第5回公認心理師試験・午前問72は、職業性ストレス簡易調査票のプロフィールから、面接で何を優先して確認するべきかを判断する事例問題です。正答は ⑤ 仕事の与えられ方に関する不満の有無 です。
この問題では、単純に「ストレス反応が強いから精神疾患を疑う」「会社員だから長時間労働を聞く」と考えるのではなく、どのストレス要因の得点が悪化しているのかをプロフィールから読み取る必要があります。
Aは仕事の量的・質的負担が低く、上司・同僚や家族・友人からのサポートも高い一方で、
- 仕事のコントロール度
- 技能の活用度
- 仕事の適性度
- 働きがい
が低いとされています。
つまり、過重労働や対人関係よりも、仕事の任され方・裁量・役割・適合感にストレス源がある可能性を優先して確認するのが合理的です。
- 問題
- 正答は⑤|プロフィールで低い領域をそのまま深掘りする
- 職業性ストレス簡易調査票とは
- 「仕事のコントロール度」が低いとは
- 「技能の活用度」が低いとは
- 「仕事の適性度」が低いとは
- 「働きがい」が低いとは
- ① 長時間労働が最優先ではない理由
- ② 家庭生活のストレスが最優先ではない理由
- ③ 精神疾患の既往が最優先ではない理由
- ④ 職場の人間関係が最優先ではない理由
- ストレスチェックは「高い・低い」だけで読まない
- Demand-Control-Supportの考え方
- ストレスチェックの目的
- 本人の言葉で確かめる
- 第5回問20「職場のメンタルヘルス対策」とつなげる
- 第3回問27「職場のメンタルヘルス」とつなげる
- 試験での見分け方
- まとめ
- 関連記事
- 参考資料
- Yamashun|臨床心理士・公認心理師
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問題
問題の要旨: 23歳の会社員A。入社2か月後のストレスチェックで補足面接を受けます。仕事量・仕事の質的負担は低く、上司・同僚のサポートは高い一方、仕事のコントロール、技能活用、仕事の適性、働きがいが低く、いらいら感や満足度低下がみられます。面接で優先的に確認すべき事項を選びます。
- 長時間労働の有無
- 家庭生活のストレスの有無
- 精神疾患の既往の有無
- 職場の人間関係に関する問題の有無
- 仕事の与えられ方に関する不満の有無
正答は ⑤ 仕事の与えられ方に関する不満の有無 です。
正答は⑤|プロフィールで低い領域をそのまま深掘りする
本事例で最も重要なのは、ストレスチェックのプロフィールを読むことです。
Aは、
- 心理的な仕事の負担:低い
- 上司からのサポート:高い
- 同僚からのサポート:高い
- 家族や友人からのサポート:高い
とされています。
一方で、
- 仕事のコントロール度:低い
- 技能の活用度:低い
- 仕事の適性度:低い
- 働きがい:低い
という特徴があります。
この組合せは、仕事量の多さや職場の人間関係よりも、
「自分の能力を活かせない」「裁量がない」「仕事が自分に合っていない」「意味ややりがいを感じにくい」
という問題を示唆します。
したがって、まず⑤の「仕事の与えられ方に関する不満」を確認するのが最も適切です。
職業性ストレス簡易調査票とは
職業性ストレス簡易調査票は、ストレスチェック制度で広く使用される自己記入式の調査票です。
代表的な57項目版では、大きく次の3領域を評価します。
1. 仕事のストレス要因
- 仕事の量的負担
- 仕事の質的負担
- 身体的負担
- 仕事のコントロール
- 技能の活用
- 職場の対人関係
- 職場環境
- 仕事の適性
- 働きがい
などです。
2. 心身のストレス反応
- 活気
- いらいら感
- 疲労感
- 不安感
- 抑うつ感
- 身体愁訴
などを確認します。
3. 修飾要因・周囲の支援等
- 上司からのサポート
- 同僚からのサポート
- 家族・友人からのサポート
- 仕事や生活の満足度
などを確認します。
本問では、これらの領域をセットで読む必要があります。
「仕事のコントロール度」が低いとは
仕事のコントロール度は、仕事の進め方やペース、方法などについて、自分で決められる程度と関係します。
たとえば、
- 自分で仕事の順序を決められない
- 進め方を選べない
- 裁量が少ない
- 自分の判断を活かす余地が少ない
といった状況では、コントロール感が低くなりやすくなります。
Aは仕事量自体は多くないのに、コントロール度が低いという点が重要です。
つまり、
忙しすぎるのではなく、仕事の持ち方や任され方に問題がある可能性
を考えます。
「技能の活用度」が低いとは
技能の活用度は、自分の知識や能力、経験を仕事で活かせている感覚と関係します。
Aは大学時代、サークル活動で中心的な存在だったという情報があります。
社会人になってから、
- 自分の強みが使えない
- 任されている仕事が単調
- 期待していた役割と違う
- 能力を活かせる機会が少ない
と感じている可能性があります。
この点からも「仕事の与えられ方」を聞くことが自然です。
「仕事の適性度」が低いとは
仕事の適性度が低い場合、
- 自分に向いていない
- 得意なことと仕事内容が合わない
- 期待していた仕事と違う
といった感覚が背景にある可能性があります。
入社2か月という時期であるため、まだ仕事に慣れていない可能性もあります。
しかし、面接では「若手だから慣れていないだけ」と決めつけず、
本人が何を不適合と感じているのか
を具体的に確認する必要があります。
「働きがい」が低いとは
働きがいは、仕事の意味、価値、達成感などと関係します。
仕事量は少なく、人間関係も悪くないのに働きがいが低い場合、
- 仕事の目的が分からない
- 自分の役割に意味を感じない
- 任されている内容が希望と異なる
- 成長実感がない
などが考えられます。
ここでも「仕事の与えられ方」が重要な確認ポイントです。
