第5回公認心理師試験・午後問80は、G. W. AllportやR. B. Cattellらの特性論を引き継ぎ、L. R. Goldbergが示したBig Five〈5因子モデル〉の基盤となる統計手法を問う問題です。
正答は ① 因子分析 です。
この問題は、パーソナリティ心理学の歴史と心理統計を横断して理解する必要があります。Allportらが収集した多数の性格特性語を、Cattellらが整理・分析し、その後GoldbergらがBig Fiveの構造を検討していく流れでは、多数の観測変数の背後にある少数の潜在的な因子を見出す「因子分析」が重要な役割を果たしました。

問題
G. W. AllportやR. B. Cattellらの特性論の考えを引き継ぎ、L. R. Goldbergが指摘した性格特性理論の基盤となっている統計手法として、適切なものを1つ選べ。
- 因子分析
- 分散分析
- 共分散分析
- 重回帰分析
- クラスター分析
正答は ① 因子分析 です。
正答①|因子分析とは
因子分析〈factor analysis〉は、多数の観測変数の相関関係を手掛かりにして、その背後にある少数の潜在的な因子を推定する統計手法です。
たとえば、性格を表す多数の形容詞への評定があるとします。
- 社交的
- 活発
- 話し好き
- 協力的
- 親切
- 計画的
- 几帳面
- 不安になりやすい
- 新しいものに興味を持つ
といった多数の項目の相関を調べると、似た傾向を持つ項目同士がまとまりとして現れます。
そのまとまりの背後にある共通要因を、
- 外向性
- 協調性
- 誠実性
- 神経症傾向
- 開放性
などの因子として整理していくのが、Big Fiveの理解につながります。
AllportからCattellへ
Gordon W. Allportは、パーソナリティを比較的安定した特性〈trait〉から捉える特性論の代表的な研究者です。
AllportとOdbertは、英語辞書に掲載された多数の人物記述語を収集し、性格特性研究の基礎となる膨大な語彙リストを作成しました。
しかし、数千もの特性語をそのまま扱うことは困難です。
そこでR. B. Cattellは、特性語を整理し、統計的手法を用いてその背後の構造を検討しました。
Cattellの研究では、因子分析が性格特性の構造を抽出する重要な方法として用いられています。
GoldbergとBig Five
Lewis R. Goldbergは、自然言語に含まれる性格記述語を分析し、Big Fiveの5因子構造を示した研究で知られています。
Goldbergの1990年の研究では、多数の性格特性語を対象に複数の因子分析的手続を用い、5つの大きな因子構造が繰り返し確認されました。
そのため本問では、
特性語 → 相関関係 → 背後の共通因子 → Big Five
という流れを理解しておけば、①因子分析を選べます。
Big Fiveの5因子
Big Fiveは、一般に次の5因子で整理されます。
- 外向性〈Extraversion〉
- 協調性〈Agreeableness〉
- 誠実性〈Conscientiousness〉
- 神経症傾向〈Neuroticism〉
- 開放性〈Openness〉
頭文字から OCEAN と覚えることもあります。
Ig Knowledgeでは、第3回問85|パーソナリティ理論と5因子モデルでもBig Fiveを扱っています。
因子分析の基本的な考え方
因子分析では、直接観察できる項目得点から、その背後にある潜在因子を推定します。
たとえば、
「話し好き」
「社交的」
「活動的」
という項目が互いに高く相関している場合、それらを説明する共通因子として「外向性」を仮定する、というイメージです。
このとき、
- 観測変数:質問項目・評定値
- 潜在因子:直接は観察できない構成概念
- 因子負荷量:各項目が因子とどの程度関連するか
という関係で整理します。
探索的因子分析と確認的因子分析
因子分析には大きく、
探索的因子分析〈EFA〉
あらかじめ因子構造を厳密に決めず、データからどのような構造が現れるかを探索します。
確認的因子分析〈CFA〉
「この項目はこの因子に属する」という仮説的モデルを設定し、そのモデルがデータに適合するかを検討します。
という違いがあります。
Big Fiveの歴史的研究では、性格特性語の背後にどのような因子構造が現れるかを探索する研究が重要でした。
Ig Knowledgeでは、第6回問5|探索的因子分析とスクリー基準でも因子数決定について解説しています。
② 分散分析〈ANOVA〉|正答ではない理由
分散分析は、複数の群の平均値に差があるかを検討する統計手法です。
たとえば、
- 治療A群
- 治療B群
- 統制群
の平均得点を比較するときなどに用います。
性格特性語の背後にある潜在構造を抽出することが目的ではありません。
したがって②は不適切です。
③ 共分散分析〈ANCOVA〉|正答ではない理由
共分散分析は、群間の平均値を比較するときに、結果へ影響する共変量を統計的に調整する方法です。
たとえば、治療群と統制群を比較する際に、事前得点や年齢の影響を調整する、といった使い方があります。
性格特性の潜在因子を抽出する方法ではありません。
④ 重回帰分析|正答ではない理由
重回帰分析は、複数の説明変数を用いて1つの目的変数を予測・説明する方法です。
たとえば、
- 睡眠時間
- ストレス
- 運動量
から抑うつ得点を予測する、といった分析です。
Big Fiveのように、多数の性格特性項目の背後にある共通因子を抽出することが主目的ではありません。
⑤ クラスター分析|正答ではない理由
クラスター分析は、似た特徴を持つ対象をグループ化する方法です。
因子分析が、
変数同士の関連から潜在的な次元を見つける
方法なのに対し、クラスター分析は、
人や対象を似たもの同士で分類する
ことを目的とします。
この違いは試験で頻出です。
因子分析と主成分分析の違い
Ig Knowledgeでは、第3回問81|主成分分析でも両者を整理しています。
因子分析
観測変数の背後にある共通因子を推定する。
主成分分析
多数の観測変数を、情報をなるべく保持したまま少数の合成変数へ要約する。
試験では、
背後の潜在構造=因子分析
データの要約=主成分分析
と区別すると判断しやすくなります。
特性論と類型論の違い
特性論では、人を特定のタイプへ完全に分類するのではなく、
各特性をどの程度持っているか
という連続量として捉えます。
たとえばBig Fiveでは、
「外向型か内向型か」
の二択ではなく、
「外向性がどの程度高いか」
として理解します。
この点が、典型的な類型論との違いです。
試験での見分け方
本問では次のキーワードを拾います。
Allport
→ 特性論
Cattell
→ 特性研究+因子分析
Goldberg
→ Big Five
多数の特性語から少数の性格次元を抽出
→ 因子分析
この対応が分かれば、正答は①です。
まとめ
第5回公認心理師試験・午後問80の正答は ① 因子分析 です。
Allportらによる特性語研究を基盤に、CattellやGoldbergらは、多数の性格特性語の相関構造を分析し、パーソナリティを少数の基本的次元から理解しようとしました。
試験では、
特性論 → Allport・Cattell → 因子分析 → Goldberg → Big Five
という流れで覚えておきましょう。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午後問題・正答
- Cattell, R. B. (1943). The description of personality: Basic traits resolved into clusters.
- Goldberg, L. R. (1990). An alternative “description of personality”: The Big-Five factor structure.


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