第4回公認心理師試験・午後問96は、パーソナリティ障害への適用を意図して認知行動療法〈CBT〉を拡張し、アタッチメント理論、ゲシュタルト療法、力動的アプローチなどを統合した心理療法を問う問題です。
正答は ① スキーマ療法 です。
この問題は、心理療法の「名称」だけでなく、どの理論を基盤に、何を統合した治療なのかを見分ける必要があります。
スキーマ療法は、Jeffrey E. Youngらによって発展した統合的心理療法で、従来のCBTだけでは十分に扱いにくかった、慢性的で根深い認知・感情・対人関係パターンを扱うために発展しました。

問題
パーソナリティ障害に適用するため、認知行動療法を拡張し、そこにアタッチメント理論、ゲシュタルト療法、力動的アプローチなどを組み込んだ統合的な心理療法として、最も適切なものを1つ選べ。
- スキーマ療法
- 対人関係療法
- 動機づけ面接
- 問題解決療法
- アクセプタンス&コミットメント・セラピー〈ACT〉
正答は ① スキーマ療法 です。
正答①|スキーマ療法はCBTを拡張した統合的心理療法
スキーマ療法は、認知行動療法の考え方を土台にしつつ、
- アタッチメント理論
- 対象関係論・力動的アプローチ
- ゲシュタルト療法
- 感情焦点化の技法
- 認知的技法
- 行動的技法
などを統合した治療モデルです。
とくに、パーソナリティ障害や慢性的・反復的な心理的問題など、従来の短期CBTだけでは変化しにくいケースを想定して発展してきました。
スキーマとは
スキーマとは、簡単にいえば、
自分・他者・世界についての、長期間にわたって形成された認知や感情のパターン
です。
たとえば、
- 「どうせ私は見捨てられる」
- 「自分は欠陥のある人間だ」
- 「人を信じると裏切られる」
- 「自分の感情より他者の要求を優先しなければならない」
- 「失敗してはいけない」
といった、非常に強固な信念や感情的パターンが考えられます。
Youngらは、こうした不適応的なパターンを早期不適応的スキーマ〈early maladaptive schemas〉として整理しました。
早期不適応的スキーマはどのように形成されるか
スキーマ療法では、子ども時代の基本的な情緒的欲求が十分に満たされなかった経験などが、早期不適応的スキーマの形成に関係すると考えます。
基本的な欲求には、たとえば、
- 安全なアタッチメント
- 自律性
- 自己表現
- 遊び・自発性
- 現実的な限界設定
などが含まれます。
もちろん、
「特定の養育経験があれば必ず特定のスキーマができる」
という単純な因果関係ではありません。
気質、環境、対人経験など複数の要因を含めて理解します。
スキーマ・モードとは
パーソナリティ障害、とくに境界性パーソナリティ障害のように感情や対人関係の状態が大きく変動する場合には、固定的なスキーマだけではなくスキーマ・モードという概念が用いられます。
スキーマ・モードは、
ある時点で前面に出ている感情・認知・行動のまとまり
と考えると理解しやすくなります。
代表的には、
- 傷つきやすい子どもモード
- 怒れる子どもモード
- 懲罰的な親モード
- 要求的な親モード
- 回避的な対処モード
- 健康な大人モード
などがあります。
治療では、不適応的モードの影響を弱め、「健康な大人モード」を育てることが重要な目標になります。
スキーマ療法で用いられる代表的な技法
スキーマ療法では、認知的技法だけではなく、感情や体験に直接働きかける技法が重視されます。
認知的技法
- スキーマを支持する証拠・反証を検討する
- 認知の偏りを整理する
- より適応的な視点を構築する
体験的技法
- イメージ技法
- イメージ書き換え
- チェアワーク
- ゲシュタルト療法由来の対話技法
行動的技法
- 不適応的な行動パターンを変える
- 新しい対人行動を試す
- 回避を減らす
治療関係
スキーマ療法では、治療関係そのものも重要です。
代表的な考え方に限定的再養育〈limited reparenting〉があります。
これは治療者が親の代わりになるという意味ではなく、専門職としての境界を維持しながら、これまで満たされにくかった情緒的ニーズを治療関係の中で扱う考え方です。
認知再構成法との違い
Ig Knowledgeでは認知再構成法についても解説しています。
認知再構成法では、現在の状況における自動思考や認知を検討し、より柔軟な考え方を探していきます。
一方スキーマ療法では、
- 幼少期から続くパターン
- 対人関係で繰り返される問題
- 感情的な反応
- 深い自己認識
- スキーマ・モード
など、より長期的で根深いパターンを扱います。
両者は対立するものではなく、スキーマ療法の中でも認知的技法は用いられます。
② 対人関係療法〈IPT〉|正答ではない理由
対人関係療法〈Interpersonal Psychotherapy:IPT〉は、現在の対人関係と症状の関連に焦点を当てる心理療法です。
代表的には、
- 悲哀
- 対人関係上の役割をめぐる不和
- 役割の変化
- 対人関係の欠如
などを扱います。
対人関係を重視しますが、本問で示された
CBTを拡張し、アタッチメント・ゲシュタルト・力動的アプローチを統合した治療
には該当しません。
③ 動機づけ面接|正答ではない理由
動機づけ面接〈Motivational Interviewing:MI〉は、行動変容に対する両価性を扱い、本人自身の変化への動機を引き出す面接法です。
- 共感
- 抵抗との協働
- チェンジトーク
- 自律性の尊重
などが重要です。
依存症、健康行動など幅広い領域で用いられますが、パーソナリティ障害への統合的心理療法として開発されたものではありません。
④ 問題解決療法|正答ではない理由
問題解決療法は、現実生活上の問題を整理し、具体的な解決方法を段階的に考える心理療法です。
たとえば、
- 問題を明確化する
- 解決案を複数出す
- メリット・デメリットを検討する
- 実行する
- 結果を評価する
といった流れを用います。
本問の統合的心理療法には該当しません。
⑤ ACT|正答ではない理由
ACT〈Acceptance and Commitment Therapy:アクセプタンス&コミットメント・セラピー〉は、心理的柔軟性を高めることを中心とした行動療法です。
Ig Knowledgeでは心理的柔軟性でもACTの中心概念を詳しく扱っています。
ACTでは、
- アクセプタンス
- 認知的フュージョンから距離を取る
- 現在への注意
- 文脈としての自己
- 価値
- コミットされた行為
などが重要です。
CBTの流れにある心理療法ですが、本問の「アタッチメント理論・ゲシュタルト療法・力動的アプローチを統合」という記述はスキーマ療法を指します。
試験での見分け方
この問題は、特徴語の組み合わせで判断できます。
パーソナリティ障害
+
CBTを拡張
+
アタッチメント
+
ゲシュタルト
+
力動的アプローチ
が揃えば、
スキーマ療法
と判断します。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問96の正答は ① スキーマ療法 です。
スキーマ療法は、
認知行動療法を基盤に、アタッチメント理論・ゲシュタルト療法・力動的アプローチなどを統合した心理療法
です。
試験では、
Young → スキーマ療法 → 早期不適応的スキーマ → スキーマ・モード
という流れも合わせて押さえておきましょう。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- Young JE, Klosko JS, Weishaar ME. Schema Therapy: A Practitioner’s Guide.
- Kellogg SH, Young JE. Schema therapy for borderline personality disorder.


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