① 長時間労働が最優先ではない理由
長時間労働は労働者の健康に重要なリスクです。
そのため実際の面接では労働時間を確認すること自体は有用です。
しかし、本問では「心理的な仕事の負担」が質・量ともに低いと明示されています。
この情報からは、長時間労働が現在の主要因である可能性は相対的に低いと考えられます。
したがって、最優先は①ではありません。
② 家庭生活のストレスが最優先ではない理由
Aは「家族や友人からのサポート」が高いとされています。
もちろん、サポートが高いから家庭問題が絶対にないとは言えません。
しかし、プロフィール上で明確に問題が示されているのは仕事のコントロール、技能活用、適性、働きがいです。
したがって家庭生活より、まず仕事そのものを詳しく聞く方が優先度は高くなります。
③ 精神疾患の既往が最優先ではない理由
既往歴は重要な情報です。
ストレス反応が強い場合、精神疾患の既往、現在の治療状況、睡眠、食欲、自殺念慮などを確認する必要がある場合もあります。
しかし、本問は「このプロフィールから何を最も優先して確認するか」を問うています。
Aには「いらいら感」が強いものの、仕事のストレス要因として明確な特徴が示されています。
そのため、まずは⑤を確認するのが適切です。
④ 職場の人間関係が最優先ではない理由
Aは、
- 上司からのサポート:高い
- 同僚からのサポート:高い
とされています。
このため、職場の人間関係が主要なストレス源である可能性は相対的に低いと判断できます。
もちろん「サポートが高い=人間関係の問題はゼロ」とは言えませんが、本問では⑤より優先度が下がります。
ストレスチェックは「高い・低い」だけで読まない
試験で重要なのは、得点を単独で見るのではなく、プロフィール全体のパターンを読むことです。
本問では、
仕事量は低い
人間関係の支援は高い
家庭支援も高い
でもコントロール・技能活用・適性・働きがいが低い
という組合せです。
このパターンから、
「量ではなく質」「人間関係ではなく仕事設計」
へ焦点を当てます。
Demand-Control-Supportの考え方
職業性ストレス研究では、仕事の要求度〈demand〉とコントロール〈control〉、さらに周囲からの支援〈support〉を組み合わせて考える枠組みがあります。
単純に「仕事量が多いほどストレスが高い」とは限りません。
仕事量がそれほど多くなくても、
- 裁量がない
- 自分の強みを使えない
- 仕事に意味を感じない
ことが心理的負担につながる場合があります。
本問は、ストレスを仕事量だけで説明しないことを学ぶ良い問題です。
ストレスチェックの目的
ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止、つまり一次予防を中心とします。
また、集団分析を通じて職場環境の改善へつなげることも重要です。
個人への面接では、
- ストレス反応
- 仕事のストレス要因
- 周囲からの支援
- 生活状況
- 本人の受け止め
を組み合わせて確認します。
「高ストレス者かどうか」だけを判定して終わりではありません。
本人の言葉で確かめる
ストレスチェックのプロフィールは、面接での仮説を作る材料です。
たとえばAに対して、
- 今の仕事で自分で決められる部分はどのくらいありますか
- 自分の強みや得意なことを使えている感じはありますか
- 入社前に想像していた仕事と違う点はありますか
- 今の仕事にどんな意味を感じていますか
- 任され方について困っていることはありますか
などを聞くことで、プロフィールの意味を具体化できます。
心理尺度は「答え」ではなく、対話を深める入口です。
第5回問20「職場のメンタルヘルス対策」とつなげる
第5回午前問20では、G. Caplanの予防モデルに基づく二次予防として、高ストレス者への医師による面接指導が問われています。
今回の問72は、そのストレスチェック結果をどのように読み、面接で何を確認するかという、より具体的な場面です。
両方をつなげると、
- ストレスチェックで状態を把握
- 必要に応じて面接
- ストレス要因を具体化
- 本人への支援や職場環境改善へつなぐ
という流れで理解できます。
第3回問27「職場のメンタルヘルス」とつなげる
第3回問27では、職場のメンタルヘルスケアにおける労働者、事業者、産業保健スタッフ等の役割が問われています。
ストレスチェックも、個人だけの問題ではなく、事業場全体のメンタルヘルス対策の一部です。
そのため面接では、本人の適応だけを問題にせず、
仕事の設計・配置・裁量・役割の与え方
にも目を向けることが重要です。
試験での見分け方
本問はプロフィールを引き算して読むと解けます。
- 仕事量の負担 → 低い → 長時間労働は優先度低
- 上司・同僚サポート → 高い → 人間関係は優先度低
- 家族・友人サポート → 高い → 家庭ストレスは優先度低
- コントロール・技能活用・適性・働きがい → 低い → 仕事の与えられ方を確認
したがって⑤です。
まとめ
第5回公認心理師試験・午前問72の正答は ⑤ 仕事の与えられ方に関する不満の有無 です。
この問題では、「高ストレス者だから何でも聞く」のではなく、ストレスプロフィールのどの領域が悪化しているかを読むことがポイントです。
Aでは、
仕事量や人間関係ではなく、裁量・技能活用・適性・働きがいが低い
ため、仕事の与えられ方への不満を優先して確認します。
関連記事
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午前問題・正答
- 厚生労働省|職業性ストレス簡易調査票
- 厚生労働省|ストレスチェック制度関係法令・指針
- こころの耳|職業性ストレス簡易調査票


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