公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午後 問78|秘密保持義務と情報開示

公認心理師過去問第4回78 公認心理師試験

第4回公認心理師試験・午後問78は、公認心理師の秘密保持義務と情報開示を扱う問題です。正答は⑤です。公認心理師法第41条は、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならないと定めています。したがって、秘密保持を絶対視するのではなく、本人や第三者の安全、法令上の通告、必要な多職種連携といった例外を適切に見分けることがポイントです。

問題

成人のクライエントについて、本人の同意を得ずに情報を開示する複数の場面が示され、そのうち秘密保持義務違反に当たるものを1つ選ぶ問題です。選択肢には、第三者への危害のおそれ、育児放棄が疑われる子ども、医療チーム内の共有、自殺企図の危険、別居中の母親からの問い合わせが含まれます。

選択肢の要点

  1. 友人への危害の可能性が高い場合に、その当事者へ知らせる。
  2. 1歳児への育児放棄が疑われる場合に、児童相談所へ通告する。
  3. 医療チーム内で主治医・看護師と必要な情報を共有する。
  4. 自殺企図の可能性が高い場合に、同居家族等へ連絡する。
  5. 別居中の母親が心配して問い合わせたため、成人本人の居場所を伝える。

正答

⑤

この問題の中心は「正当な理由」

公認心理師法第41条は、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。したがって、本人の同意がない情報共有がすべて違反になるわけではなく、安全確保、法令上の通告、治療上必要な連携など、開示を正当化する根拠の有無を事例ごとに検討します。

選択肢① 第三者への危害リスク

友人に危害を加える可能性が高いという場面では、第三者の生命・身体を守るための対応が問題になります。危険の具体性や切迫性、実行可能性を評価し、必要な場合には関係者や関係機関へ情報を共有します。ただし、危害を示唆する発言があれば無制限に情報を開示してよいという意味ではありません。

選択肢② 育児放棄が疑われる場合

1歳児への育児放棄が疑われる場面では、ネグレクトを含む児童虐待への対応が問題になります。虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、児童相談所等への通告が検討されます。支援者が虐待を確定するまで待つのではなく、子どもの安全を優先して必要な連携につなぐことが重要です。

選択肢③ 医療チーム内での共有

医療チームでは、治療や安全確保に必要な情報を主治医や看護師などと共有することがあります。公認心理師法第42条も関係者との連携を求めています。ただし、同じ職場だから何でも共有してよいわけではなく、治療目的に必要な範囲に限定し、院内規程やアクセス権限に従う必要があります。

選択肢④ 自殺企図の可能性が高い場合

自殺企図の可能性が高い状況では、本人の生命を守るために家族、主治医、救急機関などへの連絡を検討します。自殺念慮が少しでもあれば自動的に家族へ連絡するのではなく、計画、手段、時期、意図、保護要因などを評価し、切迫性に応じた必要最小限の対応を取ります。

選択肢⑤ 母親に居場所を伝える

⑤が秘密保持義務違反に当たる選択肢です。成人クライエントについて、別居中の母親が「連絡が取れず心配」と問い合わせたとしても、それだけで本人の居場所を同意なく開示する正当な理由にはなりません。家族関係があることと、本人情報の開示を受ける権限があることは別です。

「家族だから教えてよい」は誤り

成人本人の住所、居場所、受診状況、相談内容などは、家族だからという理由だけで自由に伝えてよい情報ではありません。家族から本人に関する情報を受け取ることと、家族へ本人の秘密を返すことも区別します。心配を聞くことはできても、その場で本人情報を開示してよいとは限りません。

公認心理師法第41条

第41条では、公認心理師が正当な理由なく、業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならないとされています。この義務は資格を失った後も続きます。試験では条文の存在だけでなく、「正当な理由」に当たる状況を事例から見抜くことが求められます。

公認心理師法第42条と連携

第42条は、保健医療、福祉、教育等が連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、関係者等との連携を保つことを求めています。秘密保持と連携は対立する概念ではありません。本人の利益を守るために、目的に必要な情報だけを、必要な相手と共有するという調整が必要です。

必要最小限の情報共有

例外的に開示が必要な場面でも、本人について知っていることを全て伝えてよいわけではありません。危険回避、通告、治療連携などの目的を達成するのに必要な範囲へ絞ります。共有先、共有内容、判断理由を記録しておくことも重要です。

本人への説明

緊急性が高く本人の同意を待てない場合もありますが、可能であれば「安全を守るために、誰にどの情報を伝える必要があるか」を本人へ説明します。本人の自己決定を尊重しつつ、安全確保のために必要な行動を取ることが基本です。

支援開始時に秘密保持の限界を説明する

初回面接などでは、相談内容は原則として秘密にすることと、生命の危険、虐待、法令上の通告など一定の条件では必要な情報共有を行うことがある点を説明しておくと、後の対応について理解を得やすくなります。秘密保持の限界を曖昧にしないことが信頼形成にもつながります。

リスクの程度を評価する

「危険があるかもしれない」という曖昧な印象と、具体的な計画や手段を伴う切迫した危険は区別します。守秘の例外を広げすぎればプライバシー侵害につながり、狭く捉えすぎれば安全確保が遅れます。リスクの内容と緊急度を具体的に評価することが必要です。

