公認心理師資格試験 過去問解説 問139 事例問題 高齢者虐待

公認心理師試験

第3回公認心理師試験・午後問139は、高齢者虐待の種別を事例から判別する問題です。

正答は④「心理的虐待」です。

この問題では、介護士Bと家族がAに対してそれぞれ複数の不適切な行為をしています。ポイントは、「どの虐待があるか」ではなく、「Bと家族の双方に共通する虐待は何か」を見抜くことです。

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【問139】高齢者虐待の種別

問139 87歳の女性A。Aは、軽度のAlzheimer型認知症であり、日常生活において全面的に介助が必要である。特別養護老人ホームのショートステイ利用中に、介護士Bから虐待を受けているとの通報が、同僚から上司に寄せられた。施設の担当者がAに確認したところ、Bに太ももを平手で叩かれながら乱暴にオムツを替えられ、荒々しい言葉をかけられたとのことであった。Aは、夫と死別後、息子夫婦と同居したが、家族とは別の小屋のような建物で一人離れて生活させられていた。食事は、家族が気が向いたときに残り物を食べさせられ、食べ残すと強く叱られたことも、今回の調査で判明した。

AがBと家族の双方から受けている共通の虐待として、最も適切なものを1つ選べ。

① 性的虐待
② 経済的虐待
③ 身体的虐待
④ 心理的虐待
⑤ ネグレクト

正答:④

第3回公認心理師試験の午後問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式資料で確認できます。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター

④が正しい理由:Bと家族の双方に「心理的虐待」がある

厚生労働省の高齢者虐待対応マニュアルでは、心理的虐待を、著しい暴言、著しく拒絶的な対応、その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動として整理しています。

本事例では、介護士Bと家族の行為を分けて見ると、共通点が明確になります。

介護士Bの行為

  • 太ももを平手で叩く → 身体的虐待に該当し得る
  • 荒々しい言葉をかける → 心理的虐待に該当し得る

家族の行為

  • 別の小屋のような建物で一人離れて生活させる
  • 家族が気が向いたときに残り物を食べさせる
  • 食べ残すと強く叱る → 心理的虐待に該当し得る

家族による生活・食事の扱いには、介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)として検討される要素もあります。

しかし、問題が尋ねているのは、Bと家族の「双方」に共通する虐待です。

B:荒々しい言葉 → 心理的虐待
家族:強く叱る → 心理的虐待
したがって共通するのは④心理的虐待

③ 身体的虐待ではないのはなぜ?

BがAの太ももを平手で叩いた行為は、身体的虐待として捉えられます。

一方、設問文には、家族がAに直接暴力を加えたという記載はありません。

そのため、身体的虐待はBの行為には認められるものの、Bと家族の双方に共通する虐待とはいえません。

⑤ ネグレクトではないのはなぜ?

家族がAを家族とは別の建物で一人生活させ、食事も不十分な形で与えていた点は、ネグレクトとして検討される要素を含みます。

しかし、Bについては、設問文から介護そのものを放棄・放任していたとは読み取れません。Bは乱暴な方法でオムツ交換をしており、これは不適切な介護ですが、本問で家族と共通するネグレクトが示されているわけではありません。

したがって⑤ではありません。

高齢者虐待の5類型を整理

高齢者虐待防止法では、養護者による虐待と養介護施設従事者等による虐待について、主に次の5類型が整理されています。

虐待の類型 基本的な考え方 本事例
身体的虐待 身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行 Bが太ももを叩く
介護・世話の放棄・放任 著しい減食、長時間の放置など必要な養護を著しく怠る 家族の生活・食事の扱いに関連
心理的虐待 著しい暴言、拒絶的対応、心理的外傷を与える言動 Bと家族の双方に認められる
性的虐待 わいせつな行為をする・させる 記載なし
経済的虐待 財産を不当に処分する、不当に財産上の利益を得る 記載なし

「1つの行為=1種類の虐待」とは限らない

実際の虐待事例では、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトなどが重複して生じることがあります。

そのため試験では、事例中のすべての行為を無理に1つの類型へまとめるのではなく、

  • 誰が行った行為なのか
  • どの行為がどの虐待類型に対応するのか
  • 設問が「共通するもの」「最も適切なもの」のどちらを尋ねているのか

を分けて読むことが重要です。

この問題のタイトルも修正する

旧記事タイトルは「障害者の虐待」となっていましたが、公式問題のAは87歳の高齢者であり、設問内容も高齢者虐待の類型を扱っています。

そのため、今回の改訂では記事タイトルを「事例問題 高齢者虐待」へ修正します。

これは単なる表記変更ではなく、公式問題との対応を正確にするための修正です。

試験対策ではここまで覚える

  • 身体への暴行 → 身体的虐待
  • 著しい暴言・侮辱・威圧・拒絶的対応 → 心理的虐待
  • 必要な介護や食事などを著しく行わない → ネグレクト
  • 複数の虐待類型は同時に成立し得る
  • 「双方に共通する」など、設問が指定する比較条件を見落とさない

問139の中心:Bには身体的虐待+心理的虐待、家族にはネグレクト+心理的虐待の要素があり、双方に共通するのは心理的虐待

まとめ

第3回公認心理師試験・午後問139の正答は、④「心理的虐待」です。

介護士BはAを叩くだけでなく荒々しい言葉をかけています。一方、家族もAを強く叱っています。この言葉や対応によって心理的外傷を与える行為が双方に共通しています。

身体的虐待はB、ネグレクトは家族にそれぞれ認められる要素がありますが、「双方から受けている共通の虐待」という設問条件に合うのは心理的虐待です。

参考資料

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