAも児童もさらに混乱してしまう可能性が高いでしょう。

 

そのため、選択肢①「保護者の意見」は現段階では早急すぎるため、不適切な記述といえます。

 

② 児童の家庭環境 と ③ 個々の児童の学力

Aのクラスには大きく分けて2種類の児童がいます。

複数の児童が授業中の私語や立ち歩きなど身勝手な行動

その他の児童は学習には取り組むが白けた雰囲気

 

確かにそれぞれの児童の家庭環境や学力が授業時の態度と関連している可能性は否定できません

 

しかし今回のケースでは、“前任からの担任教師の交代をきっかけに混乱した状態に陥った”学級の統制が取れなくなったきっかけが明確にありますから、まずはきっかけとなった担任教師と児童との関係性の修正を狙っていくことが重要と考えられます。

 

児童の家庭環境や学力は、教師との信頼感には直接的な因果関係がありません。

 

よって、選択肢②「児童の家庭環境」と③「個々の児童の学力」は問題の解答として適切ではありません。

 

④ 学級のルールの定着

集団生活におけるルールづくりと確認は、学級崩壊の初期対応として早い段階で行われる必要があります。

 

今回のケースでは、担任教師の交代という変化に対して児童が混乱して、これまで形成されてきた学級でのルールが崩壊しつつあることが推察されます。

 

そのため、早い段階で今の担任であるAと児童の間で学級のルールをつくり直して、繰り返し確認していくことが急務と考えられます。

 

以上から、選択肢④「学級のルールの定着」は正しい記述となります。

 

⑤ 教師と児童の人間関係

繰り返しになりますが、今回のケースでは、担任教師の交代という変化に対して児童が適応できず混乱し、これまで形成されてきたルールが崩壊しつつあることがわかります。

 

学級のルールを作り直すことと同時に、新しい担任であるAと学級の児童の間の関係性を深めていくことが最重要となるでしょう。

 

児童との関係性について重視することによって、関係の改善を図るための見通しが得られるかもしれません。

 

よって、選択肢⑤「教師と児童の人間関係」は解答として適切な記述と考えられますね。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問77は、事例問題:学級崩壊への対応に関する問題でした❗️

 

問76に引き続いて、コンサルテーションの問題となりますね。

 

学級崩壊に対する初期対応として、以下の項目は押さえておきましょう。

  • 迅速に当該学級の教職員と児童生徒の実態を調査する
  • 事象を学校全体の問題ととらえ、全教職員が組織的に対応する
  • 集団生活(学級)におけるルールづくりとその確認を教職員と児童生徒が一緒に行い、お互いの信頼関係の回復に努める
  • 当該学級の授業公開等を実施し、保護者やスクールカウンセラー及び関係機関等からのアドバイスや協力も活用する