記録に残す内容

情報共有をした場合は、評価したリスク、開示の目的、共有先、共有した情報、本人への説明、関係者との協議内容などを記録します。「なぜ開示したのか」「なぜ開示しなかったのか」を後から説明できる記録にしておくことが重要です。

開示先も無制限ではない

正当な理由が認められる場合でも、情報を伝える相手は目的に照らして選びます。危険を受ける可能性がある人、法令上の通告先、治療に直接関わる職種などが候補になります。親族、勤務先、友人など、本人と関係があるだけで当然に開示先となるわけではありません。

単独判断を避ける

実務で重大な安全リスクや守秘の例外に迷う場合には、緊急性を踏まえつつ、所属機関の責任者、主治医、関係部署などと協議します。守秘義務の判断を一人で抱え込まず、組織的な意思決定と記録を残すことが安全です。

秘密保持は心理支援の基盤

クライエントが安心して話せるのは、話した内容が不用意に外部へ漏れないという信頼があるからです。秘密保持義務は法的義務であると同時に、心理支援を成立させる基盤です。例外的な開示は、その信頼を軽視するのではなく、安全や法的義務との調整として考えます。

安全確保とのバランス

守秘を形式的に守ることで重大な危険を放置することも適切ではありません。逆に、安全という言葉だけで広範囲の情報開示を正当化するのも危険です。事例ごとに危険の程度、法的根拠、共有先、共有範囲を検討し、最小限の開示にします。

試験での見分け方

選択肢を見たら、まず①生命・身体への重大な危険、②児童虐待などの法令上の通告、③治療上必要な多職種連携があるかを確認します。これらの根拠がないのに、家族の心配や便宜だけで成人本人の情報を伝える選択肢は不適切と判断しやすくなります。

関連する過去問

秘密保持義務の例外については、第6回午前問1|秘密保持義務の例外も関連します。複数の事例を比較し、「例外があること」と「どこまで情報を共有してよいか」を分けて整理すると理解が深まります。

開示前に確認する4点

情報開示を考えるときは、①誰の安全が問題か、②危険はどの程度切迫しているか、③法令や職務上の根拠があるか、④誰にどこまで伝える必要があるか、を整理します。この順序で検討すると、守秘義務を機械的に絶対視することも、安全という言葉だけで過剰開示することも避けやすくなります。

成人本人と家族の情報境界

成人支援では、家族が治療費を負担している、送迎している、強く心配しているといった事情があっても、それだけで本人の相談内容や所在を開示する権限が生じるわけではありません。本人の同意範囲を確認し、必要があれば「家族へ何を伝えてよいか」を事前に本人と話し合うことが実務上重要です。

過去問学習での使い方

この問題は正答だけを暗記するより、各選択肢がどの概念や支援段階に対応しているかを説明できるようにすると定着します。正答を隠し、事例の条件から優先順位を言葉にする練習をすると、類似する事例問題にも対応しやすくなります。

情報開示を判断する実務的な順序

情報開示を考えるときは、①本人または第三者にどのような危険があるか、②その危険はどの程度切迫しているか、③本人の同意を得る時間や余地があるか、④法令上の通告や職務上の連携に当たるか、⑤誰に何を伝えれば目的を達成できるか、という順で整理すると判断しやすくなります。単に「心配だから」「家族だから」という理由ではなく、開示の目的と根拠を具体化することが重要です。

情報を受け取ることと返すことは別

家族や学校、職場などからクライエントについて情報提供を受けることと、その相手へクライエントの情報を開示することは同じではありません。支援者は相手の心配や観察内容を聞くことがあっても、本人の同意や正当な理由がなければ、相談内容や所在を答えないという対応が必要です。この区別は実務で頻繁に問題になります。

緊急時以外は本人の同意を取り直す

家族との連携が有用だと考えられる場合でも、緊急性がなければ、まず本人へ「家族とどの情報を共有してよいか」を確認できます。共有範囲を本人と具体的に決めておくことで、家族支援と秘密保持を両立しやすくなります。

守秘義務違反になり得る情報は相談内容だけではない

秘密保持の対象は、面接で語られた心理的内容だけに限りません。本人がどこにいるか、どの医療機関を受診しているか、相談を利用しているかといった情報も、本人の私生活に関わる重要な情報です。⑤では「居場所」という一見単純な情報が問われていますが、本人の同意や正当な理由がなければ慎重に扱う必要があります。

特に成人支援では、家族への説明と本人の秘密保持を別々に整理して考えることが重要です。

開示しない判断にも、開示する判断と同様に根拠が必要です。

まとめ

第4回午後問78の正答は⑤です。成人クライエントの別居中の母親が心配しているという事情だけでは、本人の居場所を同意なく開示する正当な理由にはなりません。一方、重大な他害・自殺リスク、児童虐待への通告、治療上必要な多職種連携などは秘密保持の例外が問題となります。「正当な理由」「安全確保」「必要最小限の共有」で判断しましょう。

参考資料

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