第4回公認心理師試験・午後問95は、手話をコミュニケーション手段とする被検査者にWAIS-IVを実施する際、回答場面のやりとりが結果へ影響しやすい下位検査を判断する問題です。
正答は ② 類似 です。
この問題のポイントは、単に「聴覚障害があるからWAIS-IVは使えない」と考えることではありません。WAIS-IVの各下位検査が、どの程度言語による提示・理解・回答を求めるかを見分ける必要があります。
「類似」は言語理解指標〈VCI〉に関係する下位検査で、言語を用いて概念間の共通性を説明することが求められます。そのため、手話通訳や言語変換が入る場合、標準化された提示・回答条件からずれないよう特に注意が必要です。

問題
手話をコミュニケーション手段とする被検査者に WAIS-Ⅳ を実施する。
回答場面におけるやりとりに際して、結果に影響が出ないように注意を必要とする下位検査として、最も適切なものを1つ選べ。
- 符号
- 類似
- パズル
- 行列推理
- バランス
正答は ② 類似 です。
正答②|「類似」は言語による回答を評価する
WAIS-IVでは、複数の下位検査を組み合わせて全体的な認知能力を評価します。
「類似」は、2つの概念について共通点を言語化する課題で、抽象的な概念形成・言語的推論などをみる言語理解系の下位検査です。
日本版WAIS-IVでは、言語理解指標〈VCI〉に関係する基本検査として、
- 類似
- 単語
- 知識
などが位置づけられています。
このため、被検査者が音声言語ではなく手話を用いる場合、
- 問題文をどのように提示するか
- 手話表現が日本語表現と同じ意味範囲を保っているか
- 回答を手話から日本語へどのように変換するか
- 採点基準に沿って意味を判定できるか
といった点に注意が必要です。
なぜ手話通訳が結果へ影響し得るのか
心理検査では、標準化された方法で実施することが重要です。
たとえば、ある語を別の言い方へ言い換えると、問題の難易度が変わる可能性があります。
手話通訳でも同様に、
- 日本語の語と手話表現が一対一対応しない
- 表現の選び方によって意味が具体化・単純化される
- 通訳者が意図せずヒントを含める
- 回答のニュアンスが翻訳過程で変化する
可能性があります。
したがって、言語を介したやりとりが得点へ直接関係する下位検査ほど、結果解釈に慎重さが求められます。
① 符号|正答ではない理由
符号は処理速度指標〈PSI〉に関係する下位検査です。
一定の記号と数字の対応規則を見ながら、できるだけ速く記入していく課題で、主に視覚探索、書字運動、処理速度などが関係します。
回答そのものは口頭説明ではありません。
もちろん実施方法の説明が正確に伝わることは必要ですが、回答場面のやりとりに手話の翻訳が直接入り込む程度は「類似」より小さいと考えられます。
③ パズル|正答ではない理由
パズルは知覚推理系の下位検査です。
視覚的に提示された図形を頭の中で組み合わせて、完成形を推理します。
主に視空間処理や非言語的推理を用いるため、回答場面での言語的やりとりが得点へ直接影響する度合いは比較的小さいです。
④ 行列推理|正答ではない理由
行列推理も知覚推理系の下位検査です。
図形の規則性を見つけ、欠けた部分に入る図形を選びます。
言語的説明よりも非言語的推理を中心にみる課題です。
したがって、手話による回答内容の翻訳が採点の中心になる「類似」とは異なります。
⑤ バランス|正答ではない理由
バランスも知覚推理系の補助検査として扱われます。
視覚的に示された重さや関係性を推理する課題で、回答時に複雑な言語表現を必要としません。
そのため、手話の表現そのものが得点評価へ直接入り込む度合いは「類似」ほど大きくありません。
WAIS-IVでは「指標」を整理する
試験では下位検査名だけを丸暗記するより、どの指標に属するかを整理すると判断しやすくなります。
言語理解〈VCI〉
- 類似
- 単語
- 知識
知覚推理〈PRI〉
- 積木模様
- 行列推理
- パズル
ワーキングメモリー〈WMI〉
- 数唱
- 算数
処理速度〈PSI〉
- 記号探し
- 符号
本問では、選択肢の中で言語理解に直接関係するのが②類似です。
標準化された検査を変更するときの注意
心理検査は、標準化された条件のもとで得られたデータを基準に解釈します。
したがって、
- 問題提示を変更する
- 制限時間を変える
- 通訳を介する
- 回答方法を変更する
といった配慮が必要な場合、合理的配慮として重要である一方で、標準条件との違いが結果解釈に影響することがあります。
「配慮をしてはいけない」という意味ではありません。
重要なのは、
どのような変更を行ったかを記録し、その影響可能性を踏まえて得点を解釈する
ことです。
聴覚障害者への心理アセスメント
聴覚障害のある人を評価するときには、
- 第一言語
- 手話の種類
- 日本語の習得歴
- 補聴器・人工内耳の使用
- 教育歴
- 読み書き能力
- 通訳者の介在
などを確認する必要があります。
「聴覚障害」という一つの属性だけで認知特性を判断することはできません。
検査結果だけではなく、生活歴や行動観察、本人の言語環境などを含めて総合的に理解します。
心理検査の結果だけで判断しない
Ig Knowledgeでは、心理的アセスメントについて第3回問33|公認心理師の具体的な業務でも、心理検査だけでなく観察情報を統合する重要性を扱っています。
WAIS-IVの得点も、単独で本人の能力全体を表すものではありません。
特に実施条件へ調整が加わった場合には、
- 観察
- 面接
- 発達歴
- 学習歴
- コミュニケーション手段
などと併せて解釈します。
試験での見分け方
この問題では、
「回答時に言語的やりとりが必要か」
を基準に考えます。
- 符号 → 視覚・処理速度
- 類似 → 言語理解
- パズル → 視空間・非言語推理
- 行列推理 → 非言語推理
- バランス → 視覚的数量・推理
したがって②が正答です。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問95の正答は ② 類似 です。
手話使用者にWAIS-IVを実施する際には、言語による提示・回答が採点へ直接関わる下位検査ほど、通訳や表現変換による影響に注意します。
試験では、
WAIS-IVの各下位検査 → どの指標か → 言語負荷が高いか
という順番で考えると判断しやすくなります。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- 日本版WAIS-IV知能検査|検査構成


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