第5回公認心理師試験・午前問58は、触法少年と少年法上の手続について、正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は③・④です。
この問題では、「触法少年とは誰か」という定義だけでなく、児童相談所と家庭裁判所の関係、少年院送致の可能性、付添人、被害者への審判結果通知まで横断的に問われています。少年司法では、年齢によって刑事責任と少年審判の仕組みが異なるため、用語を正確に分けることが重要です。
問題の要旨
触法少年について、年齢の定義、少年院送致、警察の調査段階での付添人、被害者への通知、児童相談所から家庭裁判所への送致に関する複数の記述から、正しいものを2つ選びます。
正答
③・④
まず押さえる:触法少年とは
裁判所は、家庭裁判所が扱う少年事件の一つとして、刑罰法令に触れる行為をしたものの、その行為時に14歳未満であったため法律上「罪を犯した」ことにならない少年を触法少年と説明しています。
ここで試験上の重要な境界は14歳です。14歳以上で罪を犯した少年は犯罪少年、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年は触法少年として整理します。触法少年も少年法上の保護の対象となり得ますが、手続の入口は犯罪少年と同じではありません。
③ 触法少年の定義は正しい
③は、刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の少年という定義を押さえた記述であり、正しい選択肢です。
「14歳未満だから何をしても少年法と無関係」という意味ではありません。刑事責任を問う刑事手続とは異なりますが、児童福祉法上の対応や、一定の場合には家庭裁判所の少年審判につながります。
① 14歳未満でも少年院送致はあり得る
「触法少年は少年院に送致されることがない」といった絶対的な説明は誤りです。
平成19年の少年法改正では、14歳未満の少年についても、家庭裁判所が特に必要と認める場合には少年院送致を可能とする制度改正が行われました。法務省の資料でも、平成19年改正のポイントとして、触法少年の調査手続の整備とともに、14歳未満の少年の少年院送致を可能としたことが示されています。
したがって、試験では「14歳未満=少年院送致は絶対にない」と覚えないことが重要です。原則的な年齢区分と、家庭裁判所が必要性を判断する保護処分の仕組みを分けて理解します。
② 被害者は審判結果等の通知を申し出ることができる
少年事件は非公開性が強い手続ですが、それは「被害者には何も知らされない」という意味ではありません。
裁判所は、少年犯罪によって被害を受けた人が家庭裁判所に対して、事件記録の閲覧・コピー、心情や意見の陳述、一定の場合の審判傍聴、審判状況の説明、審判結果等の通知などを申し出ることができると案内しています。
審判結果等の通知には、決定年月日、決定の主文、決定理由の要旨などが含まれます。したがって、「被害者は審判結果を知ることができない」とする趣旨の記述は誤りです。
④ 弁護士である付添人を選任できる
少年事件で重要なのが付添人です。成人の刑事事件でいう弁護人と似た役割を持ちますが、少年審判では「付添人」という語を使います。
触法少年について警察が調査を行う場面でも、少年や保護者が弁護士である付添人を選任できる制度があります。したがって④は正しい記述です。
試験では、「触法少年は刑事責任を問われないから弁護士は関与しない」と短絡しないようにします。触法少年についても、事実確認や適正手続、権利擁護が重要であり、少年司法の手続保障が置かれています。
⑤ 児童相談所から家庭裁判所への送致は一律ではない
触法少年では、児童相談所などによる児童福祉法上の措置が優先されます。家庭裁判所は、都道府県知事または児童相談所長から送致を受けた場合に、触法少年を審判に付することができます。
ただし、児童相談所が扱った触法少年をすべて家庭裁判所へ送致するわけではありません。法務省の犯罪白書では、一定の重大な罪に係る行為をした触法少年については原則として家庭裁判所に送致し、それ以外についても家庭裁判所の審判に付することが適当と認める場合に送致すると整理されています。
つまり、試験では「児童相談所に来た触法少年=全件家裁送致」という理解を避ける必要があります。
触法少年の手続を流れで理解する
- 14歳未満の少年について、刑罰法令に触れる行為が疑われる。
- 警察は、法定の要件のもとで事件を調査することがある。
- 一定の重大事件などでは児童相談所長への送致が行われる。
- 児童相談所では児童福祉法上の措置を検討する。
- 一定の重大事件では原則として、その他の事件でも必要と判断されれば家庭裁判所へ送致される。
- 家庭裁判所では、少年の状態や環境を踏まえて審判・保護処分を検討する。
この流れを押さえると、「警察→検察→家庭裁判所」という成人刑事事件のイメージをそのまま当てはめる誤りを避けやすくなります。
試験での見分け方
- 犯罪少年:行為時14歳以上で罪を犯した少年。
- 触法少年:14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年。
- 児童福祉優先:触法少年はまず児童相談所等の児童福祉法上の対応が重要。
- 家裁送致:すべて一律ではない。重大事件などは原則送致、それ以外も必要性に応じて送致。
- 少年院:14歳未満でも、法定の要件のもとで送致される可能性がある。
- 被害者:申出により審判結果等の通知を受けられる制度がある。
- 付添人:少年審判における権利擁護の担い手。弁護士が付添人となることがある。
関連知識
少年司法では、少年本人への保護的・教育的処遇だけでなく、被害者への情報提供や意見陳述の制度も整備されています。犯罪被害者支援制度については、第5回午前問41の解説も確認しておくと整理しやすくなります。
また、少年鑑別所や法務少年支援センターなど、少年司法領域の機関については、第3回問55の解説も関連します。
まとめ
第5回午前問58の正答は③・④です。触法少年の定義は「14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年」。さらに、14歳未満でも一定の場合に少年院送致があり得ること、被害者が審判結果等の通知を申し出られること、児童相談所から家庭裁判所への送致は一律ではないことを押さえます。
この問題は単語暗記だけでなく、年齢区分→児童相談所→家庭裁判所→保護処分という手続の流れまで理解すると、選択肢の絶対表現に引っかかりにくくなります。


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